story13.
You who drew me (1/2)
手を伸ばした遠くの空に
眩しくて涙するのは君が愛しすぎるから
story13.
You who drew me
「何も心配する事なんやあらへんねん」
名前ちゃんは怪訝な顔をして俺を見るだけやった。
□
会いたいよ
俺は名前ちゃんに言われてオカンの車をかっ飛ばした。
寂しい思いなんかさせやん。そう決めたからには1秒でも早く、彼女に顔を見せてあげたかったんや。
♪♪〜
「誰やねん、今電話されても運転中は出れんわ」
実家を出て10分くらいのところで鳴りだす携帯は、鳴り止む事なく永遠とコールを続ける。
あー!もうウザイな!
出たらええんやろ出たら!
「は、財前ですか…」
携帯画面に表示されてる名前は財前光。
しゃーない、これだけ鳴らすっちゅーことは用事があるんやろうし、序でに誕生日おめでとーくらい言ったろか。
「はいはい、なんやねん鬼コールすな」
《部長?》
「俺の携帯やのに俺に決まってるやろ。誕生日おめでとーございますー、プレゼントは無いからな」
《そないな事で電話しませんよって》
可愛くないなコイツは。
そこは素直に有難う言うとこやねん。
「ほななんや?俺忙しいねんけど」
《…ちゃんと、言うとこ思て、》
「はー、主語言わんと分からへんやろ」
《…………》
「財前?」
《名前から、プレゼント貰いました》
「は?」
それに続く言葉なんか想像もつかへんかった。
“名前の首。部長と反対側貰たんで”
首……?
俺の反対側?
まさか、俺が付けたアレの事言うてんのか?
「お前、名前ちゃんに、」
《心配しやんでもそれ以外手出してませんから》
「……っ、」
《偶然会って…誕生日くらい一緒に居ってもええか思て。飯食っただけやねんけど》
「…………」
《黙ってても良かったけど…せやけど部長にはちゃんと言いたかったんですわ。相手が部長やからこそ影でコソコソしてるなんて思われたなかってん》
誕生日ってやつは誰にとっても特別で。財前やって例外やない。
話聞いて、滅茶苦茶腹立つし滅茶苦茶嫉妬してるけど、それでも俺に汲んでくれる気持ちがあるなら…怒る気にはなれへんかったんや。
「財前、今回は見逃したる。せやけど次は無いからな」
《おおきに》
「名前ちゃんはやらへんで」
《…上等ですわ》
コレが俺からの誕生日プレゼントや。
せやけど、財前はええとして…名前ちゃん大丈夫やろか。
また1人で自分責めてるんちゃうかな…会いたい言うたんもきっとコレのせいや思うし。
携帯を置いて、俺はまた車を走らせた。
□
『蔵…知ってた、の?』
「財前に聞いたんや」
『!』
名前ちゃんは申し訳無さそうに俯いてしもた。
「名前ちゃんは悪ないよ。財前かて悪いとは言えへん」
『…………』
「恋愛って、難しいなぁ…」
苦笑する俺の胸に顔を押しつける名前ちゃんは、一呼吸置いて、
『アタシ、恋愛対象じゃなくて、光の事好きだよ…?』
「うん…俺もそうや」
『蔵、会いに来てくれて有難う…』
「どういたしまして」
思いの外、涙を流す事なく笑顔やった…
それはきっと、精一杯の俺への気遣いやったんやと思う。
□
「ほな、帰るで?」
『うん……』
「もう大丈夫やんな…?」
『うん、有難う』
あれから1時間くらい世間話したけど、明日もオカンは仕事で車使うし長居してるわけにもあかん。
嫌やけど、帰ると告げた。
「あ、忘れ物した」
『嘘、なに―――…』
「……やっぱ俺、名前ちゃんの照れてる顔好きや」
『か、からかわないで、よ…』
忘れ物っていえば勿論名前ちゃんで。
不意討ちのキスに赤くなる彼女を、このまま連れ去りたいとさえ思ってしまう。
何回もキスしたのに慣れへんとこが可愛いわ。
ホンマは、一緒に実家行けばええねんけど明日夏休み入る前にレポート提出せなあかんらしくて、我儘は言えへんかった。
単位取れへんかったら後でしんどいもんな、仕方ない。……寂しいけど……
『蔵!明後日楽しみにしてるから!』
「待ってる」
車に乗り込む俺に名残惜しそうな顔をする名前ちゃんに言いたくなった。
どれだけ俺を幸せにさせたら気ぃ済むねん。
「今日はやっと名前ちゃんに会えるー!」
昨日、丸一日会えへんかっただけで食欲も落ちるし頭が痛かった。
待ち受けの名前ちゃんを見ては自分で自分を慰めて。あれは傍から見たらどえらい気色悪い光景やったに違いない。
でも辛いのももう終わり、今日は名前ちゃんに会えるんや。
もーめっちゃ楽しみや!
