大学生パロ

お洒落な、落ち着いたバーのカウンターに座りながら、すっかり顔馴染みになったマスターと話ながら時間を潰す。


「瀬戸さん、また?」

「うっ…ごめんなさい。」

「いいよ。…ほら、どーぞ?」


空になったグラスに、徐々に客が集まりだしたバーには似つかわしくない冷水が注がれる。
マスターも理由は聞かない。
酒が飲めない訳ではないけど、弱いことには変わり無い。

マスター曰く『旦那さんがいない時に酔われたら堪んないからね』だそうだ。
俺は全く覚えていないが、どうやら醜態を晒したようだった。
記憶はないなりに、冬哉にこってりと言いくるめられて、それ以来外で酒は飲まない。マスターもそれ以来出してくれないし…。

酒癖が悪いって…。と再度落ち込みながら冷水を煽れば、控え目なベルが鳴った。


「待ち人、来たり。」


ニヤリと意味深に笑うマスターを一睨みしてから出入り口に目を向ける。


「悪い。待ったか。」

「大丈夫。マスターと話してたから。」


ジャケットを脱いで背凭れにかける冬哉にマスターが話し掛ける。


「今日は?」

「あー。俺も水で。」

「はぁ?お前も?」

「今日車なんだよ。」


そう言って笑う冬哉にマスターは態とらしく溜め息を吐いた。


「酒も頼まないガキが、なんでここを待ち合わせにすんだ…。」

「俺ら、マスターダイスキダカラ。」

「嘘つけ。」


棒読みの台詞にも、悪態をつくマスターの言葉にも悪意は見えない。
40過ぎのマスターはなんだか父親のようで、俺はすっかりなついている。
冬哉もなんだかんだでマスターが好きだし、俺達はすっかり売り上げに貢献しない常連客になっている。


「どうだった?」

「変わりは無かった。」

「そう。」


大学も休みの今日、冬哉は父に呼ばれて仕事を手伝いをさせられていた。
俺もたまにあるけど、冬哉程頻繁ではない。


「若いのに大変だよなぁ。」


しみじみと言うマスターに、俺達は揃って吹き出す。


「ジジくさ!」

「コメントがお爺さんみたい!」

「お前らなぁ…!!」


この先も、ずっと。
ずっと、こんな下らない事で笑いあえる距離にいたい。



Occasionally
I think


幸せな未来を。
永遠が無いからこそ、今を大切に過ごせる事を忘れずに。


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