▼ 白濁液は蜜の味‐05
「あぁっ! あ、あっ……ふっ……ぅぅうっ!」
脚を大股に広げ、バイブを激しく出し入れさせて淫らな悲鳴を上げる光。
その姿にはもう恥じらう様子などみじんも感じられない。
楓の視線と言葉によって心を丸裸にされた光にもはや戸惑いなどなかった。
淫らで恥ずかしい自分も、弱く惨めな自分も全部さらけ出して受け入れてもらう。
その悦びを求めて光は、“もっと見て欲しい”とさえ思いながら一心不乱に膣内を自らの手で責め続ける。
「いい濡れっぷりだねぇ。膝にまで垂れてきれるよ?」
「ひゃうっ! ぁ、あっ……!んんっ」
こぼれ落ちる愛液をすくうように楓の指が膝に触れ、太ももを撫で上げる。
時折爪先で緩く引っ掻かれ、そのイタズラな指の感触が脚から恥部へと伝わり、光はビクビクと身体を震わせて嬌声を漏らす。
「くすぐったいの?」
「くふ……っ、くすぐったいけど、気持ち、いぃ……っ」
素直に快楽を口にする様は、昨夜の媚薬に侵されタガの外れた光を彷彿とさせた。
そんな愛らしい姿に、今すぐ押し倒して自らのモノで犯してしまいたいという衝動に駆られたが楓はなんとかそれを抑え、余裕のある笑顔をとり繕う。
「やっぱり光は可愛いね」
そう囁き、楓は指に絡みついた愛液をペロリと舐め上げた。
「……ねぇ、光は何が欲しいんだっけ? 教えて?」
「ふあっ……ぁっ! せっ……精子……っ! かえでの、せーしが欲しい、のっ……!」
快楽に濡れた声で自身の名を呼ばれ、精液をねだられたことにますます欲情が奮い立たされる。
顔を真っ赤に染めて喘ぐ光と、グジュグジュと激しい水音を響かせて愛液を噴きこぼす下半身を交互に楽しみながら、楓は自らの手でモノを扱き始めた。
「床にまでこぼれてきたよ? 恥ずかしいこと言わされて興奮したの?」
「やっ……ぁ、ああっ!」
「あ。また溢れてきた」
「ふ、ぅっ……! あっ! あっ、ぁああ!」
「恥ずかしい? でもその恥ずかしいのが気持ちいいんだよね?」
楓の問いかけに答えるかのように膣口から再び大量の蜜が溢れ出る。
否定もせず、ただひたすらに甘い声を上げてバイブを動かす光。
その陶酔しきった表情や小刻みに震える身体から楓はそろそろ絶頂が近づいているということを感じ取った。
「ね、もっとおねだりしてみせてよ。俺が思わず射精しちゃうくらいいやらしく」
「あっあ、んん……っ! せいしっ……、精子、ちょうだい……っかえでの、ッあ!あぁあっ!ふぁっ……!せーし、欲し……ッあぁ!あっあぁ……だめ、もぉっ……!」
「イッちゃいそう?」
「ふあぁっ……うッう、ん……っ! も、イッちゃう……っあ、ああぁ!」
「いいよ。見ててあげるから。思いっきりイッて」
「ひあっ……あっ、あッ……!だめ、あっ、あああっふぁああああぁあ!!」
ビクンッと大きく体を跳ね上がらせて光は自ら導いた絶頂に鳴き震えた。
下半身から脳天へと狂おしい快感が突き抜け、ガクガクと痙攣する脚では身体を支えることができずその場に崩れ落ちる。
甘美な達成感に満たされ、身も心も真っ白に溶かされていく。
……けれど、どんなに快感を得ようとも、絶頂を迎えるだけでは身体の疼きは治まりきらない。
「光のおかげでいっぱい出たよ」
「……っ!」
楓のその言葉を聞き、光はとっさに顔を上げた。
目の前に差し出された手のひらの中で揺れる白濁液。
ずっと待ち焦がれていたそれを目にした瞬間、光は考えるよりも先に手のひら目がけて舌を伸ばした。
「だめーっ」
しかし精液に届く寸前で手が高く振り上がり、勢いよく突き出した舌は虚しく宙を切るだけに終わってしまった。
「なんで…っ?」
最後の最後で再びおあずけを食らった光はクシャクシャに溶けきった顔を哀切なく歪めて楓を見上げる。
「四つん這いになって」
一言そう言い放った楓は、欲望を吐き出して落ち着いたのかすっかり余裕のある表情を取り戻していた。
一刻も早く精液を口にしたい光はすぐに言われた通りに両手足を床につける。
四つん這いになり、「早く、早く」と瞳で訴えかける光はまるで主人に忠実な犬のようだ。
征服感にゾクゾクと胸をくすぐられながら、楓はそっと立ち上がって光の膣から抜け落ちていたバイブを拾い上げた。
「動いちゃダメだよ」
「ふぇっ……? あっ!ふぁ、ッああぁああ!!」
剥き出しになっている光の秘部にバイブの切っ先をあてがい、有無を言わさず根本まで突き刺す。
そしてさらに楓はスライド式のスイッチに親指を添え、段階を踏むことなく一気に最大の振動まで引き上げた。
──ヴヴッ!ヴヴヴヴーーーッッ
「ひぃッ!? ひあっあぁあっ!あふぁッあああぁあ!!」
下半身全体を揺さぶるかのような強烈な振動に襲われ、光は突然の刺激を受け止めきれずに髪を振り乱して鳴き喚く。
「落さないでね」
真っ赤に染まった光の耳元でそう囁くと、楓は悠々とした動きで再びテーブルに腰を下ろした。
「はい、どうぞ」
「あっ、あああぁっ! っく、ふぁッ、あぁううぅぅっ!」
光を誘い込むように、手のひらの中の精液がタプンと波打つ。
……舐めたい、早く舐めたい……っ!
