雪だおれ


 雪
    雪

  雪    雪

      雪


  雪
    雪



 雪が降る。。。

 白い。。。

 綺麗。。。

 彼に会いたい。。。


「・・・ぅへぇーっくしっっ、あ゙〜 マジ死ぬかと思ったぁ」
「大丈夫? でも驚いたよ、僕ん家の前に芥川くんが行き倒れてるんだもん」
「あーもぅ不二ってば、ジローでいいってー、前にも言ったじゃん」
「ふふっ、じゃ……ジロー、紅茶入れたからどうぞ」
「いぇい、不二やっさС〜♪」
 数分前、この芥川慈郎は不二邸の前で雪に埋もれて眠っていた。
 いつもより早目に学校から帰宅した不二が発見していなければ、今頃は雪だるまか現場検証である。
「不二っ、この紅茶うまいっ! すっげーイイ匂いするっ」
「アップルブランデー入れてみたんだ。あったまるだろ」
「うんうん、やっぱ来てよかったー♪」
 紅茶をずずずと啜りながら慈郎は不二に会いに来たのだと嬉しそうに言う。雪を見ていたら会いたくなったのだと。
「雪を見て……僕? どんな連想ゲーム?」
「ほぇ、あっれー何でだぁ? っと、雪見てたらワクワクしてきてー、そんでーそんでー不二に会いたくなってー・・・、そうっ、雪見てたらマジすっげー不二に会いたくなったから来たんだっ☆」
 それでは全く答えになっていないのだが、心底満足げな慈郎に不二もつい笑みが零れてしまう。
「僕も会えて嬉しいよ。それにしても、よく僕ん家知ってたね」
「へへっ、前に皆で跡部ん家来た時に忍足が教えてくれたの覚えててー、偉いっしょ」
「・・・跡部」
 なぜ忍足が自分の家を知ってるのだろうか、などと頭の隅で考えながらも、不二が呟いたのは別の人物の名前であった。
「そう、跡部。知ってる? マジ近ぇんだぜ」
「・・・知ってる、よ。跡部とは幼馴染みだし、、」
 実はもう随分前から“恋人”でもあったりするのだが──。おそらく慈郎は知らない。
「幼馴染みかぁ。じゃあ仲良かったりする?」
「そう、だね。仲は良い……かな」
「くっそーっ、羨まС〜っ! 俺だって不二と仲良くしてぇ」
「してるんじゃない? 今だってこうして一緒にお茶してるよ、ねぇジロー?」
 実際、跡部との“仲良く”はお茶レベルの話ではないのだが、天真爛漫な慈郎を見ていると真実を口にするのも憚られ、不二は出来るだけ邪気なく微笑んでみせた。
「ヤッタ、仲良しだぁ。ん、ふわぁ〜……ぁ、安心したらまた眠くなってきた。ねー不二ぃ、ここで寝ていい?」
 そう言いつつ慈郎は絨毯にごろんと横になってしまった。
「不二〜まくら〜? 膝枕して〜」
 ごろごろと転がって不二に擦り寄ってくる。そんな慈郎は余りに無邪気で、こう懐かれては不二も悪い気はしない。
「駄目だよジロー、このままじゃ風邪ひくよ。お風呂沸かしたから入ってあったまっておいで」
「風呂♪ 入る入るっ、やったーー!!」
 バスルームの場所も聞かず駆け出す慈郎。弟の裕太もあれぐらい素直だと嬉しいのに……くすりと微笑って見送った。


「うっわー、すっげー広い風呂! な、な、不二っ?」
「何?」
「一緒に入ろーぜ♪」
「な、に……」
「不二だって帰って来たばっかで、こんなにカラダ冷えてんじゃん?」
 そう言ってぎゅっと抱き締める慈郎。自分より幾分小さい彼の柔らかいクセっ毛に頬を擽られ。擽ったくて……。不二は反射的に押し返してしまう。
「不二ってば、ハズカСーんだ? いーじゃん、男同士なんだしさ」
「じゃ、なくて……ほら、僕これから食器の後片付けとかっ」
「そんなの後、後っ☆ 不二が一緒に入ってくれないと俺、溺れ死んじまうって。今すっげー眠いもん・・・ふゎ〜ぁ・ぁふ」
 そう言ってまた大あくび。このまま一人で入浴させれば、数十分後には土左衛門か現場検証である。それも困る。
「分かったよ、一緒に入ろう──」


