▼ 淫乱愛猫‐04
「じゃあ、暑いから縁側まで行こっか」
「にゃっ…ぅう…!」
クイッと鎖を引っ張られ、私は四つん這いのまま遼の後ろをついていく。
脚を交互に動かすたびに敏感な部分を摩擦する固い異物。
絶えることなく響き続ける快感に体の痙攣を止めることができず、一歩進むことさえもままならない。
縁側は普通の二足歩行なら1分も経たずに簡単にたどり着くことができる。
けれど今の私にはそれが果てしなく遠い距離に思えた。
「…彩?」
とうとう我慢できなくなって、私はその場にうずくまる。
急かすように何度か軽く鎖を引く遼。
でも、少しでも体を休めたい私は首を横にフルフルと振って反抗の態度を示す。
「縁側までもう少しだよ?」
「…っ無理…これ以上歩いたらおかしくなっちゃう…っ」
「しょうがない子だなぁ…」
…ヴヴヴ…ッ
「ひあっ?!」
ヴヴヴゥウウーーーッ
「にゃあああっ!!?な、んでっ、あぁああ!」
突如、中に埋まった棒が鈍い駆動音と共に激しくうねり始め、私は何がなんだかわからないまま背中を仰け反らせて嬌声を叫んだ。
「遠隔操作できるようになってるんだよ、それ。今の玩具ってハイテクだよねぇ」
「い、やっ、うにゃッ!にゃあああっ」
強烈な快感に打ち震えながら見上げると、遼は黒いリモコンのような物を掲げて涼しげに微笑んでいた。
そんなにこやかな遼とは裏腹に、獰猛に唸る玩具は容赦なく内壁を掻き分けて揺さぶり倒す。
脳天まで突き抜けていく荒々しい狂悦に呑まれて、私は更に体勢を崩して頭を畳に擦り付けながら鳴き悶えた。
「ふあっ…!ああぁっふにゃああぁあっ」
再び沸騰し始めた絶頂感に腰の裏がビリビリと震え上がる。
強烈な刺激に煩悶しながらも、私はこの溜まり募った情欲をやっと解放することができるという法悦の期待に胸を高鳴らせていた。
「にゃッふにゃうぅううっ!」
快楽の限界が近づき、自然と声が甲高くなっていく。
…あともう少し…っイクッ、イク、もう…っ!
汗ばんだ太ももが忙しなく震えて、畳を掻く指にギュウッと力がこもる。
そうして全身で快感に溺れながら私は一気に絶頂へと登り詰めていった。
…なのに、
「ひぅ…っ!? ぁっ、いや…あぁっ…!」
欲望が解き放たれる寸前のところで、バイブはピタリと振動を止めてしまった。
またしても遠ざかって行ってしまう甘い衝動。
その代わりに爆発した鬱憤に身体も心もめちゃくちゃに掻き乱されて、堪らず目から熱い涙が溢れ出す。
「ちゃんとついて来ないとまた苛めちゃうよ?」
「…っ! やぁっ…もう意地悪しにゃいでぇっ…!」
泣き濡れて欲情しきった顔を上げて哀切に訴えると、遼は「もうちょっとだから頑張って」と言って再び鎖を引いて歩き始めた。
その励ましの言葉を胸に留め、這いつくばるかのように何とか歩みを再開する。
2度も法悦をおあずけにされたせいで私の身体は異常なくらい敏感になってしまっていた。
ちょっとでも中が擦れるだけでゾクゾクとした痺れが押し寄せ、次から次へと蜜が噴きこぼれて太ももを伝う。
それでも私は必死に手足に力を込めて、なんども崩れそうになりながらも遼のあとをついて行った。
「…ふー、やっぱりこっちに来ると涼しいね」
やっとの思いでたどり着くと、遼は空を見上げて吹き抜ける風に髪をなびかせながら気持ちよさそうに微笑んだ。
…確かに風があるぶん、室内にいるときよりは涼しいのかもしれない。
でも血液が沸騰しそうなくらい発熱した今の私にはそんなことに心を安らがせている余裕なんてなかった。
それどころか、火照った肌を風に撫でられるだけでも甘い疼きが走って欲情を煽られてしまう。
「彩もこっちおいで」
イタズラな風に翻弄されて身体を縮こまらせていると、縁側に腰かけた遼がそう言って手招きをした。
私は朦朧としながらよたよたと遼の隣りまで体を引きずっていく。
「よく頑張ったね。偉い偉い」
「ふ、ぁ…っ!」
頭を撫でられ、大げさなくらい全身がゾクゾクとざわめき立つ。
グチャグチャに濡れた下半身からまた新たな愛液がこぼれて太ももに滴り落ちていくのがわかった。
「イきたい?」
「んにゃっ…!」
「じゃあ、ご主人様のことを気持ちよくさせられたらイかせてあげる」
遼の問いかけに間も開けず頷いてみせると、遼は挑発的にそう囁いた。
私は考えるよりも先に首を伸ばして自分から遼の唇に口づけをした。
ぼうっとする頭の中に、『ご主人様』という言葉が色濃く染み込んでくる。
…遼はご主人様。…私は、ペット。
そう意識すると、たちまち胸の奥底から妖しくて甘い劣情が湧き起こって体中の神経が淫らに奮い立った。
「んっ…、ふ、っんん…!」
発情した獣さながらに呼吸を乱して遼の口内に舌を伸ばし、歯並びをなぞって舌と舌を絡ませる。
そうして遼の温もりや感触を存分に味わい、ますます興奮を高めて今度は首筋に舌を這わせた。
淫らな吐息混じりに何度も舐め上げ、時折ちゅっと音を立ててキスを落とす。
こんな風に自分から遼に迫るのは初めてだった。
でも、唾液が溢れていやらしい水音が立とうとも、吐息がどんどん荒くなっていこうとも、もう恥ずかしいと思うことはなかった。
…だって私は猫だもん。
自尊心なんてものは捨て去って、焦がれる欲望を満たしたいという一心で私は遼の体を本能の赴くままに貪っていく。
「…ふふっ、甘えてる子猫みたいだね」
シャツを捲って薄い胸板にある小さな突起に吸い付き舌で転がすと、遼からクスクスと穏やかな笑い声が聞こえきた。
「可愛い」
「ぅにゃ…っ」
頭をくすぐる遼の指の感触に酔いしれながら私は夢中で奉仕を続ける。
…すると、まどろむ視界の片隅で遼が黒い物体を手にするのが見えた。
──ブゥゥゥーーー…ッ
「ひっ!? あ、ぁぁ…っ!」
膣内で息を潜めていたバイブが途端に鈍い振動音を響かせて震え始める。
遼が持ったのはリモコンかもしれないと予測はできていたものの、熟れた肉壁を襲う痺れには敵わず、私はとっさに遼から口を離して嬌声を漏らしてしまった。
prev / next