プロローグ

平々凡々って素晴らしい―――

平凡という良くも悪くもない、人によってはつまらないと称される日常の素晴らしさを元イタリアンマフィアボンゴレ10代目である沢田綱吉は身に染みて涙ぐんでいた。
勉強ダメ、運動ダメ、パシリにされてばかりいた綱吉は、ある日突然黒い悪魔―リボーン―の訪問によってマフィア一直線の道を引かれてしまった。命を狙われたり脅されたりと危険な目には何度も会うが、信頼できる仲間たちができていきドタバタな非日常を歩み最終的にはネオ・ボンゴレプリーモとしてマフィアの頂点に立たされてしまう。守護者の暴走を押えつつ黒マフィアを潰していき家庭教師の気まぐれに振り回されては書類を片づけ…最後にはたくさんの仲間たちに見守られ静かにその生涯を閉じるはずだった。

そう、はずだったのだ。

ふと気が付けば目の前には湯気の立ったおいしそうなボンゴレパスタ。イタリア専門店ほどではないが一般家庭で作る普通のパスタだ。

「どうしたの?そーくん」

声を掛けられはっと向けば己の母のようにほんわかとしたオーラをまとう優しげな女性。綱吉には記憶はないが己の直感は自分の母だといっている。

「ううん。なんでもないよ、母さん」
「そう?ならいいけど…もしかしてボンゴレパスタ嫌いだった?」
「そんなことないよ!いただきます」

この状況が意味不明すぎて脳内は混乱真っ最中だが家庭教師に死ぬ気で叩き込まれたポーカーフェイスで美味しそうに食べていく。というか普通に美味しかった。直感もそうだが口内から伝わってくる熱にこれは夢ではないと分かる。
おかしい。絶対におかしい。まさかリボーンの仕業かと思ったが自分の直感が違うと告げている。
意味分かんねーと内心頭を抱えながらこのパスタのメインである浅利を食べる…と今度はなぜかこの少年の記憶であろう今までの人生が頭に流れ込んできた。

「んぐっ!?…っげほっごほっ」
「そーくん大丈夫!?はい、水」
「けほっ…ありがと母さん」

渡された水を飲みながらも綱吉のキャパシティは限界だった。
なんだよ今度は記憶って…浅利?浅利だから?ボンゴレ食べたからなの!?
どうやら記憶によると極々普通の平凡な人生を送っていたらしい。もしかして自分はこの身体の少年に乗り移ってしまったのだろうか?どこのクフフパイナポーだよ。骸もびっくりだろ。
だかよくよく記憶を見てみると年号が何十年も前の物でちょうど俺が中一になるころだ。過去へ戻ったというべきなのか…?
それに昔からやけに感がよかったらしくこれは乗り移ったというよりはボンゴレパスタを見て前世―沢田綱吉の人生―を思い出したと言った方が正しいのかもしれない。もう血のつながりはないはずなのになぜかついている超直感も言っている。これは魂に刻まれているレベルなのだろうか?
「ごちそうさまでした」

空になった皿を台所まで持って行き記憶にある二階の自分の部屋へと戻っていく。
パタンと扉を閉めたと同時に頭を抱える。

「どうなってこうなった…」

もしこの少年は来世の俺だったとしてもなぜ今記憶が戻ったのだろうか?しかもきっかけがボンゴレパスタって…もうこれはボンゴレの呪いとしか思えない。なんでよりにもよってボンゴレ…。
いや、待てよ?この家庭は極々普通の一般家庭だ。母は専業主婦だし父親も普通にサラリーマンをやっている。真っ黒なマフィアのマの字もない家庭だ。
ということは……

「よしきた俺の平凡ライフ!!!」

思わずガッツポーズした俺は悪くない。叫んじゃったけど問題ない。多分。
黒い悪魔に銃を向けられることもパイナップルに身体を狙われることも周りの仲間に振り回されて風紀委員長に噛み殺されることのない極普通の平凡ライフが待っているんだ。
平々凡々って素晴らしい…!感動浸っているとノックがされ母親が顔をのぞかせていた。

「そーくん、明日から学校で嬉しいのは分かるけど急に叫んでどうしたの?」
「い、いや!なんでもないよ!…って、え?明日??」
「何言ってるのよ。そーくんは明日から中学一年生じゃない」

はい、とついでに渡される制服。真新しいその制服はものすごく見覚えがあった。

「…ねぇ、母さん。明日から行くその中学って……」
「何言ってるの。並盛中学校でしょう」

一瞬黒い悪魔の影が見えた気がした。


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