Sincere love | ナノ


 

 story15.
  Present in the past (1/2)




もし1つだけ願いが叶うとすれば

君を幸せ色に纏ってあげたい





story15.
Present in the past





『白石ー?何で戻って来おへんねん。財前と名前ちゃんも凄い顔して出て行ってしもたし何かあってんか?』

「…………」

『白石?なぁ――――!!』

「謙也、1人にしてほしいねん」

『な、なんちゅう顔してんねんお前…』

『蔵ノ介!あないな女放っておいたらええやん!蔵ノ介と付き合ってんのに光と抱き合ってた女やねんで!?』

「さい……」

『え?』

「煩い言うてんねや…雪子、お前俺の前から消えろ」

『な、何でそないな、』

「お前と俺はとうに終わってんねん。お前が普通に友達戻る言うならかまへん。せやけど名前ちゃん引っ掻き回すんやったら話は別や。女や言うても容赦せんで……」

『く、蔵ノ介……』



財前に抱き締められてた名前ちゃんは泣いてた。
俺の顔見た瞬間、勢い良く涙が零れてたんや……

それは俺のせい。
財前の中に居てる事なんかハッキリ言うてどうでも良かった。ただ、俺がまた泣かせてしもたっちゅう現実が情けなく辛かった……





雪子と出会ったのは中学2年になって直ぐの事やった。
マネージャーなりたい!言うて、当時募集してへんかったのに粘って粘ってオサムちゃん説得したんや。

マネージャーに関しては不器用ながらもちゃんと仕事をこなしてたし、仲間やと思うのも早かった。


俺が3年に上がった時、雪子は俺に告白してきたんや。
“付き合うて。はい以外の返事は受け付けへん”
告白した側にも関わらずめっちゃ偉そうに言うてきよったんには笑いさえ出た。

雪子の事は嫌いやなかったし、友達の延長くらいの気持ちで付き合うてもええかな、そう軽い気持ちでオッケーしてしもたんや。
雪子もそんな俺に気付いてみたいで。せやけどその俺の態度が雪子にしてみれば気に入らん訳やった。

“蔵ノ介、抱いてほしいねん”
雪子の誕生日、プレゼントは要らへんからうちを抱いてって言われた。
雪子とは付き合うてる訳やし、そういう事に興味津々やったガキの俺は言われるがまま雪子を抱いた。それが間違いやったんや。



全国大会を目前にして、テニスに集中したかった俺はひっつき回ってくる雪子が面倒臭いとさえ感じる様になってしもた。
もう、潮時や。そう思て別れを告げたた時、雪子は思いもよらへん言葉を口にした。


“うち、蔵ノ介の…出来たみたいやねん”


中学生やった俺は焦った。血の気が引くっちゅうんはこういう時の事を言うんかって。
堕ろしてくれやなんて安易に言えへん。せやけど産んで養う事なんか尚更無理や。
俺の頭はパニックやった。

それから何日も夜眠れへんと頭を悩ませた。どうする事が最善なんやろうかと。
その告白を受けて5日目、俺は決心したんや。中学卒業したら死ぬ気で働いて雪子と子供を養ってやるって。

俺なんかより不安やろう雪子に早く伝えてやりたかった俺はその日の昼休み、雪子の教室へ向かった。
雪子は友達と楽しそうに喋ってて、笑顔でおる事に安心した。
せやけど、その友達との会話は――……



『白石先輩ホンマに信じてるん?』

『当たり前やん。うちらそういう事したんやから』

『せやけど雪子ー、これからどうすんねん?このまま嘘付いてる訳にもあかんやろ』

『分からへん。せやけどうち蔵ノ介と別れるんは絶対嫌やってん』

『せやっても子供出来たって嘘付くんはどうかと思うで?』



何の話や……
コイツ等何言うてんねん…
子供出来た言うのは嘘……?

ソレを聞いた瞬間、雪子に対する気持ちが一気に冷めた。憎しみさえ覚えるほどに。



『嫌や!嘘付いてたんはうちが悪い、謝るから!せやから別れるやなんて言わんで!』

『お前の事好きやないねん』

『お願いや、うち蔵ノ介が居らんと、』

『邪魔や言うてんねん。俺はテニスがあったらそれでええ。お前なんか要らん』

『………、認めへんからな!うちは蔵ノ介と別れるなんて認めへん!!』



それっきり、俺は最低限雪子と話す事すらせんかった――………



「名前ちゃん……」



雪子との話聞かれてたんやろか…

別に隠したかったわけちゃうねん。あれは俺の中から消した過去やったんや。

雪子が悪い。せやけど本気で好きでもない女と付き合うた俺に罰が当たった。
こないな俺、知ってしもたら名前ちゃんは嫌いになるやろ……?
それだけは避けたかったんや…




  □




『あ、白石!帰って来たで名前ちゃん!』

「ホンマに……?」



あれから1時間。
財前と出ていった名前ちゃんは1人で帰って来た。



「名前ちゃん……」

『蔵、話があるんだけど…』

「、ん」



あー、フラれるんやな。
そう思った。



『蔵……』

「財前と、何かあったんやろ?」

『…………』



見てくれやん、か…

俺の部屋に入ってから、名前ちゃんは俺の方を向こうとはせんと俯いたままやった。



『あのね、光に告白された…』

「うん……」



いつか見た、夢がデジャブする感覚。

“蔵、別れよう”

そう言われるんや。
せやけど、財前の方がええんかもしれへん。俺なんかより幸せにしてやれるんかも、しれへんな…



『“泣かさへんから、部長忘れて”って…』

「うん…」

『光とだったら幸せになれるのかな、って思った』



やっぱり、そうなるんやな…
正直、少しは期待してたんやけど…未練がましいなぁ…



『最近ね、蔵と付き合ってても辛い事多くて…アタシと蔵は駄目なのかなって…』

「……………」

『アタシがこんなんだから、光もいっぱい傷つけた。だから光にも幸せになってほしいって思ったの』



覚悟は出来たけど…
アカンわ、辛い。名前ちゃんが居らんなるかと思うと、息も出来んなりそうや……





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