最近、持田さんは何かと苗字さんに積極的に話しかけたりちょっかいをかけたり、何ていうか仲が良い。もしかしたら付き合ってるんじゃないかなんて噂している人たちもいる。 苗字さんは誰にでも笑顔で優しくてわかりにくいけど、持田さんは好き嫌いがはっきりしてるし嫌いな人はとことん嫌うわかりやすい人だ。若干何考えてるかわかんないところはあるけど、おそらく持田さんは苗字さんのことが― 「好きなんですか」 「あ?居たの?三雲」 「居ました」 上機嫌で着替える持田さんに何の気なしに話しかけると、予想はしていたけどやはり俺には気づいていなかったようだ。俺別に存在感薄いわけじゃないのに…何でだ。 「で、何だって?」 「苗字さんのこと好きなんすか?結構噂立ってるんで」 「好きじゃねーよ」 持田さんは案外あっさり否定した。俺は何だか肩透かしを食らったような気持ちになり、同時に安堵もしていた。持田さんが敵に回らなければ、俺にも可能性があるってことだよな。 そう思った矢先。 「好きじゃなくて愛してんだよ」 「…え?」 持田さんはニヤリと笑った。あの背筋が凍るような黒い笑みで。 「お前にはやんねーよ」 こんな悪い顔、苗字さんにも向けてんだろうか…。 兎にも角にも俺の淡い恋は実るどころか花をつける前に持田さんによって握り潰されてしまった。 持田さん…おっかねえ…。 END :101217 戻る |