インターホンを押すと、息を潜めてドアスコープを覗く気配。そして俺の姿を確認すると慌ててキーチェーンを外しドアを開ける。彼女の一連の動作をひとつひとつ確認する冷静さはあった。けれど早く顔が見たくて、思わずドアノブに手をかけそうになるのを堪えていた。 「大介!どうしたの?!」 「あ、えと…ごめん急に。迷惑…だよね」 連絡もせずに独り暮らしの彼女の部屋に押しかけるなんて非常識だと思う。だけどどうしても会いたかったんだ。試合で思うような動きができなくてもどかしい気持ちを抱えたまま会うのは、なんとなく逃げているような気もしたけど。何ていうか…変な言い方だけど、きみを充電したかったんだ。 「迷惑なわけないじゃない」 会いに来てくれて嬉しい、と微笑む彼女を前に、俺は堪らなくなってぎゅっと抱きしめた。 (好きだ…好きだ、好きだ…っ!) 強く思っていても、いつも口に出せないことが情けない。それでもきみは俺の気持ちを汲み取ってくれるから、つい甘えてしまうんだ。 「疲れた?ご飯一緒に食べよっか」 「うん…もう少し、このまま」 腹は減ってるし疲れてもいる。だけど離れたくなくて、離したくなくて、抱きしめる力を少しだけ強めた。 「大介、可愛い」 まるで子どもみたいに頭を撫でられているのに、彼女の手の優しいかんじだとか、抱きしめてる体の柔らかさに胸がいっぱいになってしまった。 「俺、もっとがんばるから」 満たされる だからずっと俺の傍にいてほしいんだ、肝心なところは言えなかったけど。きみが笑ってくれたから、俺はまた好きだよって抱きしめた。 (拍手log) END :101221 戻る |