おいしい恋のレシピ


「おはよう、英二」
「うわーん、不二ぃ〜待ってたよーん」
 朝、いつものように優雅な笑みをたたえ教室に入って来た不二を見つけるなり、菊丸英二は軽い動作で駆け寄ってぎゅっと抱きつき出迎えた。
 青春学園中等部3年6組でもはや日常になってしまった光景。
「ゎ、もう英二、どうしたの、今日は何の宿題?」
「う〜…古典。」
「しょうがないなあ。ホラ早く写しなよ」
 不二はくすくす笑いながら菊丸に自分のノートを手渡す。
「サンキュー不二っ☆ この埋め合わせは絶対するかんね〜♪」
「フフ、いいよ。期待してないから」
「あ〜不二ってば、ひっでー。するったらするのっ」
「はいはい」
 菊丸と不二は恋人同士。それを知る者はここには居ない。
 もっとも元々仲の良い二人がじゃれ合っていたところで気にする者も皆無であるが。
 3年6組の教室の、いつもの朝が過ぎて行く。


「──あ…いゃあ、んっ、もぅ英二ぃ」
「ふぃ〜…どーしたの不二……もうイキそう? よっ、ほいっ、と……んん」
「ふぁ……、っアン! んも〜英二の……う、埋め合わせって、結局コレぇ……はぁン!」
「不二……色っぽいにゃ〜たまんにゃ〜い」
 菊丸は不二の後ろに硬起した雄根を深々と埋め込んだまま嬉しそうに腰を揺すった。
 2時限目の授業中、菊丸が具合が悪いというので、隣の席の不二が保健室に付き添うことになった。しかし教室を出た二人が向かったのは屋上──体調不良は授業をサボってでも不二と二人きりになりたい菊丸の狂言であった。
「なにも、こんな寒空の下わざわざ屋上なんかで……」
「だって、不二に埋め合わせしたかったし」
「英二がヤリたかっただけでしょ」
 1ラウンド終了後。不二に拗ねられ、しゅ〜んとなってしまう菊丸。
「だってぇ。不二のコト大好きだし、いつでもイチャイチャしてたいんだもーん……不二ぃ、怒らないで?」
 不二に身体を擦り寄せスキンシップで精一杯のご機嫌取り。
「敵わないなあ、英二には。怒ってないよ。僕も英二のコト・・・好きだよ」
「不っ二ぃ〜☆」
「わっ、んもー、英二……重いよ、こらぁ、んっ」
 菊丸は再び不二にのしかかると、さっそくキスの雨を降らせる。しかし、さすがにここでの2ラウンドはキツイと思ったのか、不二が体勢を入れ替え柔らかく制止をかけた。
「ねえ、英二? もうすぐ誕生日だよね。何か欲しいものある?」
 菊丸の耳元に唇を近づけ、囁くことで興味を逸らしてやる。
「欲しいもの!?」
「うん」
「不二が欲しいっっ」
「僕はモノじゃないんだけど」
 恥ずかしげもなく即答した菊丸に不二は苦笑しつつもう一度訊く。
「僕以外で、ねっ?」
「俺が欲しいの不二だけだもんねっ。他はいらにゃ〜い」
「英二・・・気持ちは嬉しいんだけど。僕たちは恋人同士だし、こうしてエッチもしてるだろ。欲しいって言われてもコレ以上どうやってあげたらいいのか僕分からないよ?」
「じゃあさ、二人だけで誕生日パーティーしたい! 一緒にゴハン作って〜、食べて〜、ずぅっとイチャイチャして過ごしたいにゃあ」
「二人だけのパーティー、か。うん、楽しそうだね」
「やったー! 不二を独り占め〜♪」
 今だって充分独り占めしてるのに……。
 11月も終わりに近づいた晴れた日の午前──肌寒い風と穏やかな陽射しに包まれながら、結局2ラウンド目に突入する彼らであった。