テンション上がるわー!
まだ電車乗ってへんのかな。
電車乗ったら駅迎え行くから連絡して言うてたんやけど……
電話してみよかな…って俺、焦りすぎやわ!
♪♪〜
「あ、電話きた!、もしもし名前ちゃん?」
《蔵?あの、えっと、》
「電車乗れた?迎え行くな!」
《それがちょっと、》
今から家を出ても駅で待たなあかんのに、いてもたってもおれへんなった俺は家のドア勢い良くを開けた―――……
「……は?」
『はるばる来てやったで白石ー!』
『久しぶりやな、部長の実家』
『き、来ちゃった…』
玄関先には名前ちゃん。…と謙也と財前。
げ、幻覚?
可愛い名前ちゃんの横に要らんもんが2つ見えるんやけど……
『白石何ボーっとつったってんねん!早よ中通してやー』
「ちょお待て…何でお前等が居てんねや」
『暇やったし?』
「阿呆かー!?意味分からへん、早よ帰れ、今すぐ帰れ!」
名前ちゃんは苦笑してるしコイツ等はのうのうとしてるし、どないなこっちゃ!
お前等は呼んでへんねん!!
『蔵ノ介何玄関で騒いでるん?近所迷惑やから…あら?忍足君と財前君?』
「オカンは引っ込んで『白石のオバチャン!久しぶりー!』」
クソボケ謙也が……!
俺をはねのけよった。
『ホンマ久しぶりやねー!むさ苦しいけど中入ってやー!』
『おおきにオバチャン!』
『あら、女の子……?』
『こ、こんにちは』
『まさか蔵ノ介の……』
『ちゃいます、俺のかの「オカン!俺の彼女の名前ちゃんや!!」……チッ』
「舌打ちすな財前!」
『初めまして、急にすみません、』
ホンマ油断も隙もあらへん!
また自分の女や言おうとする財前をどついて名前ちゃんを引き寄せる。
『……………』
「オカン?黙っとらんで何とか言い『退いて蔵ノ介』ぶっ!」
この女、自分の息子押し退けよった……!
ホンマなんやねん!どいつもこいつも俺を何やと思てんねや!
『……良い、可愛い子やん…』
『あ、あの…』
『お父さん!赤飯炊いてやー!蔵ノ介が可愛い彼女連れて来たでー!!』
「オカンウザイ!もう向こう行っとけ!」
恥ずかしいわホンマ……
「堪忍な名前ちゃん…」
『ううん、もっと厳しそうなイメージしてたから逆に安心した』
「ああ…彼女連れて来たん初めてやから浮かれてんねや…」
『本当に!?……嬉しいな』
「………」
はー…可愛い…
めっちゃ癒されるわ……
『白石。俺等の存在シカトすなよ』
『鼻の下伸ばしてキモいですよ部長』
「もうええからお前等は帰れ!」
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