太陽に火をつけて


「うへー、やっぱ暑いっスねぇ」
 部活のない休日の午前。
「今日は真夏日になるって言ってたからね」
「……ノド渇いたっス」
 じりじりと照りつける太陽の下。
「しっかり、越前、桃。もうすぐだよ。ほらあそこ」
「不二先輩って、見かけによらず」
「……タフっスよね」
 越前と桃城は、その『見かけによらず』と表現される、少女のような可憐な容姿と華奢な身体で、テニスバッグを軽々抱え颯爽と歩く不二の後ろに続いた。
 三人の目的地は山吹中近くのテニスコートのある公園。穴場らしく、朝行けば殆ど貸切り状態とのこと。
 実は、不二が張り切っているのはテニスが思う存分出来るからばかりではない。
 これは内緒なのだが……。
 恋人に会える……。
「……千石くん」
 不二が誰にも聞こえないように呟いた、その時。
「おーい、こっちこっち!」
 明るいオレンジ色の髪を揺らしながら、本日の合同自主練の発案者であり山吹中のエース・千石清純が駆けて来る。2年の室町、1年の壇も一緒だ。そして、
「不っ二くぅ〜ん、会いたかったよ♪」
 千石は言うより先に不二を抱き締めた。
「……ぇ、えーと、千石くん!?」
 秘密の恋人の大胆な抱擁に、戸惑い固まってしまう不二。人通りが少ないとはいえ、ここは往来。後輩達の手前もある。現にその四人の頭の上には『?』と『!』が無数に浮んでしまっている。
「ウッソダーン、お二人がそんな関係だったなんて、ボク知らなかったですっ」
「信じられねぇな、信じられねぇよ」
「千石さん……憧れてたのに」
「不二先輩……狙ってたのに」
 越前の問題発言はこの際流すとして……。不二は千石の腕の中で少し困ったように抱き締められたままだ。
「やだなー? ヤキモチー♪ もちろんオモシロ君にもルーキー君にも会いたかったよーん」
 千石は素早くウィンクを贈ると不二を解放してやり、今度は越前と桃城の首の後ろに手を回し抱き寄せた。
「今日は二人にもたっぷりカリを返しちゃうぞ〜ぉ〜」
 と、更に力を込め、大袈裟に頬を擦り寄せようとする。
「うわっ、ナニ、この人!?」
「く、苦し、ぃ〜」
 その場は和やかな笑い声に包まれた。