 11月28日──菊丸英二の誕生日。
 普段から家族が不在がちな不二宅の広いキッチンを舞台に、「不二と二人だけで誕生日パーティーしたい!」という菊丸の願いは、今まさに叶えられようとしていた。
「不二、キュウリ取って〜」
「はい、英二」
「サーンキュ☆」
 チュッ。
 菊丸は不二からサラダの材料を受け取る度に不二を引き寄せキスを落とす。
 おでこ。まぶた。ほほ。くちびる──…。
「ああ、ほらよそ見してると指切っちゃうよ」
「平気、平気♪ 次はトマト取ってね〜ん」
「はいはい、それじゃ今度は僕からね……」
 ほっぺにチュッ。
「う〜ん、幸せだにゃ〜。新婚さんみたいだにゃ〜」
 菊丸は今にもトロけそうな眼差しで不二を見つめる。不二は菊丸の好きな赤色のシャツに秋らしいベージュのボトム、それに不二の姉・由美子の用意した白いフリルのエプロンを身に纏い海老フライを皿に並べている。
「不二、可愛いすぎるにゃ。新妻ってカンジ〜♪」
 朝ご飯を作るのが当番制の菊丸家とは違い、誰かの為に食事を作ってやることなどないであろう箱入の不二が自分の為に、自分だけの為に慣れない料理を……! そんな至福の中、菊丸は背後から不二を抱きしめた。
「もう我慢出来なーい。早く早く早く早くぅ〜」
「英二ってば、あんまり急かすと味付け間違えちゃうよ?」
 香辛料を手に振り返り、にっこり微笑む不二。こういうデインジャラスな所もたまらない。
「フフ、冗談だよ。後は盛りつけるだけだから。英二はお客さんだし向こうでゆっくりしてて」
「ヤダ。不二に構ってもらえないと寂しくて死んじゃうにゃあ」
 そう言って不二を抱きすくめたまま脇や下腹に手を這わせ擽り始める。
「えっ、英二!? やん、ダメだって、ばっ」
「ヘヘー、今すぐ食べたいにゃ。不二を食べたい……むにゅむにゅ」
「それならソファーに、」
「ここで、しよ?」
 菊丸は不二のエプロンの裾から右手を侵入させ股間に伸ばした。ゆっくりズボンのファスナーを下ろし下着越しにやわやわと刺激してやると、程なく膨らんだ不二自身から溢れ出る透明な媚液が下着に恥ずかしい染みを拡げていく。
「エージっ、下着が汚れちゃうから、ぁん」
「不二のカラダがやらしーんじゃん? でも気になるんだったら脱がせてアゲルねん」
「……!!」
 不二が抵抗する間もなく、菊丸は器用にズボンと下着を剥ぎ取ってしまった。不二の下半身を覆うのは白いフリルのエプロンのみ。腰からの蝶々結びに見え隠れする不二の白いお尻がふるふると震えているのが妙に可愛いらしく、菊丸の欲望を更に煽った。
「不二……安心して、このまま突っ込んだりしないからさ」
 不二を抱え上げテーブルに座らせる。
「それに、もうしばらく不二の可愛い姿見てたいしにゃ」
 菊丸はぴらっとエプロンを捲ると不二の濡れた中心を口に含んだ。
 ぴちゃぴちゃと音を立てながら焦らすように舐め回し、自分の唾液と入り混じった不二の滑り汁で後ろの秘部もほぐしてやる。
「やだぁ……エージぃ、も……イッちゃう、……っ」
 敏感な部分を2ヵ所同時に刺激されて、不二に快楽の大きな波が押し寄せる。不二は菊丸の口腔に悦楽の白粘液を吐き出した。
「ごっ、ごめんね英二、口の中に……!」
「うんにゃ、不二のエッチなミルク美味かったよん」
「恥ずかしいなあ……もう」
「ところでさぁ、せっかく台所だしテーブルだし材料揃ってるしぃ」
 菊丸はキュウリやニンジンを手に悪戯っぽく微笑む。
「せっかく俺の誕生日だしぃ、もっと不二を美味しくいっただいちゃおっかなー……なんて♪」
 セロリの葉っぱの方で不二の内股を擽りながら顔を近づける菊丸。
「や……やだ! そんなモノ入れたりしたら絶交だからねっ」
「えー、だって不二のココひくひくしてて物欲しそうじゃん。ココに野菜咥えてる可愛い不二が見たいにゃあ」
「英二の変態っ!」
「いーから、いーから」
 テーブルに押し倒し唇を塞ぐように重ねると、菊丸は持っていたニンジンで不二の後ろのすぼまりを探る。瞬間ビクリとしたが、不二はイヤイヤするように首を左右に振って菊丸の接吻けから逃れた。
「ふっ、不二!?」
「英二のバカぁ……!」
 不二は組み敷かれたまま、勃起した菊丸の分身に手を伸ばした。
「絶対イヤだから……英二がどんなに望んでも……僕の中に入ってもいいのは英二だけなんだからぁ」
 潤んだ瞳で菊丸を見つめながら、ズボンの上から菊丸自身を弱々しく刺激する。
「僕が欲しいのは英二だけだもん……英二しかいらないから、だから……」
 それは奇しくも数日前に菊丸が不二に望んだのと同じ言葉で──…。
「ごめんっ、不二! 俺ちょっと悪フザケし過ぎちゃったかも……不二があんまり可愛いから」
「・・・うん。英二だってカワイイよ。いつもそれで流されちゃってるけど」
 英二しかいらない。──それは過激なプレイを止めさせる為の不二の狂言だったのかもしれない。それでも……。
「不二……」
 菊丸は正面から不二を抱きしめた。
「不二、もう不二のイヤがることしない。だから、もう一回言う……不二が欲しいっ、俺のモノになって!!」
「あのね・・・英二。だから言ってるじゃない。僕はもうとっくにキミのモノだって」
「俺のモノ・・・」
「そう、今までも」
「不二が・・・」
「これからも」
「俺の・・・」
「ずっと」
「ずっと」
「一緒だよ」


 食卓に並んだ色とりどりの手作り料理。お揃いの食器に盛っていく楽しみ。
 あの後、若い彼らは盛り上がり、テーブルの上でじゃれ合いながら互いを味わうように抱き合った。
 せっかく作った料理はすっかり冷めてしまったけれど。二人の恋はいつでも出来立ての美味しい料理のまま。

「ねえ、英二。食べるかキスするかどっちかにしない?」
「だっておいしいんだもーん」

 菊丸と不二にとって忘れられない極上の誕生日となった。


 END


◇あとがき◇

 ハッピーバースデー菊ちゃん……のつもり(^^)
 なぜかウチにはなかった王道・36・ドリームペア菊不二でーす。
 怒涛の甘え攻×清純派オトナ受★……を目指したかったのに「なんだよコレわっ」ですね(汗)
 『裸エプロン』や『食物セックス』は改めてじっくり書きたい萌ネタのひとつです。
 個人的には子供の残酷さを持つ黒菊攻も好きなんで、その辺りで(^^)ι
 甘々も大好きな悠人でした〜☆(逃ょぅ)


オトナの書庫へ戻る

- ナノ -