gr8 tale | ナノ


 


 01.



それは、2学期終わりの終業式の日。もうすぐクリスマスもあるからと自分から自分へのプレゼントを探しに、今まで貯め込んだバイト代とお年玉と誕生日プレゼントである現金を持って街へ出た時に起こった。



「今日から冬休みー!気分は永遠にクリスマスー!恋人はお金と二次元ー!」



決して周りには聞かれない様に、それでも揚々と歌いながらショーウィンドウを眺めてたアタシ。漫画だとかゲームも惹かれるけど、お洒落だってしたい、たまには高級ブランドの品々も有りだよなぁなんてまじまじと目ぼしい物を見付ける。

財布は前に買ったし、バッグとか良いなぁ。だけどちょっと奮発し過ぎるかな、来月には狙ってるグッズとゲームが発売だし…
隠れオタクを貫く身として二次元用品は欠かす事は出来ない。毎日毎日必死にバイトして、お給料6割は貯金、残り4割プラス少な過ぎるお小遣いは日用品とそっちへ持ってかれる。だからこそクリスマスや誕生日の一大イベントはアタシにとって待ち遠しい日だった。
そりゃ自分へのプレゼントだしお金出すのもアタシだけど…それでもそんな時くらい全額とは言わないでもパーッとご褒美が欲しいってもんじゃんか。だからこそじっくり品定めをしてたんだけど、



「どうしようかな。コレとか良いかも………って、え?」



フッと眼を奪われた可愛いマフラーのあるショーウィンドウに手を伸ばして、ガラスに触れた瞬間。
ガラスを擦り抜けた両手は次第に透明になっていく。嘘でしょ?あり得ないでしょ?幾ら何でも店に仕掛けられたマジックでしたとか笑えないんだけど…!



「ちょ、いや、ややや止めてよ、お願いだから!無理無理!ガラスに食べられるとか絶対無理だからー!!」



叫んだって離れようとしたって何しても意味を成さないまま、結局アタシの身体は誰にも気付かれず消えるんだった。



「……あれ、」



そして暫くして眼を開けるとさっきとは一変した景色が広がった。街中に居た筈なのに何処かの部屋の中みたいで、テレビやソファーが視界に入る。
とりあえずは無事、なんだと思うけど此処は何処なの…?怪訝に眉を寄せると『う゛……』なんて呻き声が聞こえて必然的に肩が跳ねた。



「な、なに今の声…」

『お、お、重い、苦しい、死ぬ…!』

「え、」

『ギブ、ギブやギブ、退いてくれ…!』

「は――……、あっ!ご、ごめんなさい!」



どうやら呻き声はアタシの下から聞こえて来たらしく、お尻には金色の髪が見えた。人の頭を下敷きにしてるとかあり得ないんですけど!
現状は理解出来なくとも一先ずそこから退かなきゃいけない事だけは当然分かって、直ぐにお尻を持ち上げた。



「本当にごめんなさい、大丈夫ですか…?」

『……な、何とか窒息死する寸前で耐えたわ…』

「それは良かったと言うべきかどうなのか…、?」



ゆらりと顔を上げた金髪の男の子は頭を撫でながら立ち上がるけど、この人どこかで見た事が……



『っちゅうか何が起きたんや?急に頭の上に女の子が降って来た感覚やってんけど…』

『………………』

『………………』

『白石?財前?どうせお前等の嫌がらせやろ?何黙ってんねん……っ?!』



そうだ!
金髪に白石に財前!このメンツってアタシの好きな漫画の“庭球のプリンス”に出て来るキャラじゃん!忍足謙也だ!
それに白石蔵ノ介と財前光まで…まさかこの眼で本物を見られる日が来るなんて…アタシどっか頭でも打ったのかな、幻覚?夢?幽霊?
こんな事が現実にある訳ないじゃん、そう思いながらも三次元の貴重な3人をまじまじと見つめてると、



『ま、まさか、』

『名前ちゃん、なん…?』



何でだか向こうもアタシの事を知ってる様子だった。
いやいや。それこそ夢だよねって話し!こんな馬鹿みたいで、だけど美味しい話しが転がってる筈が無いってば!
…それなのに頬っぺたをつねったって痛いだけで夢から覚める気配なんて微塵にもなかったんだ。




(20110107)

前から考えてたトリップ話し。本当はシリアスで蔵連載の筈だったんですが何故かギャグハー風味に…
そして設定もやや細かくて、ちゃんと続けられるか不安なお話しです。途中で下げたら『やっぱり』って思って下さい。




…prev…next



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -