過去拍手 | ナノ


陰陽生A 

いつもより少しざわついている陰陽寮。
毎日のようにあちこちから依頼が来て忙しいのは変わらないが今はあの大陰陽師、安倍晴明の孫が元服するという話でもちきりだった。
噂というのはいろんな形で飛び交うものでずっと病弱だったとか才能が今まで開花されずいつまでも屋敷に置いておくわけにもいかないから元服さしたなど言いたい放題である。

「俺の時もこんな感じだったんだな…」
「ん?なにか言ったか?」
「いや、なんでもないよ」

独り言が聞こえたのか不思議そうに首を傾げているがそれ以上は聞いてこない友人に感謝しつつも目的地に向かって足を進める。

「…しかし、すごい噂になってるな。」
「晴明様のお孫さんのこと?」
「あぁ。確かに気になるのもわかるがこうもザワザワしすぎるのもいかがなものか。仕事に支障がでなければいいが…」
「確かに…まぁ、大丈夫じゃないかな?あんまり騒がしいようだったら吉昌様たちが何とかしてくれる気がする」
「…それもそうか」

吉昌様たちも大変だな、とその様子を想像しながら話に花を咲かせていく。

「だが、どんな者であろうと私たちも気を抜かぬようがんばって行かないとな」
「そうだね。」
「いい心意気だね、弘昌殿、敏次殿」

急に声が聞こえ後ろを振り向くとクスクスと笑いながら吉昌が立っていた。

「あ、吉昌様。お疲れ様です」
「どうかいたしましたか?」
「実は君達に頼みたいことがあってね…話を聞いてるだろうけど息子のことで…」
「あぁ、すごい噂になっていますよね」
「あの子が聞いたらびっくりするような話がたくさん飛び交っているよ。それで、もうすぐ元服する息子…昌浩なんだが、陰陽寮に入ったら色々と様子を見ていてくれないか?」

無自覚であろう吉昌の過保護なお願いにキョトンとする二人だがすぐにこくこくと頷き。

「もちろんです!」
「私たちでよろしければ」
「二人ともありがとう。よかったら元服のときにでも見に来てくれ」
「喜んで行かせていただいます」

ほっとした様な笑みを浮かべではまた、と去っていく吉昌を見送る。
隣に居る敏次も噂の昌浩を見えるのが楽しみなのを隠しきれていないようで口元が緩んでいる。

「さて、俺たちも行こうか。敏次殿」
「あぁ。あと弘昌殿、俺じゃなくて私だぞ」
「あ…ごめんごめん。つい」

口調が戻ってしまい注意されてしまうが昔を思い出し笑みがこぼれる。
まったく…とため息をつく敏次もいつもと変わらぬ弘昌に苦笑し先に行くぞ、と歩きだした。
先に行く敏次を小走りで追いかけながらもこれから出会う昔の自分を思い浮かべ小さく笑みを浮かべる。

「これから大変だろうけど頑張れ、昔の俺」


prev / next

[ back ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -