▼ 淫乱愛猫‐03
…今度は何…っ?
恐る恐る振り返ると遼が鞄から黒い物体を取り出していた。
またコスプレの道具かな…?
怪訝に眺めていると、相変わらず爽やかな笑顔を湛えている遼がその物体を手にして私の元へと歩み寄ってきた。
「これ穿いて」
「──…は…っ!?」
それを目にした瞬間、私は絶句してしまった。
差し出されたのは真っ黒な生地のショーツ。
お尻からはモコモコの長い尻尾が伸びている。
…それだけなら可愛らしい猫のコスプレ衣装、という感想だけですんだだろう。
けれどそれにはファンシーな雰囲気とは全く不釣り合いな、男性器の形をした黒い棒が大事な部分に当たる場所から生えていたのだ。
「な…なにこれ…っ」
「彩を今よりもっと猫らしくさせるための衣装だよ?」
「いやっ、色々とおかしいよ! こんなの絶対穿かないからねっ」
「なんで? 穿いたら気持ちよくなれるのに」
「ひゃっ…!うぅ…っ!」
不意に抱き寄せられたかと思うとチュッと耳に口づけを落され、思わず肩が跳ね上がる。
そのまま遼の唇は繊細に耳の輪郭をくすぐり、そしてちろりと伸びた舌が耳に熱く柔らかな感触を伝わせ始める。
たちどころに再燃していく淫らな情欲。
私はあられもなく息を弾ませながら遼に縋るように身を委ねた。
「んっ! んぅ…っ」
ズクズクと脈動を始めた秘部に遼の手が伸びていき、入るか入らないかの瀬戸際をあの淫具の先端でクチュクチュとわざと音を立てるようにいじられる。
曖昧な刺激が焦れったくて焦れったくて、つい自ら腰を動かしてしまいそうになる。
入れて欲しい…。突き上げられたい…。
疼きが体中を支配して、頭の中が熱くてモヤモヤする。
「…穿いてみたくなった?」
耳の中に注がれる意地悪な囁き。
どうしようもないくらい“発情”してしまっていることを全て見透かされているような気がして、顔や体の内側が燃えそうなくらい熱くなっていく。
けれどそんな恥ずかしさに震えながらも、私はめくるめく快感を求めて遼の問いかけにコクリと小さく頷いてみせた。
「じゃあ穿かせてあげる。右足上げて」
遼に従ってまずは右足に下着を通して次は左足に。
そして下着はスルスルと脚を上っていき、太ももを撫でてそして…、固い棒がグチュッと濡れた秘裂を押し広げた。
「ふぁ…にゃっ!あっ、にゃああぁあ…っ!」
ズブズブと私の中へ呑み込まれていく真っ黒な淫具。
頭のてっぺんへ突き抜けるような快楽に私は全身を強張らせて、まだ抵抗のある猫の言葉で喘いだ。
「…よし、装着完了」
「ふにゃ…っぁ、うぅ…っ!」
強烈過ぎる異物感が下腹部全体を埋め尽くし、何もしていないのに体が小刻みに痙攣してしまう。
そんな私を心底楽しそうに見詰めながら遼はブラブラとだらしなく揺れる尻尾を手に取ってそれを私の脇腹に這わせた。
「にゃっ! にゃうっ…!」
指や舌とは違うサワサワとした繊細な感触が火照った身体を撫でまわして行く。
脇腹からお腹、そして胸の膨らみ…。
一度絶頂を垣間見て過敏になった体は、その柔らかな尻尾の刺激にまで過剰に反応してゾクゾクとした疼きを駆け巡らせてしまう。
「もっ…、くすぐった…ッふにゃん!」
もどかしい甘痒さに耐え兼ねて遼の手を掴もうとすると、円を描くようにして乳房をくすぐっていた尻尾が胸の中心部分を捕えた。
しこり立った性感を刺激され、とたんに跳ね上がった快感に私は上擦った声を上げて伸ばしかけた手を強張らせる。
「自分の尻尾で感じるなんて、いやらしい猫だね」
「ふあっ…うぅ…っうにゃ…っ!」
細かな毛が上下左右に乳首を弄ぶたびに淡い快感が生まれて胸全体へと広がっていく。
そして身をよじらせると、その動きに連動して膣内に埋まった淫具が擦れて、不本意な熱情が湧き起こってしまう。
限界に達することができないまま情欲をひたすら煮詰められ続けて、身も心もドロドロに溶けてしまいそうだった。
「四つん這いになって」
「ふに…っ」
耳元にそっと囁かれ、思わず背筋がゾクリとざわつく。
欲望に呑まれて抵抗する気力を失った私は言われるままに私は畳の床に両手と両膝をついた。
──カチャッ…
小さく空気を震わせた金属音に振り返ると、遼が鞄から鎖の付いた真っ赤な首輪を取り出していた。
「これを付けたら完成」
しなやかな指に髪を掻き上げられ、直後に冷ややかな感触が首を覆う。
軽い拘束感と息苦しさ。
それと同時に目まいのするような甘い被虐感が首周りからジワジワと染み入ってくる。
「…うん、やっぱり赤にして良かったぁ」
しみじみとそう言いながら恍惚とした笑顔で私を眺める遼。
首輪を嵌められる…なんて、おかしなことなのに、そんな遼の反応を見て私は素直に『嬉しい』と感じてしまっていた。
「これで彩は今だけ俺のペットだからね?」
「ふにゃっ…」
遼の指が髪に差し入って、とかすように滑り降りていく。
頭を撫でられるのは前々から好きだったけれど、そんな今までの喜びとはまるで別物な、焦がれるほどの心地よさが込み上がって私は小さく身を震わせた。
…もっと触って欲しい。もっと可愛がられたい。
もっともっと、遼にも喜んでもらいたい。
『俺のペット』
遼の言葉が頭の中で残響する。
遼の巧みな誘導によって導かれたのか、それとも元々そういう素質が眠っていたのか…
私はいつの間にか、愛玩を求めて主人に服従するまさに“ペット”そのもののような精神に支配されていた。
prev / next