squel.11
luxury (1/2)
触れたら消えてしまうシャボン玉の様に儚いものだとしても
貴方は幾つもの愛というシャボン玉を私に向けて翔ばしてくれたんだ
squel.11
luxury
“良かったな”
アタシのメールに一言。絵文字も何もないただの一言だったけど光の優しい顔が浮かんだの。
「アタシね、蔵は童話から出てきた王子様なんじゃないかなって本気で思うの」
『せやったら、名前ちゃんはお姫様やんな』
「そ、そんなお姫様なんて柄じゃないよ…!」
『んな事あらへんよ。名前ちゃんは可愛くて優しいとびっきりのお姫様や』
「照れるよ、蔵…」
『んー、その照れた顔がめっちゃ好きやー!!』
『帰れ』
「え?」
アタシと蔵がバカップルを繰り広げてると横から雰囲気壊すような言葉が聞こえてきた。
帰れ?なぁにそれ?
『ウザイわアンタ等!』
「何でそんな事言うの光!」
『財前、先輩に向かってウザイはアカンで』
『うっさいわ!!急に人ん家押し掛けて来て身体が痒くなるような事ばっか言うてんな!!!俺は眠たいねん、昨日寝てへんねん!睡眠邪魔する上にウザイ事言うな!用が無いならとっとと帰れ!ホンマお願いやからもう帰って下さい!!』
「はー……光が一言だけじゃなくて長文喋ってるの初めて聞いた…」
『オマケにお願いされたな』
『感心せんでええ!』
一呼吸で一気に言い切った光は肩で息をしてて、ちょっと面白かった。
蔵と仲直りしたアタシは、直ぐに光に報告のメールを入れて有難うって告げた。
それから、蔵に何度もキスされて今日はずっと一緒に居ようって言われたんだけど。
でもアタシは光に会いに行きたい、そう提案したの。やっぱりちゃんと光に会って話したかったから。
蔵もそれには快く賛成してくれて今に至る。
「光って、可愛いよね」
『うん、間違いないな』
『そんなん言われても嬉しないわ!』
『っちゅうか財前、喉渇いたんやけど』
『…ええ加減にしてや部長……』
『しゃーないわ、俺ジュース買って来たるから適当に喋っててや』
『買って来たるって、アンタが飲みたい言うたんやん…』
「アハハ!いってらっしゃい蔵ー!」
多分、蔵は気を使ってくれたんだと思う。
アタシが光と2人で話が出来るように。そういうの、分かる人だもん。
蔵が出て行ってバタン、とドアが閉まるなり光は口を開いた。
『…上手くいって良かったな』
「うん…光のお陰だね」
こんな風に話してると、光と初めて会った時の事を思い出す。
あの日は、初めて蔵の友達に会う事にちょっと緊張してた。上手く話せるかな、とか、蔵の彼女として認めてもらえるかな、とか……
まさかこんなに仲良くなれるなんて思ってなくて、こんなに大事な存在になるなんて思ってもみなかった。
「光、1コだけ、我儘言ってもいい?」
『……嫌やけど何?』
「嫌って!聞くだけ聞いて嫌って言う気?!」
『ええから早よ言え言うてんねん』
相変わらずな物言いに気が引けるけど、それでもお願いしたい事があった。
「光…これからも、アタシの傍に居てほしい…」
『……………』
「ずっと、大事な友達で居てほしいよ…アタシには光も必要なの」
蔵と出逢わなければ光の存在すら知らなかったかもしれない。
だけど今となっては本当に大事な人で、光と笑い合いたいって思ってる。我儘だって分かってるけど、それでもアタシは……
『…せやから阿呆言われんねん』
「え?」
アタシの言葉に、光は溜息を吐いてソファーに寝転んだ。
←