 そして数分後。二人は並んで湯船に浸かっていた。
「ん〜〜いい湯っだな♪ なっ、不二、このお湯ナンデ白く濁ってんだ?」
「入浴剤入れてみたんだ、あったまるだろ」
 不二家の浴槽はかなり広く男二人で入っても余裕なのだが、この至近距離で裸を直視されるのは男同士とはいえさすがに恥ずかしい。不二の苦肉の策でもあった。
「ふ〜ん。何かトロっとしてるし」
「そう言えば“とろ〜り湯”ってパッケージに書いてあった……保温と保湿の効果があるんだって」
「へぇー、ヌルヌルしてて面白ぇな」
 ゼリー状の滑らかな触感が気に入ったのか、慈郎は楽しげに自分の肌を撫で回している。そんな慈郎を見て不二は、意識し過ぎだったかな、と少し恥ずかしくなった。
「不二の肌もツルツルだな、気っ持ちΕ〜♪」
「……ひゃぅ」
 突然、背後から肩を撫でられビクッとしてしまう不二。しかし、慈郎はその反応にも気にした様子なく、更に負さるように不二に密着してくる。
「こら、ジロー」
「う〜ん・・・シんアワセ〜。不二だ〜い好き…ぃ……むにゃむにゃ……」
 そうして慈郎は愛の告白ともとれる言葉を残し、安らかな寝息をたて始めるのだった。
「・・・えっ、ちょ、っと。ジロー? ね、寝ちゃったの? ねえ、ジロー起きて」
「んー……んが。。。zzz…z」
 いびきで返事をしたかと思うと、慈郎はまるで枕に顔を埋めるように不二の耳元に顔を寄せてくる。
「ぁ、――…」
 その熱い寝息が耳を擽る感覚に、不二は堪らず濡れた声を溢れさせてしまった。
 聞かれた? ……恐る恐る振り向くと、そこには相も変わらず無垢な寝顔。はたと自分の端なさを反省しつつ、不二が慈郎から離れようと身を捩った──その時である。
「……あ、ぁン」
 慈郎の右手がだらりと不二の脇腹を掠め内腿に触れたのだ。
「…………」
 だが、慈郎は眠っている。
 眠っている筈。
 なのに、困惑する不二を煽るかのように慈郎の柔軟な手首と掌が追ってきた。左手は敏感な胸の突起へ。
 ゆらゆらと蠢く慈郎の指先はヌルリとした湯との相乗効果で、予測不能に不二を刺激し続けていった。


「……んぅ……ンん、ぅく……っふぁ」
 どれぐらい時間が経ったのだろう。
 起こしても起こしても起きない慈郎とのもどかしい攻防。
 浴室である為、異様に反響する声を何とか抑えようとするのだが、跡部によって快楽に馴らされている不二の身体は淫らに反応するばかりで。
「ゃ、あ……ジロぉ……もダ、メ……ぇ」
 そうして、力なく浴槽の縁に伏せった不二の中心が、眠ったままの慈郎の右手に捉えられようとした、まさにその時──。

「そこまでだな」

 威圧的な声と同時に浴室の扉が勢いよく開かれ、跡部景吾がズカズカと入って来た。
「……景吾!?」
 不二は突然の恋人の登場に驚きを隠せない。
「おいジロー、いつまで寝たフリしてやがる」
 跡部はいつものクールな口調と共に、慈郎を不二から引き剥がす。
「ね、寝たフリって」
「気づかなかったのか。狸寝入りに決まってるだろ、なあジロー」
「んが……、あ、バレちった……ハハ」
「ジロー、前にも言ったろ? 周は俺様のだから手ェ出すなってな」
「俺だって言ったじゃん? 好きなもんは好きって、さ」
 無邪気な笑顔で言い放ち、慈郎は不二を真っ直ぐ見つめる。
「不二……俺オメェのコト好きだぜ。すっげー好きっ。雪見てて会いたくなったのも本当だし。狸寝入りだって騙すつもりじゃなくて、ただ不二に気持ちよくなって欲しかったんだ」
「ジロー……僕は、」
「──なかなかいい度胸だな」
 不二の言葉を遮ると、何と跡部はその場で服を脱ぎ始めた。
「け……ぃご? 何してる、の」
「バーカ。ここで服脱いでりゃ風呂入るに決まってるだろ、アーン?」
「ねえ景吾、怒って……る」
「何でそう思うんだ?」
「それは……」
 心当たりがあり過ぎて。
「最愛の恋人が他の男と風呂場で抱き合ってる現場に居合わせちまったら、まあ普通は怒るだろうな」
 確かに。
 しかし、跡部は慈郎を殴るでもなく不二を責めるでもなく悠然とさえしているように見える。
 逆にそれが慈郎にも不二にも大きなプレッシャーだった。
「おい、周……」
「景吾?」
 跡部は湯船に浸かると不二を背後から抱き寄せた。
「別に怒ってねぇよ。ただ。ちぃっと情緒不安定でな、八つ当たり位はしちまうかもな?」
 跡部は淡々と話しながら水面下で自身を扱き硬く膨張させていく。
「…――え!?」
「おい周……怒ってねぇけど余裕もねぇから、このまま挿れるぜ、今日は前戯なしな」
 宣告と同時に全然馴らしてもいない不二の後ろの小さな蕾に、勢いよく跡部の硬い楔が深々と突き埋められた。
「ひッ! ぃい、や、っ、はァ……ぁぁあ!!」
 ぬめる湯が潤滑剤の役割を果たし、衝撃にも切れこそはしなかったが、相当辛いに違いない──不二の目から生理的な涙が零れる。
「あー跡部の鬼!! 不二泣いてるじゃんか」
 慈郎は不二の涙を舌で拭ってやる。
「不二ぃ……泣くなよ、俺が気持ちよくしてやっから。いいよな跡部?」
 不二の余りの締め付けに苦痛と快楽を感じながら跡部は不敵に笑う。
「ああ、好きにいじってやれよ。このままじゃ俺様もイケそうにねえしな…オラよ」
 跡部は浴槽の縁に腰掛けると、接合部を見せつけるように不二の両脚をΜの字に開き抱え上げた。
「!! 景吾……ッ」
「すっげ、カンドー。俺、入ってるトコ間近で見るの初めてだぁ」
「も……やぁ恥ずかし…ぃょ」
 身を捩らせる事でささやかな抵抗を試みる不二だったが、接合部に鋭い痛みが走り可憐な蕾は悲鳴を上げる。
「不二……じっとしてて」
 そして慈郎は躊躇いなく舌を這わせ始めた。不二と跡部が繋がっているその部分に。
「ジロー、駄目、そんなトコ……」
「おいおい、悪趣味だなジロー。気持ちいいじゃねぇかよ」
「へーんだ、跡部の為にやってんじゃないよーだ」
 慈郎は不二に少しでも気持ち良くなって欲しくて舐め続ける。すると痛みで萎えていた不二自身が再び芯を持ち始めた。
「うゎ、不二のココ綺麗〜。やっぱ美人ってココも綺麗なんだな〜。美味そう☆」
「はぁ、はぁ……んぁん、ん」
 慈郎は夢中になって不二の蕩けそうなアイスキャンディを舐め回す。
「気持ちいい?」
「ぅ……くっ」
「周、応えてやれよ……スゲェ悦いんだろ」
 跡部が耳元で囁く。不二の呼吸の乱れが苦痛から快感へと変わり、内側の跡部を小刻みに締め付けた。
「いぃ…ぜ、周……ジローのも悦くしてやれよ」
 慈郎は立ち上がり、自分と不二のモノを擦り合わせるように不二の手に握らせた。
「不二……一緒にイ……コ」