そう思っているのに、体内に埋められた玩具の動きに体中が震えて手のひらまであと一歩近づくことができない。
絶頂を迎えて一段と敏感になった媚肉に、手加減を知らない機械の駆動はあまりにも激しすぎた。
バイブの凹凸に何度も何度も膣壁を抉られ、その予測のできない刺激に光はとめどなく身体を打ち震わせて、堪えるように床に爪を立てる。
「いらないの? 早くしないとこぼれちゃうよ?」
「やっ……!!」
楓の意地悪な言葉に思わず駆り立てられ、光はなんとか手のひらまでの一歩を踏み出した。
そしてバイブの猛烈な快感に苦悶しながらも必死に精液まで舌を差し伸ばしていく。
「……っあ! ふあぁっあああぁあ!」
舌先がそのトロリとした液体に触れた瞬間、今までに味わったことのないような恍惚感が光を包み込んだ。
その甘い疼きは、恥部にもたらされている荒々しい刺激と混ざり合い、光の身体を一気に快楽の果てへと突き上げていった。
あまりにも急激な絶頂を受け、光はガクガクと手足を痙攣させながら頭を楓の太ももに預けて項垂れる。
ほんの少し触れただけなのに舌の先は瞬く間に熱を持ち始め、舌から口内、そして脳へと快楽を広げていく。
舌を垂らし、とめどなく唾液を溢れされてピクピクと快感に悶えるその口は、第二の性器にでもなってしまったかのような淫らさだ。
「はぁっ、はッ……あ、んっ、ふぅうっ……!」
何度も浅い呼吸を繰り返してわずかに身体を落ち着かせた光は再び精液を求めて頭をもたげる。
またさっきのような衝撃がくることを予期して、不安と期待に胸を締め付けられながら、恐々と今度は先ほどよりも深く舌を這わせた。
「はっ、あ……! ぁふッあ、あっあぁあ……!」
舌を丸めて慎重に精液をすくい取る。
紛れもなく男の生殖器から放たれた体液のはずなのに、それはまるで蜂蜜のような甘い甘い味わいを舌にもたらして口内中をとろけさせた。
「んっく……ふぁっ!は、ぁああ……っ!」
喉を鳴らして呑み込むと同時に、身体の奥で熱い快感が弾ける。
駆動を続ける淫具によって栓をされている膣口から洪水のように愛液を噴きこぼしながら光は火照った強制を上げて甘美な肉悦に酔いしれた。
「美味しい?」
「んぅっ……ふ、あっ! あっ、は……っんんぅ!」
精液を舐め取りながら、コクンと頷いて楓の問いに精一杯答える。
そうして光は夢中で手のひらに舌を這わせ、幾度も絶頂に果てながら精液を余すことなく己の体内へと取り入れていった。
「……っ、は……、はぁっ、は、ぁ……っ」
全ての気力を使い切り、糸の切れた操り人形のようにグシャリと床に崩れ落ちる光。
痺れと眩暈と気だるさに襲われ、もはや指の先すら動かすことができなかった。
「お疲れ様」
「ひやッ、あ、ぁ、んんっ……!」
突き刺さったままのバイブを抜き取り、楓はビクつく太ももにそっと口づけを落す。
「自分の身体がどうなったのか、これでよーくわかったよね?」
霞む視界に映る楓の憎たらしい笑顔。
その黒い瞳を真っ直ぐに見据えて、光は最後の力を振り絞って唇を震わせた。
「おまえなんか……しねばいい」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
罵られてなぜ礼を言うのか。
徹底的に馬鹿にされているとしか思えない。
楓の反応に神経を逆なでされるも、光にはもう目を開ける力も残っていなかった。
快楽も戸惑いも憎しみも全部溶かして、
光は真っ白な夢の世界へと堕ちて行った。
第2話‐終
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