sequel.12
special love (1/1)
人と人の出逢いなんて単なる偶然で
だけど、あの日違う場所に居たら。
そう思うと、君に逢えた事は必然的な運命じゃないかって思ってしまうんだ。
sequel.12
special love
『ほな、ジュース飲んだらとっとと帰って下さいよ』
名前ちゃんの頬っぺたにキスした財前は白々しくそう言うた。
「財前、お前俺ん事軽くシカトすな」
『え、面倒臭いし』
「面倒臭い!?ホンマ腹立つな!」
財前と名前ちゃんに話させたろう思って自ら出ていった俺やけど、ホンマは気になって気になってしゃーないねん。
せやのにキスしたんやでコイツ…!!
これが黙ってられるか!
『もええから部長、俺は寝るんで適当に帰って下さいね』
「寝るな!話は終わってへんねん!」
『誰のせいで寝不足や思てんねん』
「、……」
そういえばそうや。
あの女を片してくれたんは財前や。
もしかして、お前…夜通し俺の為に……
『え?光が寝不足って、』
「名前ちゃん帰ろ」
『、蔵?』
「ええから帰るで」
俺は名前ちゃんの手を引っ張って財前の部屋から外へ出る。
先に名前ちゃんを外へ出して、
「財前、堪忍。ホンマ感謝してる」
そう言って頭を下げた。
お前が居てくれたからこそ、今があんねんな。
そして俺がドアノブに手を掛けた時、
『アンタも、笑てた方がらしいわ…』
小さい声が聞こえた。
俺にとって名前ちゃんは大事すぎる存在やけど、財前も俺にとって……親友なんかの言葉を越える存在やと思た。
静かにドアを閉めると、知らず知らず口角が上がってる俺に名前ちゃんは不思議そうな顔をしてた。
『蔵?どしたの、凄い笑ってるよ』
「ん…ちょっとええ事あってん」
『善い事?』
「うん。大事なモノが増えた、っちゅう事かな」
手の平だけや持ちきれへん暖かいモノを、俺はこれから先もずっと守っていきたいと思う……
□
名前ちゃんの部屋に着くなり、久しぶりにすら感じる部屋の匂いと懐かしさに酔いしれた。
こない依存してしもてる自分に笑ってしまいそうで。
彼女を引き寄せてぎゅっと抱き締めた。
「昨日、ホンマごめんな…」
『ううん…アタシこそ、蔵の事信じれなかったから…ごめん…』
「うん?信じれへんかった、ってどういう意味?」
一方的に俺が悪いはずやのに謝る名前ちゃんが不思議で。
信じるも何も、俺が名前ちゃんを傷つけてしもたんやで…?
『昨日ね、蔵にもう会わないって言われたでしょ?アタシ、凄い辛くて…』
「…………」
『でもね、光に言われた。全部アタシの為だろって、何かあってそう言ったんだろうけど別れるなんて言わないのは、それだけアタシを想ってくれてるんじゃないかって』
そう言いながら名前ちゃんは俺から少し離れて、俺の眼を見る。
“だから、信じれなくてごめんね。今は何が起きても蔵を信じてるから”
その言葉に、救われるような感覚やった。
俺のせいにすれば楽なはずやのに、自分が悪かったんやと俺を立ててくれる彼女が愛しい。
「有難う…」
『お礼言われる事なんて言ってないよ。それを気付かせてくれたのだって光だし…』
うん。
財前はホンマ凄い男やと思う。
自分やって名前ちゃんが好きやのに自分じゃない他の奴の為に動いてくれて…最早感謝っちゅうより尊敬してしまいそうなほど。
せやけど……
「何か焼くわ…」
『え?』
「財前と名前ちゃん、俺には入れへん様な何かがある気がする」
『うーん……、そうかも』
「え?否定してくれへんの!?」
『だって光は特別だもん…』
「そ、そう、なん……」
普通に凹むわ……
特別って…めちゃくちゃ嫉妬する。
『だけどね、本当に特別なのは蔵だけだよ』
「名前ちゃん…」
『あ、それから…昨日何があったのか知りたくて光に聞いてみたんだ。でも、本人に聞けって言われちゃった』
「ああ、その話は、」
『ううん、いいの。蔵が話してくれるまで待つよ。いつか言いたくなったら、話してほしい。それまでは何も聞かないから』
「…………」
『だからこれからも、宜しくお願いします』
笑顔で名前ちゃんは俺に手を差し出した。
その手は俺を信じてる、その証。
聞かへんなんか言うても普通は知りたい、よな…俺が何であんな事言うたんか。話したら怖い思いさせるかもしれへんから黙っとこうかとも思たけど……そんなん関係あらへんな…名前ちゃんには隠し事なんやしたくないしそれに………
「名前ちゃん。」
俺は名前ちゃんの手を強く握って口を開く。
「これから話す事、ビックリすると思うけど、安心して聞いてや…?」
君の眼を見て、君を一生守ると誓わせて下さい。
(sequel.12 END)
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