▼ 操られ人形‐03
まだためらいが残っているのか、美園は苦しげな吐息を漏らすばかりで欲求を口にしようとしない。
「全然気持ちよくないんだよね? もう止めて欲しいんでしょ?」
『…っ…あ…!!』
人形の股間の中心を掻くと同時に高く上擦る喘ぎ声。
口ごもるばかりでなかなか言葉を発しない美園だが、姿を見なくとも切迫した表情で快感を求めている様子が簡単に想像することができた。
けれど笹原は意地悪く美園の答えを待ち続ける。
「何も言わないってことはもうおしまいにしていいってことだよね?」
ペン先で撫でることも止めて完全に人形を手放すと笹原は無感情に言い放った。
「じゃあ、電話切るよ。…さよなら美園さん」
『待って…っ!』
震えるその一言を聞き、笹原の口元がニタリと引き上がる。
「…なに?」
『…ゃ、やめないで…っ』
「なにを? どうして欲しいの?」
『…も…っ、もっと…っ奥、まで…っ…いっぱい……!』
たどたどしい言い回しだが、それでも笹原とっては十分な言葉だった。
──美園さんが俺を求めている。
湧き上がる優越感に酔いしれながら笹原は再びペンを持ち直して人形の股に当てた。
「奥って、このくらい?」
『ふあ…ッ! あぁぁっ…!』
美園の声を脳内に刻み込みながらゆっくりとペンを潜らせていく。
さっきよりも深く沈めてはグリグリと捻りながら引き抜く。
徐々に速まっていく抽挿に合わせて受話器から奏でられる嬌声も激しくなっていった。
「どう? 気持ちいい?」
『ふあぁあっ…きっ、気持ち、いぃっ…ひァッ!ああぁ!』
「じゃあ今までしてきたセックスの中で何番目?」
『いッ、ぁあ…っ! いちばんっ、気持ちいいですっ…!』
「ふふふっ、そっかぁ、そんなにイイんだ?」
支配欲が満たされて胸の奥がゾクゾクと熱く震え上がるのを感じながら笹原は夢中になってペンを動かす。
『いやぁあっ! だめ、も…っイッちゃうぅ!』
「イッちゃう、じゃなくてちゃんと俺にお願いしてよ」
『あぁっ…イッ、イかせてくださっ…あぁあ!』
「もっと。ちゃんと言わないとイかせてあげない」
『やぁあ…っ! お願い、イかせてぇっ! ああぁあっ我慢できな…っひあぁ!イかせて…っグスッ…ぅぅ…っイかせてくださいっ…!』
「泣いてるの? …ふふっ、やっぱり美園さんは可愛いね。…じゃあ、もうイッてもいいよ」
子供のように泣きじゃくる美園の淫らな姿を思い浮かべながら笹原はひとしきり深く強くペンを突き上げた。
『あああぁあっイク、イクゥゥーッあぁ!ふあぁあああっ!!』
美園の悲鳴が笹原の耳の内を震わせる。
そしてだんだん小さく消えていく声と共に笹原はそっとボールペンを引き抜いた。
「…気持ち良かった?」
『……っあ…ァ…』
「クスクス。感じすぎて言葉すら出ない? ……でも、これで終わりじゃないよ美園さん」
悪魔のように低く陰湿にそう囁き、笹原はペンケースの中をあさる。
そして取り出されたのは今使っていたものよりも一回り以上太いペンだった。
・ ・ ・ ・ ・
快楽の限界に達し、蕩けるような余韻に呑まれて床に突っ伏したまま動けずにいた美園だったが『これで終わりじゃない』という一言にビクリと身を強張らせた。
「なにを、するのっ…?」
力の入らない身体を無理やり起こして携帯を握りしめ、正体のわからない電話の向こうの男に不安を投げかける。
…しかし返事は返ってこない。
その代わりに、ねちっこく撫で回すような感覚が再び下腹部に走った。
「やっ! やぁあ…っもう駄目…!」
激しい刺激を受け続けた媚肉は充血してドクドクと荒く脈打ち、そのささやかな感触にさえも過剰に反応してしまう。
これ以上は無理だと涙ながらに訴える美園。
だが、“お前の懇願など聞くわけがないだろう”とでも言うように鋭い衝撃が美園の下半身に一気に襲いかかった。
「ひああぁあッ!? あぁっ、うああぁあっ!」
体中に響き渡るあまりの激震に美園は涙を溜めた瞳を見開いて悲鳴を上げる。
胎内に侵入してきたそれは先ほどのものよりも遥かに存在感を増していた。
圧縮する肉壁を捲り返さんばかりに擦られ、奥の奥まで貫かれ、美園の膣孔は無残に拡張されていく。
「ひぃいいっあッあ、あぁ…っ!らめ、こわれちゃうっ…ふあぁっ!おまんこがぁ…っあうぅッふああああ!」
真っ赤に紅潮した太ももがガクガクと痙攣して、外見上では挿入も何もされていない秘部から独りでにブシュッと潮が吹き上がる。
そんな淫らに広がっていく水溜りを弾かせながら美園は華奢な身体をなりふり構わずのた打ち回らせた。
「もぉだめぇぇっ!おねがいっ、許してぇ…っ!ああぁっあぁあああ!」
『何を言ったって無駄だよ。美園さんは俺の玩具。俺の欲望を満たすための操り人形なんだから』
涙が口角から溢れた唾液と混じり合って顎を伝う。
グシャグシャに崩れて蕩けた心身に男の言葉を刻み込みながら、美園は何度目かもわからない絶頂に登り詰めて全身を悶えさせた。
「ああぁあっイクッ、イク、ひぁあッああぁあーーっ!」
割れるような悲鳴を上げたと同時に頭の中が真っ白な光に呑まれていく。
美園はそのまま意識を失い、糸が切れたようにその場にガクリと崩れ落ちた。
美園の手からこぼれた携帯が床を打って鈍い音を響かせる。
その衝撃音を聞いたのか、『美園さんっ?』と少し驚きを見せた声色が受話口から流れた。
『…美園さん? …気絶しちゃった?』
笹原の声はもう美園には届かない。
それを悟り、笹原は『もう終わりか。残念だな』と言葉とは裏腹に楽しそうに呟いた。
『もっと遊びたかったんだけどなぁ。でもしょうがないから今日はここまでにしといてあげるよ』
「…っん…ぅぅ…」
ツー…ッと背筋をなぞられ、意識がないまま美園はピクピクと小刻みに身体を震わせる。
『…じゃあ、明日は授業中にイかせてあげる。楽しみにしていてね』
一方的に通話が切られ、室内に深い沈黙が訪れる。
その中であられもない姿を晒して真っ暗な眠りにつく美園。
そんな彼女の表情は苦悶に歪んでいたが、どこか恍惚とした悦びを滲ませているようでもあった。
‐END‐
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