sequel.13
an oath (1/1)
今まで生きてきた過去は
全て貴方に出会う為だけのもので
この日の為に生まれてきたって思っても過言じゃない
sequel.13
an oath
これから話す事、ビックリすると思うけど、安心して聞いてや…?
蔵はアタシの手を握ってゆっくり口を開いた。
指先から伝う温度が心地よくて、言葉通りアタシは落ち着いていた。
『――…っちゅう事やってん』
「…………」
蔵の話によると、ある女の子からサイトに投稿するだの脅されてたからアタシを守る為にあんな態度に出たんだとか。
そんな事アタシは……
「……怖くないよ…」
『え?』
「アタシは、そんな事されたって怖くない」
『名前ちゃん…』
だってそうでしょ?
アタシには蔵が居る。光だって居る。
「でも、蔵がアタシの為にそうしてくれたのは凄く嬉しい」
光の言う通りだった。
蔵はいつでもアタシを一番に考えてくれてて、優先してくれて。
こんな善い人に愛されてアタシは幸せ。
そう歓心してると、蔵の手が離されて蔵の薫りに包まれた。
『…結果的には、泣かせてしもた』
「それは別に、『せやけどな』」
アタシの言葉を遮って続ける蔵は、更にぎゅっとアタシを抱き締める。
『せやけど…これからは何があっても離さへん』
「蔵……」
『俺が名前ちゃん守ったるから……ううん、ちゃうわ…俺に…』
俺に一生、名前ちゃんを守らせて下さい
プロポーズとも取れるその台詞に、泣き虫なアタシが溢さずにはいられなくて。
「う、ん…」
『…名前ちゃん、泣いてるん?』
「…ごめ、」
『謝らんでええ。何回言うたら分かってくれるん?嬉し涙は歓迎や言うてるやろ?』
「うん…」
『俺は、そうやって泣いてくれるんが嬉しいし、その度に名前ちゃんの事もっともっと好きになってしまうんや。今既にめいいっぱい好きなはずやのに変な話やけど』
ハハ、って笑って、蔵はアタシのおでこと自分のおでこをくっつけた。
そんな至近距離、ただでさえ自分に自信無いのに泣いてる時なんて余計不細工だ。
恥ずかしくて恥ずかしくて、蔵から離れようと首を動かそうとした瞬間、
『めっちゃ可愛い』
アタシの頭は蔵によって固定されて、そのまま唇に柔らかい感触。
唇が離れた時にはアタシは昇天してしまいそうなほど熱くて、軽くパニックになってるくらい頭は真っ白だった。
この人には適わない、そう思ってると視線が真っ直ぐぶつかって。
『俺はまだまだガキやし、頼りないし、大した男やないけど……名前ちゃんが哀しくて涙流させへん分、幸せな時に流せるように頑張るから……』
単純に嬉しい感情以外の何モノでもない。
真っ白だったアタシの頭は蔵が好きだって延々と繰り返す。
「これ以上、頑張られたらアタシ四六時中泣く事になっちゃうよ…」
『俺はそれでもええけど』
「アタシが困る…」
『目、腫れてまうしな?』
「ちょ、そういう問題じゃ…!」
真面目な顔してたはずの蔵は意地悪そうに笑ってて、やっぱりアタシばっかりからかわれてて恥ずかしい。
そんな蔵の胸をドンドン叩いてやると、
『ククッ、冗談や。名前ちゃん、ホンマに好きや…』
手首を掴まれて再度キス。
「…ズルい…………」
『んー?聞こえへんなぁ』
「意地悪………」
『なーんも聞こえへんわ』
そして何度も何度も角度を変えて襲ってくる蔵の唇に、アタシは今日も堕ちていく―――
今まで生きて来た事がこの人に逢う為の試練だとしたなら、何ひとつ無駄な事じゃなかったんだと思える。
そして今日、アタシは一生、蔵と生きていくことを誓ったのかもしれない。
(sequel.13 END)
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