…body language?


 慣用句とは───2つ以上の語が結合し、独特の意味をあらわすもの。『手に余る』『頭を抱える』など。意味は……


「あることをするのに自分の力ではどうにもならない、と」
「いや、不二先輩……、だから」
「解決策が見つからず困り果てている、か……ふふっ、越前にも苦手なものってあったんだね」
「・・・日本語の奥が深すぎるんス」
 先日の国語のテストは慣用句。しかし、数カ月前まで海外で生活していた越前にとって、その範囲は慣用とは言い難く、結果は散々──大量の宿題と追試という文字通り『手に余る』『頭を抱える』オプションまで付いてきた。
「笑い事じゃないっスよ。明日の追試で合格点取れなかったら、補習で今週末潰されるんスからね」
「え? だって今週末はデートの約束が……」
「だから、手伝ってくれるよね不二先輩、トーゼン」
 ニヤリ。
 部活帰りに寄った不二の部屋。二人きりの勉強会。

 週末のデートよりも楽しいものになったりしてね……。


「それじゃあ始めようか」
 そう言って不二はテスト範囲でもある宿題のプリントをテーブルの上に広げた。

『次の慣用句はすべて身体の部位を含んだものである。意味と照らし合わせて◯に当てはまる漢字一文字を答えなさい』

「うーん……今回の追試の範囲は身体のパーツに関するものだけみたいだね、ってもかなりの数あるけど」
「不二先輩、俺さ、効率良さそうな勉強法思いついたんだけど、試してみない?」
「うん?」
 越前の考えた勉強法──それは、不二が問題を読み上げ、
「俺が正解したら……そこんトコにキスしてよ!」
「キス、って、……するの、僕が越前に?」
「そう。ダメ?」
 いつもの自信過剰な眼差しではなく、捨てられそうな子犬がすがるような瞳で見つめる年下の恋人。
 少ないけれど一応セックスだってしてる仲なのにね──。その可愛いらしい発想に不二は思わず顔が綻んでしまう。
「あはは、いいよ。じゃあ、不正解だったら?」
「そこんトコ殴っていいっスよ」
「う……、それはさすがに気が引けるなあ」
「じゃあさ、俺にキスさせてよっ。そしたら絶対忘れないだろうからさ」
「うーん、ま、カワイイ後輩の補習がかかってるもんね」
「恋人との休日の為……でしょ」
 いつもの輝きを取り戻した越前の瞳が自信満々にウィンクを送り出す。
「なんだか。キミの口車に乗せられちゃったみたいだなあ」
「何スか、それ?」
「言葉巧みに相手に騙されちゃった、ってこと」
「へぇー……口、ぐるま、ね……」
「ぅ、……ん」
 越前は忘れないように繰り返してから、さっそく不二の形の好い唇に接吻けた。
「……っ、はぁ、そうだ、わざと不正解はなしだからね」
「どーせ見破るっしょ? デート前に先輩の機嫌損ねるよーなマネしないっスよ」
「賢明だね」
 甘く楽しい勉強会の幕開けであった。


 問題@は『◯に汗する』、一生懸命まじめにこつこつと働くことの形容。

「簡単だね。答えは“額”」
「はいはい。よく出来ました」
 おでこにチュッ。
「問題Aは“耳”を揃える、だよね」
「正解。順調だね」
 耳元で囁きながら唇を押し当てる。
「く、擽った、ぃっス」


 問題Bは『◯に入れても痛くない』。

「いきなりヤラシー問題っスね」
「……越前。多分。それ。不正解だから」
「ナンデ?」
 意味は、自分が愛する小さなものがかわいくてたまらないことの形容。
「小さな、ってのが引っ掛かるけど……要するに俺のジュニアを不二先輩のアソコに入れても痛く・・・」
「!! 違うからっ、正解は“目”だから……めっ!」
「……っス」
 不正解なので越前からキスを仕掛ける。
「不二先輩、ちゃんと目開けてよ」
 不意の呼びかけに閉じていた瞼をゆっくり開放すると、次の瞬間、越前の舌が不二の眼球を捕らえた。
 ぴちゃ……ちゅっ……。言いようのない異物感に閉じようとする不二の目を越前は無理矢理こじ開け、吸い付き舌を這わせる。
「こらぁ……越前、そんなトコ舐めちゃ、ぁ、あ、」
「なかなか刺激的でいいっしょ?」
 越前の愛撫を受けながら、そこも性感帯の一つであるのだと不二は知った。粘膜だからかなあ、などとぼんやり考えつつ。
「セックスするより・・・かも」
「んー……何か言った?」
「んー……キミは目に入れても痛くないな、ってね」
「へへっ、今の言葉、忘れられそうにないっス」


 問題Cは『◯を巻く』、非常に驚き感心するさま。

「うーん、“尾”かなぁ?」
「ブブー、人間に尻尾はないだろ」
「そっか。じゃ正解は?」
「正解は、……。」
 不二はふと考えた。この問題の正解は“舌”。解答を口にしてしまえば越前は迷いなくディープキスを仕掛けてくるだろう。それ自体は決して嫌ではないのだが。
「不二先輩……!?」
「あ、ああ、正解は“舌”だよ」
「した……tongue?」
 不二が内心の動揺を悟られないよういつもの笑顔で応えると、越前もニッと笑って、
「そんじゃ遠慮なく」
 ……舌を絡めてきた。
 越前の可愛いらしい発想は意外な危険を孕んでいた。中一の国語程度ではヤバイ部位は出てこないだろうと高を括っていた。のだが。
「ほら……先輩、次の問題いきますよ」
 越前は知ってか知らずか──。しかしゴーサインを出したのは不二。
 これ以上おかしな部位が出てきたら……?
「まあ、中一の国語だし……」


