某生徒視点


恋愛の好きではなかったと思う。
強い視線や、溢れ出すオーラ。
恰好良い容姿と相俟って、同じ男として酷く憧れた。

学年問わず、全校生徒の憧憬の的であった彼。
軽々しく近付く事など許されないのだと思っていた。



そして、ほんの1ヶ月前。
誰もがそう思い、遠巻きに焦がれ続けた存在に悪い虫がついた。


なぁ、その髪型、何なの?
(不潔だよ、とっても。)

声、よく通るんだね。
(煩い。耳障りなんだ。)

友達?誰と、誰が?
(悠って誰の事?まさか、瀬戸悠さんじゃないよね?)

好きな人?へぇ…誰?
(冬哉……?ねぇ、冬哉って誰…?)


苛々の原因はコレ。
呼び捨てなんて、良い度胸してるよね。一年の癖に。

だけど、制裁の原因にはなり得なかった。
永城真央は本当にムカつくけど、瀬戸さんが庇うんだ。
嫌いだと言いながら、泣きそうな顔で君なんかを庇うんだよ。

会長と結ばれた、あの美しい人が、あんな一年を庇う。
だから俺達は手を出さない。

瀬戸さんは、制裁が無いのは知ってるみたいだけど直接の原因が自分だとは気付いてないみたいだ。


「小里…顔。」

「…はい?」

「眉間のシワ、癖になっちゃうよ…?」


不思議そうな顔で、話し掛けてきた緋月会長。意味が分からず首を傾げれば、瀬戸さんが皺が寄っていたのであろう俺の眉間を優しく撫でた。


「何かあったのか?」


心配そうな瀬戸さんと、難しい顔をした緋月会長にふんわりと笑って首を振った。


「少し、疲れたみたいです。」


そう言えば、瀬戸さんがハーブティーを淹れてくれた。
会長も、それ飲んだら、早く休め。と声をかけてくれた。

親友が親衛隊の隊長を勤めている瀬戸悠さんと、自分が隊長を勤めている緋月冬哉さん。
とてもお似合いで、ずっと笑っていて欲しいと思った。

遠くて、眩しい、二人に。



You turn me off


嫌いでも、憎んでいても、上手く折り合いを着けなければいけない。
この人達が、望むなら。


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