∴ 7 心臓がドキドキと高鳴って煩い。触るのか触らないのか。触ってくれるのか触ってくれないのか…そんな期待と不安と、淫猥な気持ちが心臓から体中へと流れていき、桜介の大事な部分を徐々に熱くさせているみたいだ。 「ん…」 「凄いすべすべだからやりやすいよ。指がするする進む」 「そ、ですか…」 「このマッサージオイルで更にすべすべになるね」 「うん…ん」 じゃあ今度は内側だよ。そう言いながらオイルを足すと、次は内腿のラインへと移った。 『内側…』 筋肉で張っている外側とは違い、柔らかい内側の肉を押し上げるように進んでいく。 ゆっくりと、丁寧に上がり、太腿の一番柔らかい所へと行くと更にぐっと親指に力が入り、際どい部分まで進み… 『え!?』 そしてとうとう、ほんの微かなのだが桜介のツルツルとした双球に触れたのだ。 『うそ!?今…偶然?』 爪の先なのだろうか、少し硬い皮膚が掠める程度にさっと撫でた。 それは本当に一瞬の事で、意識していなければ気にならない程度なのだが、今の桜介は意識せず過ごすことなんて出来ない。 『何だろう。わざと、じゃない…よね?』 あまり気にしないようにと言い聞かせながらも、考えてしまう。もしアキラが桜介に触れるとしたら最初から触れているはず。今まで普通にマッサージをしていたのだから今のは多分わざとではないと思う。 『た、多分、気の所為…』 顔が赤くなり、心臓が更にドキドキしてきた。しかも今ので完全に勃起した。もし仰向けになってくれなんて言われたらすぐにバレてしまうだろう。 『気の所為だから、気にしない気にしない…』 昨夜見たお笑い番組を思い出したり、嗣彦のつまらない惚気話や自慢話を思い出し、どうにか熱くなった体を鎮めようと努める。特に嗣彦のアレ買っただのあの俳優に会っただのどうでもいい自慢話は割と効く。変に興奮してしまっている体が萎えるのが分かった。嗣彦には悪いが、桜介にとって彼の自慢話はかなり退屈なものなのだ。 『先輩、すみません』 なんて心の中で謝りつつも、体は落ち着いている。マッサージに集中出来ると安堵したが、アキラの指が再び双球に触れた。 『うわ!!』 今度はさっきよりもしっかりと。指の腹で下から上へと撫で付ける動きだ。 『偶然じゃない…わざとだ』 オイルで滑りが良くなっている指が、ツルリと撫でてすぐに引っ込み下がっていく。そしてまた登っていき、イタズラに撫でる。 『わざと…僕の触って…え、どうしよう、どういう意味なの…』 嗣彦を頭の中に登場させて高ぶりをしずめたというのに、火がついたように体は再び煮えてしまう。じわりじわりとお腹の下の方を重たくさせていき、疼痛に似た官能を生む。 「明日の朝ごはんはカフェでとろうか。あ、それとも何か作る?大したのは作れないんだけどね」 「ぁ、な、何でもいいです…」 「パンケーキ作ろっか?一応食材も買ってあるんだよね。使わなきゃ勿体ないし」 「…そ、ですね。そうします…ん」 「甘いパンケーキと食事系パンケーキどっちがいい?因みにフルーツは桃とマンゴーとベリー系だったかな。後で確認しておくね。あ、ホイップクリームもあったよ。もうクリーム状になっているやつ。あとアイスクリームもあったかな。食事系にするとしたら、ベーコンエッグとか、サラダとか?俺はそっちにしようかな」 「じゃ、僕も、それで…」 「了解。桜も手伝ってね?」 「…っ、はい」 何でこんな普通の会話をしているのだろうか。アキラは爽やかに朝食の献立を話しながらも、親指で桜介の双球やら会陰やら感じる所をくるくると撫でているのだ。 膝裏から親指でぐぐぐっと押し上げていった最後に、オマケというようにそういう所に触れて去っていく。 その度に桜介は腰をビクつかせているのに、アキラは気付いていないというように無視だ。 もっとちゃんと触ってほしくて自然と内腿に力が入るし、会陰に触れられた時なんて、絶対後孔をひくつかせてしまったはず。 流石にそこまでは見えないだろうけど、アキラだったら桜介の体がどうなっているかなんて解っているはずだ。 それなのに、彼が発する空気は健全で、まるで自分だけがおかしいみたい。 『も、何…』 |