Sincere love | ナノ


 

 story.1
  unexpected a happening (1/2)




いつも笑顔でいたかった

一緒に居て楽しいって思われたかった



ただ、愛してほしかった





Sincere love
story1.unexpected a happening





「……え?」

『だから言ってんだろ、お前と居るのしんどい』

「それ、って…」

『“別れる”ってこと!じゃあな』

「ちょっと、待っ………!」



彼はアタシの言葉に振り向くことなく、フワフワした頭の可愛い女の子と行ってしまった。


“お前のそういうとこ、嫌いだった”

彼が言うソレはアタシ自身痛いほど認める泣き虫なところで反論することすら出来やしなかった。

例えば、デートに行った時。
映画を見たら感動して涙が出て。
少しの言い合いでの喧嘩で涙が出て。
別れ際、寂しくなって涙が出て。

一々慰めるのが面倒臭い、そう言われる度に何度も反省したんだ。
だけど、これがアタシなの。
だけど、彼を愛してた。
だけど、彼はアタシを嫌いだと言った………



「フラ、れたんだ……っっ、馬鹿野郎ーーー!!!」



悔しくて叫びたくなった。
悲しくて、また涙が溢れた。

神様は不公平だ。
何でアタシをこんな性格にしたの?もっとキッパリサッパリした性格だったらアタシは愛されていたかもしれないのに。


もう嫌、今日はゼミなんて受けない、帰って寝る!
そう思った矢先、ドンッ、と肩に痛みが走ってアタシは尻餅をついた。



『痛っ…自分何処見て歩いてんねん!前見て歩かんかい!』



なっ…!むっっかつく……!
なんなのこんな時に!



「ちょっと何それ!自分だって前に人が居たら避けるなりなんなりしたらどう!?」

『はぁ?なんやねんその言い種――……』



涙目のまま、キッと睨んでアタシは来た道を戻るように家路へと走った。



『ちょ、待ち、学生証落として――!…アカン行ってしもた……』



今日は人生で10本の指に入るほど辛い日だった。

家に帰るなり枕を濡らしながら殴ったり投げたりしたことを忘れることなんてないだろう。
そう、思ってた。




  □




「はぁ―……」



嫌よ嫌よと思っていても月が出れば太陽も顔を出す訳で。

泣き腫らして重たくなった瞼を無理に開けて大学へ足を向ける。
出てくるのは溜息ばっかり。



『あ、名前ちゃんやっと来た』

「………は?」

『今日授業無かったら家に押し掛けないかんとこやったわ』



学校の入り口に立った男はアタシを見るなりそう言った。

だ、誰?
笑顔は凄く爽やかでキラキラ光るオーラを纏ったような貴方なんか知りませんが何故アタシの名前をご存知?



『……昨日あれだけ派手にぶつかったっちゅーのに覚えてへんかなー、寂しいもんやな』

「ぶつかった?いつ……………っっ、あーーーー!!昨日の酷い男!?」

『酷いって……まぁええけど』



すらっと伸びた手足、整った顔、無造作だけど綺麗な髪。
こんなイケメンだったの……!

でもそのイケメンがアタシに何の用―――



「まさか…慰謝料払えとか言うんじゃ…」

『まさか。コレ、落とし物』

「え?」



手渡されたは学生証。だから名前……。

たかが学生証だなんて言っちゃいけない。セキュリティ万全の大学はこれが無いと入れない校舎だってある、いわゆる鍵変わりのこれは学生には必需品なのだ。



「あ、有難う…」

『ん、えーよ。せやけど確かに慰謝料っちゅーのもええなぁ』

「え゛?!」



彼は目にかかった前髪をかきあげてニッコリ笑った。

か、格好良い……けど、い、慰謝料って……



『なぁ名前ちゃん?コレのお礼にデートしてほしいねんけど』

「………へ?」

『はい決まりー 俺、白石蔵ノ介ゆうんや宜しくな』



で、デート!?
アタシと!?


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