 問題Dは『◯をなでおろす』。

 果たして不二の危惧は現実となろうとしていた。
「意味は、危険や心配事がなくなって安心することだよ。簡単だよ、ねっっ」
「・・・分かんないっス。“肩”とかっスか?」
 ブブー……不二にとって胸をなでおろす状況とは程遠く。
「成程ね。正解は“胸”ねえ」
「え、越前っ、撫で回さなくていいから、、ぁン」
 チュッ。シャツをはだけ、ピンクの突起を掌で刺激しながらもう片方を優しく吸う。
「あ、はぁ……ん」
「胸をなでおろす、ね。不二先輩のイイ声と一緒にしっかり記憶シマシタ」
「んもー・・・次の問題にいくよっ」


 問題Eは『◯が青い』、まだまだ一人前になっていないことのたとえ。

「あ、残念、これ解るっス」
「……何、その残念って」
 しかし不二にとって越前がこの問題の正解を知っているとは実に喜ばしい。いかに恋人とはいえ、ソコを曝け出し揚句キスされるなんて……想像しただけで赤面ものである。
「バカ親父の口癖なんだよね。ケツが青いってさ」
 越前。それじゃ。不正解……。脱力。
「漢字じゃないから? ケツって漢字でどう書くの?」
「“穴”か“尻”だけど。この慣用句の場合は正しくは“尻”だね」
「ふーん、“シリ”なんだ」
 ──で、やはりこうなる。
 不二の下肢を纏うものは全て取り除かれ、四つん這いの姿勢で越前の眼前に尻を突き出すように無防備に曝していた。


「イイ眺め♪ 先輩のお尻は青くないね。真っ白ですごくキレイ」
「あまりジロジロ見ないでってば……っ」
「いーじゃん。ねえ“シリ”って漢字だとどんな字?」
「部首の“しかばね”に……漢数字の“九”……って、越前っ!? 何してるのっ」
 越前は唾液を含ませた舌を筆代わりに、不二のむき玉子のような白い円丘に“尻”と繰り返し滑らせた。見られているだけでも恥ずかしさでおかしくなりそうなのに。
「ん、ん……越前、本来の目的ぃ、いゃ、ぁん」
「忘れてないっスよ。次の問題Fはこーゆー・・・コトっしょ?」
 ずぷ……! 越前は不二の後ろの粘膜に指を潜り込ませた。
「っ……!!」
「後ろ“指”をさされる」
 越前……かなり下品。
「正解だよね。じゃ、こっちの指にキスして」
 上の口にも指を突っ込まれ掻き回される。
「ねえ先輩、もう勉強これぐらいにして俺と」
「んぐ……っ、ぅふ、っん……ぷはぁ、越前……っ早く、次の問題っ」
 どうやらまだやるらしい。


 問題Gは『◯が黒い』、いつでも心の中で悪事を考えているような人のこと。

「わー。越前にぴったりの言葉だね」
「先輩だって、試合中とか腹黒いじゃん」
「はい、正解! ほらっ、さっさとお腹出して」
 形勢逆転。さっきの仕返しとばかりに不二は越前のシャツのボタンを外し素早く取り去る。
「細いなー」
「先輩こそ。身長の割に細過ぎっスよ」
 越前もはだけた不二のシャツをするりと剥がす。
「でも綺麗に筋肉がついてきたね。キミの成長をこうして直に確かめられるのは僕の特権だよね」
 そうして不二は越前の臍の下辺りに躊躇うことなく唇を寄せる。
「不二先輩・・・やっぱ俺もう限界っス」
 最愛の恋人が全裸で自分の下腹部に顔を埋めている。
「ん、そう? 次の問題は?」
「センパ〜イ」
「問題Hの答えは“股”にかける、だよ。正解じゃないけど特別に僕からキスしてあげるね」
 上目遣いに手で探って越前のズボンの股間部を開いた。
「ココの成長も凄いけどね・・・ん、っ」
 下腹に張りつきそうな程反り返った越前の若々しい硬茎の先端に柔らかく唇を摩りつけ、不二はチュッ、チュッと啄むようにキスをする。口づけは徐々に深くなり、やがて越前自身の先端は温かく濡れた不二の咽喉粘膜に包まれた。同時に竿にはねっとりと蠢く舌が絡み付き、根元は唇と繊細な指先できゅうきゅうと刺激される。
「ふ、不二先輩……っ、そんなにされたら、俺……もぅ、うっ」
「うん……僕も限界。越前、これでラストにしよ……」


 問題Iは──『◯にしみる』。意味は、あることが、しみじみと深く感じるさま。

「越前……答えは?」
「“身”にしみる……っしょ?」
「正解……あ、、やっ」
 その台詞を聞き終わらないうちに、越前の猛りきった雄が不二の最も深い粘膜の狭間に侵入してきた。
「大丈夫・・・今は何も考えられないけど、今日の不二先輩との勉強はちゃー…んと“身”についてますから・・・」
「バカ……。嘘。イイコだね……越前」
 だから今は一番深いところで感じよう──…。


 慣用句とは二つ以上の語が結合し、独特の意味をあらわすもの。

 二人の結合は二人にとって特別な意味があって、その特別が積み重なって、いずれ慣用になればいい──…そんなお話。


 END


◇あとがき◇

 わっしょーいリョ不二祭りっ♪
 この頃、頭の中身がIT革命(謎)で…理系に疲れた私は文系リョ不二を目指してみるのでした。が、仕上がってみれば…そこはかとなく文系じゃないし、なんかエロいし(^^)ι
このお話は大好きなもち子(望月風音)さんに捧げます☆
 お勉強がんばりーや、応援しちょるけーね!


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