「千石くん。ここに居たんだね?」
 テニスコートから少し離れた所にある木陰のベンチ。背もたれのない木目調の長方形に、仰向けに寝そべっている千石を見つけ、植え込みの間から不二が現れる。炎天下での試合形式を2ラウンド終え、さすがの千石も疲れたのだろう、不二が近づいても起き上がれないでいた。
「あの二人相手に連チャンだとねー。でも、カリは返せたな」
「うん。桃すごく悔しがってた。越前もね。負けん気に火をつけちゃったみたい」
 不二は手持ちのスポーツタオルでパタパタと千石を扇いでやりながら、くすくす笑う。
「他の皆は?」
「今は1年ペア対2年ペアでダブルスしてるよ。室町君も壇くんもスジがいいね」
「天才・不二クンのお墨付き? アイツら喜ぶよ、連れて来てやって良かった。でも、ごめんね、」
「どうして?」
「せっかくのデートなのに子連れみたいでさ」
「ううん。弟が沢山出来たみたいで楽しいよ。それに……僕らはもうすぐ引退だし、有望な後輩を育てたいのは同じだから」
 いい先輩だよね。部長でもないのにね。と、見つめ合って破顔する。
「ところでさ、僕あぶれちゃったから千石くんにお相手して貰いたいんだけど、まだ回復しない?」
「うーん。取り敢えず起きるの手伝って?」
 仰向けの千石が両腕を上に伸ばす。不二は仕方ないなあと微笑って、千石の投げ出された足元に立つと、手首を握って思い切り引っ張り上げてやった。
「ありがと♪ そんでもって、不二くんがキスしてくれたらソッコーで回復するかも?」
「え?」
 ベンチに浅く腰掛けた状態の千石が軽く抱き寄せると、不意を突かれた不二は自然腰を下してしまう。千石の上に。両足を広げて。跨がって。
「うわぉ、ラッキー☆ コレって対面座位ってヤツ? オレ超コーフン♪」
「……やっ、また、すぐ……そ、ゆ、こと……んっ」
 息のかかる距離に相手の顔。両腕は互いの背中に回されていて手が使えない。千石は戸惑う不二に顔だけで近づくと唇を寄せる。チュッ。わざと音が鳴るように吸い付いた。
「ここ……外だよ?」
「わかってるよーん」
 恥ずかしがってはいるものの抵抗はしていない模様。
「んっ、誰かに見られたら、ぁん」
 チュッ。チュッ。千石は飽きる事なく繰り返す。小鳥のキスのように軽く啄んでみたり、時には押しつけるように唇を擦り合わせてみたり。
「まだ恥ずかしい?」
「う……ぅうん、もっとぉ」
 半開きの濡れた唇でおねだり。
「カーワイイんだからぁ、不二くんは、もーぅー♪」
 今度は深いキス。背中に回された互いの腕……、千石が力を込めると、不二のそれから力が抜けた。
「ねっ、不二くん。晴れた空の下でのキスって気持ちいーね」
「……うん」
「オレ達ってさ、男だしライバル校だし中学テニス界じゃ有名人同士だしで……気持ちだけじゃどうにもならない時だってあるよね」
 不二は先刻の往来での抱擁シーンを思い出す。千石が不二を気遣って機転を利かせてくれた事も。
「無理にカミングアウトする必要はないと思うけど、もっと堂々としててもいいんじゃないかな? だってオレは不二くん大好き!」
「僕だって……! 人前でされるのは恥ずかしいけど、本当はあの時だって、千石くんに抱き締められて、すごく嬉しかったんだよ」
「あれ〜ぇ? まーた不二くんってば、そんなメラ可愛いコト言うんだ〜? オレ調子にのっちゃうかもよ〜」
 千石は不二に軽くキスすると、胸元に顔を埋める。
「手は使ってあげられないから、お口だけで勘弁ね」
 そう言って、不二の薄いメッシュ生地のウェア越しに唇を這わせ始めた。
「ぁ……ゃ……だ、めぇ……千石くぅ……ん、」
 千石がもたらす鈍い刺激にも敏感に反応し、身を捩らせる不二の声はうわずっている。
「でも”イヤ”じゃないでしょ?」
 千石は不二の左胸に柔らかい尖りを探り当てると、器用な舌先でつんつん弾く。みるみるしこった可愛いそれを甘噛みしてやると、せつない喘ぎと共に不二の腰がぴくんと跳ねた。
「ひぁ……っ! ん、んゃ……なぃ、イヤじゃないけど……っ、恥ずかし……ぃょ」
「トーゼン。だって不二くんとオレは今”恥ずかしいコト”してるんだもーん」
 あっけらかんと言ってのける千石と照りつける夏の日差しに、不二は軽い目眩と脱力感を覚えてしまう。身体の内側も外側も暑くて熱くて……このまま蕩けてしまいそうな、蒸発してしまいそうな。
「……それも、いいかも」
 不二のテニスウェアの左胸辺りは千石の唾液でべちょべちょになってしまった。薄いメッシュは水気を通し、いつもの愛撫とは違う焦れったい感覚に不二は身悶えする。
「そんじゃ、今度はこっちね」
「あ、んっ」
 千石は不二の右胸にしゃぶりつき、同様にじわじわと快感を施していく。先程までの行為で疼いたままの左胸の突起は放置されてしまった。しかし、そよ吹く風が湿ったメッシュをすり抜け、ひんやりとした新たな刺激を与え始める。
「あ……ふっ、ぅん……ぁはぁ、何か……変っ……な感じ……ぃぃ」
 遠慮がちに喘ぎながらも本気で感じている不二に、千石は満足げな笑みを零すと行為を中断し上目使いに反応を窺った。
「あ……、」
 突然の喪失感に不二はしばし困惑してしまっている。
「こんなに感じちゃって、ホント可愛いよね、不二くんは」
「……千石くんだから。千石くんだけ……だから」
 乱れた息を必死で整え潤んだ瞳で不二が呟いた。
「もっと、する?」
「うん……もっと、」
「不二くん、大好きだよ。じゃあ次はね、自分でウェア捲ってみて? 直接舐めてあげる」
 千石の両手が使えないのは不二をがっちり支えている為。躊躇はしたものの不二はゆっくりと捲り上げていく。
「もう……千石くんに、だけだからね。こんな恥ずかしいコトするの……」
 木々に囲まれているとはいえ、ここは公園のベンチ。いつ、誰に見られてしまうとも知れない。
 きゅっと目を瞑って自らの肌を恋人の眼前に晒していく。元より色素の薄い不二の肌は真昼の太陽の下では透けるように白く、左右の尖りも綺麗なベビーピンクだ。
「何回見ても絶品だよね、不二くんのオッパイ☆」
「、やっ、違う……も」
 含羞む不二の上体が揺れる。結果、千石の顔面に右胸を押しつける形になってしまった。千石はすかさず薄桃色の小さな果実のような乳首を口に含み、ちゅっと吹いたて、舌先でつついて、転がして、唾液を纏わりつかせ丹念に撫で回していく。
 服の上からの愛撫では味わえなかった繊細でなまめかしく踊る千石の温かい舌に、不二は身も心も翻弄され続ける。
「……ぅく、ふぁ……ん、せんごっ……くぅん……そっちばっか、やぁ、んんぅ……こっちもぉ……してぇ……」
 不二は限界まで捲っていたウェアの裾を自らの口に運んでくわえると、両腕を千石の首の後ろに回してしっかり掴まった。
「エッチなんだからー、不二くんはー、もー、愛してるっ」
 千石は左手一本で不二の背中を支えると、空いた右手の指先で左胸の果実を優しく摘んで、ころころ転がしてやる。
「っんんー……ん、、んー……」
 左右の敏感な頂に異なる快感を与えられ、不二はまるで電気ショックを受けたかのように背を反らせた。


