中編 | ナノ


▼ 第2話‐03

「ダ、メェ…ッ!離して…っや!ああぁっ!」

…こんな道具でイきたくなんかない…!

そう頭に背徳感を植え付けて、快楽に溶けていきそうになる気持ちをなんとか奮い立たせる。

…けれど、どんなに足掻いてもこの心の無い振動は精密にそして凶悪に体の中枢を突き抜けていく。

必死につくろった虚勢なんていとも簡単に崩していってしまう。

「やあぁあ…っ!あッあ…あぁ…っ!」

「もう限界だろ? 我慢しないでさっさとイきなよ…お姉ちゃん」

「ッ…!ひぁッ!あっ、ぁああ…ッ!」

なだめすかすように囁かれた彼の言葉に脳内が揺さぶられ、下腹部の奥底で煮えたぎっていた欲望が一気に溢れ出した。

…もう駄目…! 抑えきれないっ…!

「ふあッぁあぁ!や…だっ、やッ…ぁあ!やぁああああぁぁッ!!」

背徳も羞恥も全て真っ白に染まっていくような解放感が全身を駆け巡る。

必死にイくのを堪え、限界まで熱情を煮やして絶頂を迎えた体があまりの法悦に激しい痙攣を起こす。

跳ねるたびにガチャガチャと音を立てる手錠はまるで私をあざ笑っているようだった。


「ふぁ…っは…ぁ…あ…っ」

「ホントにあっという間にイッたな。…良かっただろ? この玩具」

スイッチを切られて何事もなかったみたいに静まり返っているピンク色の物体を彼はまざまざと私に見せ付ける。

その忌々しい淫具には私の劣情を物語る透明の粘液がまとわりついていた。

「もっ…いいでしょ…! 早く外してよっ…!」

「は? 何言ってんの? これで終わりな訳ねぇだろ」

「なっ…!嫌っ…!!」

淫具を持つ彼の手が下着の中に滑り込む。

未だドクン、ドクンと強く脈動する欲望の芯に冷たくて固い感触が当てられ、私は「ヒッ」と声にならない悲鳴を漏らした。

「気持ち良すぎて壊れるなよ」

「…ゃ…やめ…っ」


──ヴヴヴヴーーーッ!

「っひああああ!!あッやぁっああアぁあーーッ!」

さっきよりも更に威力を増した振動が容赦なく腫れ上がった淫核に責めかかる。

一度絶頂を迎えて蕩けきった身体に荒々しい快楽の電流が駆け回り、私は喉をいっぱいに仰け反らせて悲鳴を上げた。

「やッいやあぁあァッ!!止めてっお願…っああぁぁッ!!」

残酷なまでの刺激に頭がビリビリと痺れて意識が霞んでいく。

脳内が真っ白になる中、ただわかるのは強烈な疼きが下腹部から頭の先へと込み上がっていく感覚だけ。

ついさっきこの身に降りかかったばかりの絶頂への狂おしい衝動を再び全身で感じ、私はガクガクと激しく脚を震わせた。

「ひッあぁあァッ!だ、めっイッ…イッちゃうぅっ!やっやぁあ…ッぁうぅぅあああァああッ!!!」

歯止めのきかない獰猛な欲望が落雷のように体の中枢で弾ける。

爪先から頭のてっぺんまで狂悦に感極まって、意識も視界もドロドロと溶けきっていく。

…けれど、冷たい機械は気絶することすらも許してはくれない。

「やあ…っあ!ああァあぁぁッ!!」

あまりにも狂暴な痺れに浮遊した意識を叩き起こされ、休む間もなく新たな快楽電流を注ぎ込まれる。

開きっぱなしの口からこぼれる唾液。

絶対的な快感に感覚が麻痺して、手首に深く手錠が食い込んでももう痛みも感じない。

「お願、いっ…!止めて…っもう止めてえぇッ!!!」

「はッ…まだ1分も経ってねーぞ?」

「いやあぁあァッ!やだあぁぁ!もっ…無理ぃッ…!ひあッアあぁァッ!!」

なりふり構わず泣き喚いても、彼の手はスイッチに添えられたまま動かない。

「…で、さっきの質問なんだけど」

私の必死の願いを微塵も受け入れないまま、彼は悠長にそう囁いた。


「なんであの男に何も話さねーの?」

「そっれは…っあ!あぁあァッ!!」

「早く答えろ」

「イッあぁああァあッ!!言うっ言うからぁッ!!」

脚の間に割り込んでいる彼の膝が、暴れる玩具をグッと押し上げる。

より密着が深まったせいで秘部全体に激しい痺れが行き渡り、私は慌てて言葉を発した。

「おっお父さんをっ…! 悲しませたく、ない、から…っ!」

込み上げる喘ぎを殺してなんとかそれを口にすると、淫具に付加をかけていた膝の力が弱まった。

「お前らしい下らない考えだな」

「っふ…あ、ぁあァッ…!!」

もう何を言われたっていい。

とにかく私はこの地獄のような戒めから解放されたかった。

…ちゃんと言ったんだから早く止めてよ…!

胎内で嵐のように荒れ狂う快感の高まりに震えながら、悲願の眼差しを彼に向けると、彼は私を冷ややかに見下したまま口を開いた。

「で、後は?」

「っ…!? あ、とって…! そんなのっ…ァッふあぁ、あぁあッ!」

「まだあるだろ? 言えよ」

彼は私の心の内をわかっているんだろうか。

彼の望んでいる答えは何?意図は?

でもそんなことを考えていられる余裕はない。

私は強烈な振動に突き出されるがまま、内に秘めていた気持ちをそのまま偽りなく言葉にした。

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