黒子のバスケ | ナノ

 だって……(花宮/嫌われクラッシュ)

「いやぁぁぁああああああ!!!!」

洛山(主に赤司)主催によるキセキ&無冠獲得校の合同合宿は一つの悲鳴によってその平穏は断ち切られた。

「どうした!?」
「今の悲鳴は!?」

午後の先週も終わり個人で自主練習や勉強などをやっていた各校のレギュラー達も何事かと集まってくる。
どうやら更衣室から聞こえたようで、もうすでに何人か集まっていたが全員唖然とした表情で立っていた。
ただ事ではないと赤司は小走りに駆けつけると思わず息を止めた。

「いったいどうし…!?」

ぼこぼこに壊されたロッカー、床に散乱してる衣服やペットボトル。そしてまるでナイフのようなものでボロボロにされたバッシュなど、まるで空き巣が入ったかのような空間に泣き崩れる少女とその少女を冷たい目で見下す花宮がいた。
泣き崩れる少女――(この建物のオーナーの娘で今回色々と世話をしてくれていた)多田野萌舞美ただのもぶみは布切れのようになった服を抱き寄せ震えている。
一番早く復活した誠凛の監督が自分のジャージを彼女に掛けてあげるとそれをきっかけに周りの人たちも動き出す。
「大丈夫!?」「怪我してない?」と周りの人たちが彼女に駆け寄る中、冷静さ取り戻した赤司はゆっくりと花宮に向き直り見据える。

「花宮さん、一体何があったんですか?」

話を聞こうにも彼女は聞ける様子ではないのでもう一人の原因と思われる花宮へと質問をするが、赤司に気づいていないのか冷たい視線を彼女に向けるだけで花宮も答えない。
もう一度聞こうと踏み出せば彼女の方がポツリポツリと涙声で話し始めた。

「わ、わたし…お昼に更衣室を軽く掃除した時に髪留めを忘れてきたたことに気づいて取りに来たんです。そしたら、中から何かをへこましているような変な音が聞こえてきてっ…それで、ヘンだなって思って扉を開けたら、は…花宮くんがこの部屋を荒らしているのを見たんですっ!!早くみんなに知らせないとって離れようとしたら気付かれて、急に引きずり込まれたかと思ったら…っ…」

そう言って自分の身体を抱きしめながら震える彼女を支える周りの目には明らかな花宮に対する敵意があった。

「花宮さん、彼女の話に異論は?」
「……」
「花宮さん!!」
「花宮テメェ!!何か言ったらどうなんだ!?」

何も反応を示さない花宮に誠凛の日向が胸ぐらを掴むと静かに花宮が口を開いた。

「…20点」
「……は?」
「タイミング5点。シナリオ4点。場所のチョイスに1点。演技力8点。演出2点。ちなみに100点満点中だ。まったくもってなってねぇ。もう一回やり直し」

突然話し出した花宮の言葉に誰もが唖然とする。しかし周りを気にせず花宮は言い続けた。

「まずタイミング。他の奴らに気づいてもらうために練習終わりのこの時間帯を狙ったんだろうがわざわざ人通りが多くなる時間帯にことを起こしてどうする。こんなもんいつ誰が入ってきてもおかしくねーだろうが!やるならもっと遅く、就寝間近にした方がリスクは少ないに決まってんだろ!!次にシナリオ!バスケ部の俺がなんでバスケに必要なバッシュや自分が使っているロッカーまでぼこぼこにする必要がある?その上見つかったから連れ込まれて襲われそうになったとか目茶苦茶過ぎんだろ。練り直して来い!!演技力はまぁそこそこ有るくせに襲われたという前提で男に抱き着くとかバカだろお前。あぁ、こんなことをする時点でバカだったな。しかも自分で実行するとかアホすぎ。周りをもっと誘導とかして自分で手を下さないようにするべきだろうが。俺を標的にしたのはある意味間違ってないが嵌めるんだったらもっと上手くやれよ!!」

「えっと…花宮さん?」

「おまけにこんなに部屋散らかしてどうすんだよ。30分前まで監督同士のミーティングに参加していた俺が短期間でこんなに荒らせると思ってんのか」

確かに花宮はミーティングに参加しており先ほど別れたばかりと言ってもいい。そんな花宮がここまで部屋を荒らすには30分ぐらいでは到底無理だろう。
他の人たちも気づいたのかハッと彼女を方を振り向くと真っ青な顔で震えていた。


「ねーなんか悲鳴聞こえたけどどーしたのー?」
「うわっ、なんだこれ」
「すごい有様だな」
「どうやったらここまでボロボロにできんだよ…」

静まり返る空気をぶち壊すような明るい声と共に霧?のメンバーがぞろぞろとやってくる。

「あれ?もしかして花宮やっちゃった??」
「ふはっ、んな訳ねーだろうが!良く見ろよ」
「花宮がこんな杜撰なことをするはずないだろう。やるならもっと上手くやってる」
「ま、当事者にはなんないよね〜。ってことはこれよく聞く嫌われってやつ!?俺初めて見た!!」
「マジでやる奴いたのか…」
「というか。見たところ花宮が論破したってとこ?珍しいね。花宮がそんなことするなんて。いつもなら周りひっかき回したりするのに」
「いや、俺も初めは楽しもうと思ったんだが…」
「…?あぁ、なるほど」
何かを納得したような瀬戸と同時に、花宮は呆れたように呟いた。


だってこれはないって思ったから

浅はか過ぎんだろ。色々と。



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