「うっわー……不二先輩、エロ過ぎ」
「こりゃ、たまんねぇなあ。戻って来ないと思ったら、二人してあーんなイイコト」
「わー、いけませんですっ。そんなに近づいたらバレるですぅ」
「バレバレだろ。今さっき千石さんこっち見てたぜ」
 不二の左斜め後方の茂みに四人の人影。言わずと知れた越前、桃城、壇、室町だ。室町の指摘通り、千石は出歯亀御一行様に気づいてはいる。
「ま、いいよね。せっかく不二くん感じてるんだし。これも後輩サービス☆」
 そして不二はその事に気づいておらず、惜しげもなく痴態を晒してしまっていた。四人は股間を押さえ釘付けだ。
「うーん……でも、やっぱり、もったいないっか。こーんなイイ顔、イイ声、イイ身体♪ ……を他の男にまで見せてやるのって」
 千石は不二の口からくわえていたウェアを外させると、伸ばして元通り上体を覆ってやる。まだ幾分物欲しそうな不二の唇の端から零れた涎を、千石の舌が丁寧に拭い深く接吻けた。


「うわぁ〜ベロチューしてるですぅ」
「何か……あの場所だけ気温と湿度異常に高そうっスね」


 不二の興奮を鎮めるように、千石は優しく緩やかに舌を絡め合わせる。唇を離すと、少し落ち着きを取り戻した不二が恥ずかしそうに微笑んで千石に抱き着いた。
「千石くん、すっごく気持ちよかった。ここが外だって忘れそうなくらい」
「うん、不二くんも激イロっぽかった。また後で続きしてあげるね。そろそろ戻らないと。立てそう?……って無理だよねぇ」
「ごめんね……。あのさ……。でも……。千石くんも……。さっきから。ずっと。当たってるんだけど……?」
「あっははは、困ったヤツだね〜。ドンマイ、じっとしてれば何とかなるっしょ」
「だって窮屈そうだよ?」
「そりゃ、ねぇ、うん」
「僕……してあげようか?」
「へっ!?」
 不二の大胆発言にどきんとする千石。
「してくれるの? 口でっ?」
「……うん。……自信はないけど」
 恋人関係になってから日は浅いが、セックスは何度となくこなしている。が。不二からは未だして貰った事はない。嬉しい。が。
「誰かに見られちゃうかもよ?」
「それは困るけど。頑張るから早くイッてね?」
 脚を広げてベンチの端に腰掛けている千石の両膝の間に、不二はぺたんと可愛いらしく座り込む。千石は股間からすっかり勃ち上がった熱い塊を取り出すと、不二に「あまり無理しないでいいからね」と優しく預けた。


