モアスロー


 ゆっくり、ゆっくり。

 それはもう、一日が一週間分くらいあったら。

 いつもより長く一緒にいられるのにね。

 僕の周りの景色は、君が横にいなければ綺麗に見えない。


『ねぇ、手‥繋いだら変かな?』
 次に会う時用の服を真剣に選んでいる裕太に、横からこっそり耳打ちする。
 それでも僕の言葉を無視してチェックのシャツと向き合っている裕太。
 耳まで真っ赤にしてるのにね。聞こえてるのバレバレだよ。
『ふふっ‥』
 でも裕太には言わない。聞こえないフリを一生懸命している裕太が可愛いから。
『裕太、僕が居る時に僕と会う時用の服かっても意味ないんじゃない?』
 今度は聞こえないフリなんか出来ないよう、少し大きな声で口を挟む。
『うっせー』
 そんな怒った裕太も可愛い。
『ね、裕太。買物終わったら公園行こうね?』
 こうやって一日中裕太といれるなんて、滅多にある事じゃない。裕太は随分服に迷っていて、この店で僕は待たされたままだけど、一緒にいれる事が嬉しいから、平気。
『赤と青どっちがいい?』と聞いてくる裕太に『ベージュ』と言ってやって、笑った。
『俺がベージュなんて着たら親父みたいじゃん』
 そう呟いてまた悩む裕太の横顔。僕よりずっと男らしくて。引き込まれる。
 片手に迷った末にやっと決まった服が入っている袋をぶら下げて、公園に向かった。
『なんで公園なんだよ?』
 行く場所なら他にも沢山あるのに。と裕太が聞いてきた。
『だって昔二人で日が暮れるまで公園で遊んだじゃない』
 もう夕日が沈んでしまった公園は、誰もいなくて、二人の貸し切り。
『懐かしいな』
 裕太が僕を見る。暗くてよくわからないけど、きっと優しい顔をして。
『ブランコしようよ』
 あの頃と変わっていない、ちょっと寂れた様な感じの鎖を掴んで漕ぎ出す。
 ギィギィ…と静かな公園には大きく感じる音が響いた。
『裕太も早く早く!』
『俺、もうブランコなんて 似合わねぇから押してやるよ』
 裕太が背後に回って、僕の背中を優しく押した。
『じゃあ僕は似合うの?お子様って事〜?』
 ひどいなぁ。と振り返ると裕太が腰を屈めていて、顔がすぐ近くにあった。
『周助…』
 ぐっ、と鎖を引くと、ゆっくり揺れていたブランコが止まる。
『…裕太?』
 大きな掌が僕の頬に添えられ、1p、2p‥更に距離が縮められる。
『‥ん…』
 そう言えば、今日一回もキスしてなかったかも。
 鎖を握ってた裕太の手は、鉄の匂いがした。
『ッん…』
 うなじを舌で撫でられると、もうどうしようもないくらい躯が熱くなってくる。
『裕…っ』
 開けた胸元に、夜風があたる。
『ここじゃ‥嫌か?』
 遠慮がちに裕太が聞いてくる。家に帰ったら、二人でゆっくりできないから‥。
『ううん。いいよ…』
 うつむきながら言うと、その口を再び塞がれた。
『ぁっ‥あ、裕太っ…』
 今度は裕太がブランコに腰を掛けて、僕が裕太の膝に座る。
『周助…』
 落ちない様に、躯を密着させて。
 お互い近すぎて、二人の間に酸素はないかもね。
『‥っ、んン…』
 何回も、何回もキスしてたから、余計苦しくて。呼吸困難になりそう。
『裕‥もっと…っ』
 心地良い、苦しさ…。僕と裕太の薄い素材のシャツは、汗と溢れた蜜で、びっしょりと躯にへばりつく。
『いい‥?』
 返事もしないうちに指が後孔を探る。
『あっ、ぁあ‥ん…』
 蜜壷が一本、あてがわれた指をずぶずぶと呑み込んでいく。慣らされていたわけでもないのに、とろとろと愛液が分泌されてるのがわかった。
『周助の中すげー…』
『ばか‥っ、ぅん…っふ』
 いつの間にか、三本に増やされていた指で、中を掻き回される。
『…あ‥ふッ‥、あっ、駄目っ…』
 蕾から、雫が滴って渇いた土をしめらせる。
『早く周助のナカ入りてー‥』
 一言呟いて、深く唇を重ねる。口端から、拭いきれない程の唾液が伝う。
『ッ‥ぅふ…』
 荒々しいキス。僕はそれがとても好きだ。裕太の性格をそのまま、表しているようで。
『周助っ、‥周助』
 譫言の様に呟いては、また貪る。
『ゆっ‥んんッ…ふは…』
 躯がべとべとする。夏の気温より、今僕等の周りを取り巻く空気の方が、よっぽど暑い。湿り気を帯びているけど、気持ちいい。
『裕太そんな一生懸命になってて‥子供みたい…』
 くすくす笑うと、裕太がそっぽを向く。
『うるせ‥今日大分我慢してたからな…』
 やっぱり僕は‥裕太が好き。
『入れるぜ‥』
 合図と共に裕太の大きな塊がキツイ蕾に当てられる。
『ぅ…んっ、アっ…』
 やっぱり最初だけはどうしても慣れなくて。
『悪ぃ。大丈夫か?』
 心配させてしまう。
『ん‥平気。続け……てッ』
 下から一気に突き上げられると、いつもより早く全部入ってしまった。
『っ‥ナカは大丈夫みたいだな…』
『うん…溶けそうな程…アツイよ‥』
 こんな場所だからか‥いつもより異様に興奮する。きっと裕太も同じだと思う。
『あっ、あ‥裕太ァ…イっ、いい…ッ』
 ブランコの上で繰り返される律動。
『俺もっ‥』
 深く、深く繋がって、一つになる。
『ゆ‥た‥っ、すきっ…』
 口にしたら恥ずかしくなって、きゅうっと締め付けてしまう。
『わ…、んな、締めんなって‥』
 裕太の先端が中で膨らむ。
『俺も好きだよ‥』
 意外な裕太の言葉。照れ屋の裕太が言ってくれるなんて。嬉しくて、嬉しくて。
『ゆうた…僕がしてあげる…』
 チュッと鼻の頭にキスして、自ら腰を揺らす。
『ぅわ…やべ、たまんね‥っ』
 僕が動くと、もっと奥まで届くみたいだから。
『ひぁ‥ァあん‥、も…いっちゃ…』
 ブランコ‥壊れないかな。
『周助…っ、イッ…』
 一際大きくブランコがうなりをあげた時、熱い飛沫が放たれるのを感じた。


『こんなに服ぐしゃぐしゃにしてったら母さんに何か言われるかな』
 失敗だったかな?と裕太に向けて、ぺろっと舌を出した。
『帰ったらそっこー着替えれば余裕だろ』
 苦笑しながら裕太が言った。こんな時まで、僕よりしっかりしてるんだから。
 帰り道は、人影も疎らで。僕たちは堂々と手を繋げた。外で普通の恋人みたいにするの、憧れだったんだ。
『裕太暫く戻らないんでしょ?』
『ああ…』
 残念そうな返事が返って来たけど。会えないのは僕もとても寂しいけど。
『待ち合わせして会うのも恋人ぽくていいんじゃない』
 何センチか背の高い裕太を見上げて、にっこり笑った。次会う時はきっと新しい服を来た裕太が見れる。それを心待ちにして。

 家に着くまでの十数分…裕太と二人でいれる時間…

 僕の周りの景色は輝いている。


 END


お宝書庫へ戻る

- ナノ -