▼ 媚薬‐04
「やっ! ぁ……っ!」
少女のような印象をもった小ぶりで色白な二つのたわみが男の眼下にさらけ出される。
そこはしっとりと汗ばみ、先にある薄桃色の実はすでに固く尖り、欲望をあらわにしていた。
火照った胸を心地よく撫でる外気の冷たさに光は微かに身を震わす。
そして羞恥や怒りよりも先に、下着の圧迫から解放されたことに快感を得てしまった自分を呪った。
「こんな可愛いおっぱいをブラで押し潰してたら可哀想ですよ」
「ひゃうッ! ぁ、あっ!いゃ……っあぁ!」
男の両手が優しく乳房を包み、労わるようにやわやわと揉み解す。
柔らかな肉は力の加減によって形を変え、先端のしこりと共にだんだんと鮮やかに紅潮していく。
心臓に一番近い敏感な場所を責められ、否定しようのない甘い快感が光の体内で湧き起こった。
小刻みに痙攣を続ける体。唇から漏れる濡れた吐息。切なげに潤んだ瞳……。
抑えきれない肉欲が光の姿を淫らな雌へと変えていく。
「声色が変わってきましたね」
「ひあぁっ!!」
胸の側面を舐められ、不意に走った舌のヌルリとした感触に光はひときわ激しく体を跳ね上がらせた。
子猫のような悲鳴をこぼす光の愛らしい反応に加虐心をくすぐられ、男は舌を這わせた箇所に今度は歯を立てる。
「ああぁっ! 噛、むな……っバカ……あッ、ふぁああ!」
噛み付かれる痛みは、強力な媚薬の効果が作用して鮮烈な快感となり体中を駆け巡る。
堪らず光は男を引きはがそうと、がむしゃらに男の髪を掴んだ。
しかし今の光には幼児のようなか弱い力しか出すことができない。
男は髪を引っ張られる感覚をも愉しみながら乳房を甘噛みし続け、
たっぷりと肉の感触と光の反応を堪能してからようやく口を離して、薄く歯形のついた柔肉をペロリと舐め上げた。
「すごいですね。まだ理性が残ってるんですか?」
顔を真っ赤に染めて忙しなく呼吸を乱す光。
だが、男を見上げるその目には未だ確かな反抗の色が残っていた。
「さすがヒメちゃんです。でも、そろそろ楽になりましょうか」
「ぁッ、あ……っ! ゃだ、ぁあ……!」
指の爪先が歯形をなぞり、円を描きながら丘を登って乳輪のふちを撫でる。
焦らすように、光の期待をあおるようにゆっくりと。
乳房を弄んでいる間、男はわざと乳頭には触れずにいた。
刺激から置いてけぼりにされ、さんざん焦らされたそこはすでに性感の塊と化していた。
そんな場所を責められたらどうなってしまうか……。
わずかに残る理性の中で震え上がり、光は切迫した喘ぎを漏らす。
……だめっ、そこには触らないでっ!
しかしその悲願は届かず、ついに男の指が固い蕾を捕えた。
「ふあぁあっ!!」
キュッと摘み取るように指の腹でしこりを潰され、くすぶっていた欲情が一気に狂い咲く。
光は湧き起こった快感に嬌声を弾ませて全身をわななかせた。
ますます硬さを増していくそこを容赦なく責め立てながら、男はもう片方の胸の頂をそっと口に含む。
「ああぁッ!いやっ、ああ!!」
舌を不規則に動かして実を転がし、わざと音を立てて吸い上げ、そして軽く歯を立てる。
そして反対の胸では指が摘まんだそこを左右に捻っては押し潰し……。
極限まで敏感に尖った乳首を徹底してなぶられ、光の身体はたちまち快楽の坩堝へと呑み込まれていく。
「んぁッ、ああぁ! っ、だめ……だめ、もぅ……っ!!」
ゾクッと下半身が震えたことに、光は嫌な予感を察知してとっさに男の肩を掴んだ。
男もその反応から絶頂が近いということを悟り、光の制止に構わず一層激しく胸の先端を襲う。
「やぁああっ! いや、イッちゃ……っあ!ふあぁああッ!!」
とめどなく押し寄せる快楽に抗うすべもなく、光は仰け反らせた喉から甲高い悲鳴を上げて全身を感極まらせた。
恐悦の波を受け、大きく身震いする胸からチュッと水音を立てて唇を離し、男は舌なめずりしながら光を見下ろす。
「胸だけでイッちゃいましたね」