 ──三人はほぼ同時に白い迸りを散らせた。


 窓の外は雪。。。

 目覚めると愛しい彼の顔。。。


「・・・景吾」
「気がついたか? 無茶させて悪かった」
「ううん」
 暖房のきいた静かなリビング。向かいのソファにすやすや眠る慈郎を一瞥してから不二はニッコリと微笑む。
「……嬉しかった。景吾に無茶させられるのって初めてだったし……何だか快感?」
 それに『最愛の恋人』だと言ってくれた。
「懲りて欲しかったんだがな、俺としては」
 抱き起こし戯れるようにキスを交わす。
「今日はしないんじゃなかったの?」
「キスは前戯じゃねーだろ」


 二人で窓の外を見つめる。。。

 白い雪。。。


「……んがぁ…不二……スキ」
 慈郎の大胆な寝言に跡部は苦笑しつつ不二の肩を抱く。
「雪を見てるとお前に会いたくなる気持ち……分かるぜ」
 跡部は不二のバスローブをゆっくり剥がしながら続ける。
「似ているからな……。雪とお前は」

 音も無く降り積もる雪。
 幼い頃から傍にいて、気づいたら心が不二への想いで一面覆われていた。
 静かに深く降り積もっていた最愛の恋人。

 慈郎もそうだったのだろう。ある日不二という雪が舞い降りてきて、目覚めた時には想いが積もりに積もっていて、持て余してしまったのかもしれない。

 不二を抱く時はいつもほんの少しの罪悪感と優越感を覚える。それは新雪を一番に踏みしめる時の気持ちに似ていると跡部は思う。

「似てるぜ……雪に埋もれるのと、周の肌に触れるのは」
「もう、今日はなしだって、さっき……」
「後戯がまだだったろ?」
 そうして跡部は不二の白い胸元に自分のものだという証を刻む。
「あ、あん……、ジロー起きちゃうよ?」
「周が声ガマンすりゃ済むんじゃねーの」
「……そんな、んっ」
 跡部の唇が不二の言葉を遮った。
「こうして塞いどくのも手だよな」
「……」


 静かに雪の舞う夜。幸せな恋人達とその傍らで幸せな夢を見る少年・・・。

「んがっ……不二……大好き……ぃ……」

 時折、寝言で仲間に加わりながら。幸せな三人の夜は更けていった。


 END


◇あとがき◇

 久しぶりの更新です。そしてお風呂場3P(^^)ι
 アンケートでお風呂場Hが好きな方もたくさんいらっしゃるようですし、何より私が雪見てたらUPしたくてたまらなくなっちゃったんですよー(笑)
 跡部は不二にはもちろん、ジローちゃんにも甘いんじゃないかなと思います。でも独占欲強いから次は譲らないだろうなあ。とか。
 エロは諸事情あってやや押さえ目……かな?
 幸せな雰囲気が皆さんにも伝われば嬉しいです(^^)

 アンケートのコメントを拝見していると妄想が広がります。
 今後も色んなシチュエーションで不二受に萌えましょうねん☆


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