Under the moonlight…
「ほら、逃げんなって…」
月だけが唯一の明かり。
人気のない夜の海に、服を着たまま胸まで浸かり、月明かりに浮かび上がる不二の白い首筋に唇を這わせる切原は、吐息混じりに囁いた。
「イ、ヤだってばっ」
後ろからしっかりと抱き締められ、身動きもろくにできない状況でも不二は嫌だと言い首を横に振った。
「散々、今まで逃げてきたんだ。今日は逃がしてやんねーからな…」
荒々しく言った切原は、不二の服の中に手を滑らせる……
「やっ」
肌を滑る切原の手にビクッと不二の体は震え、慌てて押さえた口元から熱っぽい吐息が漏れ出す。
脇腹を撫で上げ、胸の突起を押し潰せば、不二の口から抵抗する言葉が紡がれる事がなくなり、その代わりに甘い嬌声が聞こえ、切原の欲を掻き立てる。
「嫌だ嫌だって、あんなに拒んでいた割には…感じてんじゃん…」
喉の奥で妖しげに笑いながら不二に言うと、切原の手は下へと伸びて、不二の高ぶる熱に触れた。
「っ…」
不二は驚いたように一瞬目を大きく開いて、小さく息を呑む。
「や…ぁ…はぁ…」
ビクビクと震えながら、漏れる甘い声に切原はもう理性を抑える事が出来なくなっていた。
「すげぇぜ?不二さんのここ…」
笑みを含んだ声で囁きかけ、首筋に唇を這わす。
「あ…ん…ダメ…切、原く…もう…ぁ」
途切れ途切れに言葉を発しながら、不二は限界を訴えた…
それを聞くと、切原は口元に深い笑みを浮かべ、不二の高ぶりの根元を人差し指と親指で輪を作ってキツく締める。
「あぁっ…」
それと同時に不二が悲鳴を上げ、見開かれた目からは辛さのせいでボロボロと涙が零れた。
「な、んで…」
首だけで振り返ろうとすると、切原は空いた手で不二の顎を掴んで不二の言葉を口付けで奪う。
「…今まで焦らされきたから…ちょっとした仕返しっすよ…」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべ、切原は「それに…」と話しを続ける…
「その辛そうな顔が、堪んねー…」
チュッと音を立て、不二の瞼に口づけをおとすと、戒めていた手を緩めて再び不二を追い込んで行く。
「やっ…あぁぁ…っ」
不二は悲鳴を上げると体をビクビクと震わせ、切原の手に欲蜜を放った…
ほんの数秒間、呼吸を調えようとしながらも今にも腰が砕けて海に沈んでしまいそうな不二を眺めたあと、小さく震える不二の体をヒョイッとお姫様抱っこで持ち上げ不安げな不二を余所に、少し陸に近い岩場へと切原は移動した。
「…何?…」
切原の考えが分からない不二は、ゆっくりと下ろされ水の中に足をついて尋ねた。
「最後まで、あんたを貰うから…」
先程まで意地悪い顔をしていた人とは思えない程真っ直ぐに、切原は不二に告げた。
──トクン。
とそんな切原を見て不二の心臓は甘く脈を打った。
最後まで…その意味は分かっていた…
恐怖より先程の余韻と、本気で自分を求める切原に色気を感じ、不二の理性もなくなってしまった……
切原は着ていたシャツを脱ぎ、岩にバサッとかけその上に不二の手をつくよう促す。
そして不二がそこに手をつくと、切原は不二の下着ごとズボンを下げ、秘部に指を一本ゆっくりと埋め込んでいく…
「やっ‥あっ…切原く…んっ」
「慣らしてやんないと、辛いのは自分っすよ…」
海水ですっかり冷えたからだに、押し入ってくる異なる温度の切原の指と、一緒に入ってくる海水で不二にはそれがとても生々しく感じる。
「うっ…ぁ…ん…」
中を掻き混ぜて解していくうちに、苦しそうな吐息が嬌声へと代わっていく変化に切原が気づくて、指を一本…一本と慎重に増やしていく…
「あぁ…ん…ふ…ぁああ…っ…」
一度放って萎えた不二のものが再び熱を持ち始めるのを確かめ、不二はもう快楽しか追っていないのを確認すると、切原は指を引き抜き、その代わりに切原の高ぶる熱を埋め込んだ…。
「ゃ…ぁぁあああ…っ」
指とはまた違う質量に、苦しさと痛みとそれをも超える快感が一度に押し寄せ、不二は悲鳴のような嬌声を上げた。
「っく…きっつ…」
不二の締め付けに、切原は顔を歪めて吐息混じりに小さく呟くと、不二の腰に腕を回し先程の行為で立ち上がった不二の熱に触れた。
「ほら…深呼吸…力抜けよ…」
切原は出来るだけ優しい音色で不二に言った。
不二は小さく数回頷き、時より小さく喘ぎながら深く呼吸をし、強ばらせていた体の力をゆっくりと抜いていく…
「やれば、できんじゃん…」
自分が不二を淫らにしている。
その優越感を感じ、切原は喉の奥で妖しく笑い、不二の熱に触れる手の動きに合わせて腰を動かし始めた。
海の波とはまた違う波が2人の間で起こり、不二の口からは再び甘い嬌声が零れるのに時間はかからなかった。
「ん…ぁ…ああ…」
「あんたってさ…ココ…弱いだろ」
不二が一際いい声で鳴いた場所に腰を打ちつけて尋ねる…
「ひゃ‥ぁあん…ああっ」
切原の言葉が聞こえていても、快楽を追うことに夢中になっている不二は、yesと答えられない代わりに感じてみせた。
「俺が…あんたの最初の男だぜ…」
満足そうな笑みを浮かべて耳打ちすると、切原は腰を強く速く打ち付け、不二と自分自身を絶頂へと追い込み、達する前に…
「そして最後の男だ…」
と、囁いて不二の中に欲蜜を注いだ。
「成り行きで海入って服はビショビショだし、腰痛いし…」
いつも余裕の笑みを見せる不二は、ムスッとした愛想のない顔で切原に文句を言った。
「悪かったっス。状況は俺が説明するから…」
弟だの家族だの部活だのと色々理由をつけられてはあしらわれ続け、不満と欲がこんな感じで爆発するとは自分自身でさえ思っていなかった切原は、ばつの悪そうな顔をしながら不二に言った。
「それに…ほら、痛いならおぶってくし…」
そう言うと、波打ち際に座り込んでる不二に背中を向けてしゃがんで見せる。
「…お願いしようかな」
頬をほんのりと桜色に染めた不二は、小さく呟くと切原の背中にピタリとくっついた。
(やっぱ…次はベッドの上で、だな…)
と、切原が密かに考えているとは知りもせずに…。
*end*
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