「ふあ……っ! んんっ……」
一段と赤らんで汗を滲ませる乳房にそっと指先が触れる。
それだけで胸の内側に細やかな刺激が走り、絶頂の余韻が深く甘やかに体中へと溶け広がっていく。
「少しは素直になってくれましたか?」
「……っ」
目まぐるしい恍惚感に意識を朦朧とさせながら、光は男を見つめて濡れた唇を開く。
「……胸、だけじゃ、足りない……っ」
その言葉を聞き、ニタリとつり上がる男の口元。
──光の心は完全に肉欲に堕ちていた。
「ですよねぇ。ちゃんとこっちも気持ちよくならなきゃ、満足できないですよね」
「ひゃ、あッ! あ、あっ……んぅぅ!」
下半身へと伸びた男の手が太ももを撫で上げ、下着の上から熱く発情しきった媚肉を押し広げる。
食い込んでいく指に愛液が絡みついていくほど濡れそぼったそこは、待ちわびた刺激に歓喜するように更なる蜜を吹きこぼす。
「うわぁー。もうビッチャビチャ。ずっと触られるの待ってたんですね。おっぱいに夢中になっててごめんなさい」
「んあぁっ!! あっ、あっ!ゃ……ッそこ……!」
淫裂をなぞっていた指が小さなしこりを捕える。
胸の突起以上に性感を高められたそこを下着越しに摩擦され、光は再び激しく身体を悶えさせた。
「ここが、どうしたんですか?」
執拗に指先を動かしたまま男は意地悪く問いかける。
「やっ、あッうぅぅ!そこ、弄られたら……っすぐイッちゃうの……!」
イヤイヤをする子供のように首を横に振って鳴き震える光。
普段の光からは想像できないそのいじらしい姿に男は不覚にも心を揺さぶられ、下半身をたぎらせる。
「我慢しなくていいですよ? 好きなだけイッて下さい」
「ひああぁあっ!やぁッ、だめ……っいく、いくぅぅ!あッああぁああ!!」
男の言葉と指の運びに導かれるがまま、光はあっという間に快楽の頂点へと突き上げられていった。
ガクガクと激しく痙攣する身体。悲鳴を上げた口の端からはだらしなく唾液が一筋こぼれ落ちる。
そうして全身で快感をあらわにする光だが、表情には少しばかりの不満の意を漂わせていた。
「もっと……っやさしくしてよ、ばかぁっ……!」
歪む視界の中に男の顔を捉えて光は舌足らずにそう言い放つ。
キツく咎め立てるというわけではなく、ダダをこねて甘えているような雰囲気だ。
そんな光にまたしても不意打ちを食わされ、男は心臓を大きく脈打たせる。
「……っ、今のヒメちゃん、かわゆすぎるんですけど」
「きゃっ……あぅ! あっ、あぁあ……っ!」
欲情に任せて男はおもむろに光の胸の突起に食らいついた。
しかし光に言われたことを忠実に守って優しく唇で挟み、優しく舌で舐る。
そして胸を愛撫しながら、手を下着の中にさし入れてトロトロに熟れた割れ目へと這わせていく。
「ひゃあ……ッあぁ! ……っふ、うぅぅ〜ッ!」
蜜にまみれた花弁を割り、蕾の奥へゆっくりと一本の指を沈める。
胸と下腹部から同時に甘い疼きをもたらされ、光は思わず腰を浮かせて感嘆の喘ぎをもらした。
「痛くない?」
「んぁ、あ、あっ……!気、持ちい……ッひぅぅ!」
「よかった。でも物足りなくないですか?」
「ふぇっ? わ、わかんなぃ……っ」
「じゃあ……もう一本入れてみましょうか」
「あっ、ふあぁああっ!!」
ねっとりと愛液を絡ませて二本の指が膣の奥深くまで一息に突き込んでいく。
それと同時に、強引な圧迫感と内壁を擦られる熱い刺激が光を襲った。
中を掻き回されるたび快感に悶えて収縮し、グチュグチュと淫らな音を立てる貪欲な蕾。
その媚肉の具合や光の反応から次第に性感のポイントをつきとめ、男はそこを重点的に掻き乱し始める。
「あああぁあっ! きゃうッ、あっあぁあ! らめぇっそこ……っ感じすぎちゃうぅ、ふあぁ!あああんッ!」
ますます呂律の回らなくなった口で快感を叫び、光は無我夢中で男の体をキツく抱きしめる。
「んあっ。ヒメちゃん、眼鏡痛いでしょ」
