朝のマックで天使とラッキー


(あ―ぁ……何で今日のラッキープレイスが電車なんだよ! 満員電車でちっとも良いことなんてなさそうだぜ)
 いつも自転車通学の千石は、占いを信じてラッキーなことを求め珍しく電車に乗っていた。
(おっ! あれは青学の不二君! 相変わらずかわいいね)
 同じ車両内で少し離れた位置で不二を見つける千石。しばらくみとれてしまう。
(いかん、いかん。いくら最近テニスだけの淋しい性活だからって男にみとれて、どうすんだ? オレ。でもまあいっか、あんだけカワイ子ちゃんなら仕方ないよな)
 うん、うん。
(ありゃ? 何か様子が変だな)
 もじもじとうつむきかげんの不二に近づこうと満員電車の中、無理矢理人を押しのける千石。
(もしかして……触られている???)
 ここからでは状況がハッキリしないけれど。
(まさか??? いやあれだけかわいかったら触ってみたい気持ち分かるな。んっ? そうじゃなくて! 助けてあげないと……)
 人を押しのけて、やっと不二とその痴漢までたどり着く。不二に千石に気付く余裕はない。
(やっぱり、触られているじゃん! この変態親父め! 許せん! んっ? ところで、どうやって騒ぎにならないように、撃退できるかな)
 千石があれこれ考えていると、通学途中の駅に着き電車のドアが開く。混んでいるのをいいことに、ドアが閉まりかけた瞬間一気にそのスケベ親父をドアの外に追い出すことに成功!!!
(う―ん、ラッキー)
「ありがとう!」
 少し瞳を潤ませ、うつむきかげんで、恥ずかしそうな不二がそう千石に言った。
(なっ、何てかわいいんだ! こんなかわいこちゃんにオレは今、感謝されている! なんてラッキーなんだ!)
「僕を助けてくれたんだよね、千石君!」
 そう声をかけられたのに、千石はすでに違う世界にいってしまっていた。
(今までに、こんなにかわいかった娘〈←何故か女の子扱い〉がいるか? いいや、いない!)
 ぽ―っとしたまま感動する千石。すると、電車が急に揺れて、不二を抱き止める形で二人くっつく。
(ラッキー! 今日のオレ役得!)
「あれっ?」
 不二はそう言うと、何故かまたうつむいてしまう。
(ありゃ? どうかしたのかな?)
 うかれていた千石もさすがに青ざめた。
(どうかしたのは、俺の体の方だ!)
 満員電車の中、自然にくっついたままになっていたから、どうしてもごまかしのきかない状態になっていた。
(まずい! いくらかわいくても、男に反応してしまうなんて、オレどうしちゃったんだろう? この場をどうごまかす?)
 千石は半勃の自分の体を呪いながら、相手の反応が気になりドキドキしていた。
(オレ、変態だと思われたらどうしよう……)
 そう悩んでいると……
「ねぇ、千石君。朝ご飯って食べてきた?」
「えっ? どうして?」
「僕、実は食べる暇がなくて、食べてこなかったんだけど、もし千石君が食べていなかったら、さっき助けてくれたお礼を兼ねて、どこか食べにいかないかな? 少し時間ある?」
「えっ? いいよ」
(あれっ? 気付いていないわけないよな?)
「ねぇ、マックでいーい? 朝マックしよ」
 千石は、不思議に思いながらも次の駅で一緒に降り、不二と一緒に朝マックすることになった。
 テーブルに買ってきたものを置いて席に座ろうとすると、
「千石君、ちょっと……」
 そう言って自分に着いて来るように促す不二の後をついていく千石。すると不二はトイレに入り、しかも個室に案内する。
「ねぇ、千石君。千石君へのお礼と僕の朝ご飯……」
 一瞬何を言われたのか分からなかった千石は、自分のズボンのチャックを開けられ、さらに動揺しまくる。そんな千石に不二は極上の笑顔で、
「ねェ、さっきは助けてくれてありがとう」
 そう言って、千石のモノを取り出すと、少しためらいながらも口に咥えてしまった。
「えっ? あっ! マジ? うっ!」
(どうしよう……こんな大きいなんて、疲れそうだな)
(ウソだろう? 夢かな? でも確かに夢じゃない……こんなかわいこちゃんに積極的に俺食われてる? ……それにしても、上手い! もしかして慣れている? 相手は?)
(……大きい……、こんなの入れられたら死んじゃうかも)
 ちゅぱ、ちゅぱという音は、天使の唄?
「んっ! あっ! っあ……あ〜……(うぅっ、天国〜)」
「んむっ……ふ……」
 千石のモノを咥えて少し苦しいのか、息継ぎのため千石のモノから一瞬離れた時に見えた、半開きのままの濡れた不二の唇に千石はドキッとするほどの色っぽさを感じて、さらに千石の虎砲は脈打った。
「んあ……っあ……ご……ごめ……ん」
「んっ……ん? なあに?」
「もっ……もう……いきそ……う……なん……だけど……」
(このままじゃ……このままじゃ……口の中に出しちゃうよ)
 と、千石が思っていると、
「いいよ」
 と、あっさり答える不二。しかも、いつもの笑顔付きで。
(そんなぁ。俺本当に出ちゃうんだけど……)
 堪えきれず千石は一気に欲望を吐き出した。
(ああ、こんなかわいこちゃんの口の中に……。ご、ごめん)
 千石は本当にそう思った。
「め、めんご。ほんと」
 不二は少し零れた口の端を手で拭いつつ、
「朝ご飯ごちそうさま」
 にこっ、と微笑みながら言った。
 そして、素早くご満足後の千石のモノをしまうと、チャックの音と同時に、
「朝練間に合わないけど、お互い学校に行かなくちゃね」
 そう不二に言われて、トイレの個室を出て、朝マックは食べることなく、お互いの学校に行くために駅に戻って歩きだした。
 その間も、再び電車に乗ってからも、お互いたいした会話もせずにいた。
「それじゃ」
「あ……、うん……」
 何事も無かったように、いつも通りの笑顔で電車を降りていく不二に、千石はまるでさっきのことが、夢だったのかなとその瞬間思ってあいまいな答えになってしまった。
 これでもう別れ──とハッとすると、電車のドアが閉まりかけた時に不二が振り返った。
「明日も守ってくれる?」
 そう確かに言われた。
(やっぱり、今日の俺ってラッキー☆ いや、明日もラッキー!?)
 なんて考えているうちに乗り過ごしていた。降りる駅は過ぎているのに……。

 ラッキーは続くよ、どこまでも──


 END


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