「で、でけぇー! 千石さんのアレ……俺のよりふた回りはでけぇよ」
「桃先輩がちっさいんじゃないっスか?」
「あんだと、越前! 俺のだってなぁ、ど――ん!……と」
「いや、実際でかいんだぜ。成程あれが噂の、千石さんの大きな武器──もう一つの『虎砲』か・・・!!」
「室町先輩……。鼻血出てるです〜ぅ」


 一方、不二も何度か下の口でその巨大な肉砲を味わっているとはいえ、目の前に突き出された千石自身に一瞬怯んでしまう。しかし、すぐに両手を添えると愛しいそれに唇を寄せる。くわえ込む事が出来ない分、不二は先端を吸ったり、舐め回してみたり、拙いけれど精一杯の愛撫を続けた。
「ふ、じく……んっ、すごい、気持ちい……ぃよ」
 不二のサラサラの栗色の髪を撫でながら千石が囁く。不二は淫猥な水音を響かせ一心不乱に奉仕している。ただ、やはり決定的な刺激は与えられず、千石にとっては蛇の生殺し状態には違いなかった。
「ありがと……不二くん。もういいよ……?」
「……ふぁ?」
 千石は不二の額にキスを落として行為を中断させた。そして、唾液と千石から溢れ出た先走りの液でぐちょぐちょになった不二の口周りも拭ってやる。
「……ごめんね。慣れてなくて……」
「不二くん慣れてたらショックだよ。気持ちよかったよ、ホント、またしてね」
「でも、このままじゃ……」
「うん、じゃ……手で抜くからさ、手伝ってくれる?」
「あ、……あのね、千石くん、やっぱり・・・しよ?」
「不二くん?」
「こっちでならっ、千石くんの……受け入れてあげられるし。その……誰かに見られるとか見せたいとかじゃなくて、ただ、僕は、明るい太陽の下で千石くんと恥ずかしいコト……したい」
 千石は不二の提案に少し驚いたが、すぐに柔和な笑みを向けると、「うん、しよう!」
 枕にしていた長袖パーカーを不二の腰に巻いて、ギャラリーへのささやかなブラインド。それから幸せそうにハーフパンツを下着ごと脱がせる。
「あ、だめ……!」
 下着はぐっしょりと湿っていた。
「感じてくれてた証拠じゃん? 大丈夫。今日は天気良いから、すぐ乾くって♪」
「・・・う、ん、」
 脱がせたパンツをベンチに置いて干し、不二を抱き寄せ先程の対面椅座位の姿勢をとらせる。


「ダダダダーン! 大変ですっ! あの二人はヤルですよ、ハイ!」
「不二先輩のあの細い腰に虎砲が……壊れるっス!? って、桃先輩……そんなモノ出してナニ発情してるんスかっ!!」
「ネタは新鮮な内に〜っと……ぉーしっ越前、この際お前でもいいっ、俺のダンクぶち込んでやるぜ!!」
「ちょっ、桃先輩!? やだよ……っ俺、攻キャラなんスからっっ」
「……っるせぇ、世間じゃ千不二より桃リョのんがメジャーなんだよぉっ!!」
「うわ〜あι 訳分かんないですぅ〜ι ああっ……室町先輩が鼻血の出し過ぎで倒れてるですぅ〜〜」
 四人はそれぞれの理由で出歯亀どころではなくなっていた。
 チャンチャン♪
 ───な訳にもいかないので。


「……ホントに慣らさなくて平気?」
「さっき千石くんのいっぱい濡らしといたから平気。それに、早く千石くんの……大きいの……欲しい」
「不二くん……。オレも早く不二くんと繋がりたい……いくよ」
「あ、ぅ……くぅ、んん!」
 不二の後ろの慎ましげな火口に千石の灼熱の虎砲が呑み込まれていく。

「「・・・アツイ・・・」」

 真夏の太陽だけが愛し合う二人をずっと見ていた。


 END


◇あとがき◇

 念願の千不二です! しかもオンリーCP☆
 えー…このお話は以前、元相方に描いてもらった千不二イラが激ラブリィだったもんで、お礼にと、そのイメージで書いたものです♪
 キヨはアソコも虎砲なんだよねっ☆


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