密着したせいで自身のかけている眼鏡が光の肌にぶつかってしまっていることに気づき、男は眼鏡を外そうと体を起そうとした。
……だが、背中に回った光の腕が頑なに男を抑え込む。
「……ヒメちゃん?」
「ゃ、だっ……! 離れちゃ、やだぁ……っ!」
甘えた声で喚きながら光は一層腕に力を込めて男を抱きとめる。
「……くっついてたいの?」
小さく何度も頷きながら「うん」と答える光。
──その瞬間、男の欲情が激しく燃え盛った。
「ふああッ!? ああぁああーっ!! やっ、やあぁぁっ! やら、ぃやぁあっ!」
幾度も心を乱されついにタガの外れた男は己の衝動に任せて光の膣内をえぐるように指で荒し、震える乳房にかじりつく。
突然の猛撃に体中が恐ろしいほどの痺れに襲われて、光は快楽を受け止めきれず髪を振り乱して鳴き悶える。
「あぁあっ!イッちゃうっ、イッ……ひぁぁあああっ!!」
今までの絶頂を上回る、壮絶な恐悦が背筋から脳天へと突き抜け、頭の中がチカチカと眩暈を引き起こす。
指が抜かれると同時に仰け反らせていた背中をガクリと脱力させて、光は意識も絶え絶えに目の前の男を見つめた。
『優しくしてって言ったのに』
そう訴える濡れた瞳に余裕のない笑顔を返し、男は愛液をしたたるほどに含んだ下着に手をかける。
「ごめんね。僕もう、優しくできそうにないです……っ」
手早く下着を引き下ろして自身のズボンと下着も乱雑に脱ぎ捨て、光の白い脚の間へと割り入る。
そして狙いを定めて軽く息を呑み、一気に欲望の塊を光の膣内にねじ込んだ。
「きゃあぁあああッ!!」
重く鋭い快感が光の体の中枢を激震させる。
そんな目まぐるしい衝撃が抜けきらないままに、男は光の腰を引き寄せさらに奥深くまで自身を打ち込んで恐悦を送り込む。
「余裕のない、ダメ男でごめんなさい……っ。痛い、ですか?」
労わるように髪を撫でる男の手。
その手に自分の手を添え、きゅっと握りしめて光は弱々しく首を横に振る。
「だいじょうぶ、らけど……っあ! あぁッ……気持ちよすぎて、おかひくなっちゃッ……ふあぁぁああ!!」
「……っなんで、そんなにかわゆいの」
手を握り返し、男は容赦なく律動を加速させて熱く締め付けてくる肉壁を荒々しくえぐり、最奥を突き上げる。
何度も絶頂の荒波が押し寄せ、光は男の手を固く握りしめたまま痙攣の止まない身体を真っ赤に染め上げて「イク、イッちゃう」と狂ったように叫び続けた。
「今のヒメちゃんを、薬なんか使わないで引き出してみたかったな……っ。でも、僕には無理か」
自嘲と共に切迫した吐息をこぼす男。
下腹部から熱情が迫り上がるのを感じ、限界が近づいてきていることを悟ると、一度深く息を吐いて最後の猛攻をかける。
「きゃあぁああっ!あうッあぁぁあっ……またイッひゃうっ、あッんあぁああ!」
「……ッく……!」
激しく圧縮した光の熱い粘膜に誘われ、男はゾクリと腰元を震わせて胎内に煮えたぎった己の欲望を解き放った。
男の熱を全て呑み込もうとキツく絡みつく膣壁。
それに応えて男の肉塊は何度も脈打っては白濁を吐き出し続ける。
「ヒメちゃん? ……気絶、しちゃった?」
いつの間にか光は意識を手放し、時折快楽の余韻に震えながら深い寝息を立てていた。
眠る姿も幼い子供のようにあどけない。
そんな光に少し戸惑った笑みを見せ、男は光の頬にへばりついている髪をそっと掻き分ける。
「目が覚めたら、思いっきり殴られるんだろうなぁ」
そして散々罵って、暴れて、この家から出ていくことだろう。
「……でもね、君はもう僕から離れられないんだよ」
男は光の汗ばんだ額に口付を落し、呪いの言葉のようにそう囁いた。
ごめんね。
僕は卑怯で最低な男だ。
だから今よりもっともっと僕のことを嫌いになって下さい。
殺したくなるくらい、
この世から消えて欲しいと心から願うまで──…
第1話‐終
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