Sincere love | ナノ


 

 story5.
  lie or truth (1/2)




君が居れば他に何も要らない

僕自身全てを君に捧げる、だから僕以外映さないで下さい





story5.
lie or truth





“隙あったら攻めますから。”



俺に触れる空気が、凍り付くのが分かった。



「ざ、い前…」

『……なんてな。冗談ですわ部長』

「え?」

『京都着くまで暇やし、謙也先輩でもからかってこよかな』



財前は何も無かったみたいにオサムちゃんと謙也が居る後ろの席へと歩いて行った。

冗談?
なんや、ビビらすなや…
先輩からかうとか失礼やわ…



『……………』

「名前ちゃん?」

『う、うん?』

「なんや顔色悪いけど…」

『え?そうかな!光の冗談にビックリしちゃって!本当止めてほしいよね』

「せやな、有り得へんなアイツ」



名前ちゃんの顔が引きつってたんを、俺は見逃さへんかった。

せやけど、その後ずっと普通やったし変に話をほじくりかえすのも嫌やったから財前の言う冗談や、って言葉を信じるしかなかった。




  □




「はー…またどえらい処やな…」

『蔵、これが別荘の規模なの……?』



京都に到着してバスで1時間。

バスから降りた光景はどこぞの城かと思た。



「名前ちゃん、ここは別世界や…」

『だ、だよね…』

『やっと来たのか、てめぇ等』

「跡部!」

『久しぶりだな白石』



白と水色のユニフォームを来て仁王立ちで現れるは、別荘の持ち主貴族跡部。

偉そうな口振りは相変わらずやねんな。
しかもそのユニフォーム、氷帝めっちゃ意識してへん?



『榊監督に頼まれて別荘貸してやるんだ。感謝しろよ』

『ダメ元で頼んだ甲斐があったわー!跡部おおきに』



そもそもこのOB会が実現したのは、偶然にオサムちゃんが榊監督とばったり(しかも大阪で)会ったのがきっかけやったらしい。

中学時代を懐かしんで居酒屋で盛り上がってたら(あの監督が居酒屋とか似合わへん)集まりたいなぁなんて。そこでオサムちゃんは榊監督に跡部の別荘使わせてもらえんやろかと頭を下げたっちゅー話。

結局ちょうど良く跡部も暇を持て余してらしく、俺達氷帝も参加出来るならいいぜ、当たり前だろアーン?と返事が来たらしい。
ええ加減その口癖直らへんのかい。



「まぁ一泊宜しく頼むわ跡部」

『ああ。それにしてもお前等人数少ねぇな』

「せやなぁ、俺ももっと集まる思てたんやけど」

『白石、忍足、財前か。まぁいい、こっちも俺と樺地と忍足しか居ねぇからちょうど良いだろ』

「ダブル忍足か…ややこしいねんな」

『……アーン?女も居るじゃねぇか』



出た生アーン。懐かしいもんや。
名前ちゃんを見ながら跡部は目を細めた。まぁ知らん人が居るんやから不思議がっても仕方ない。



「俺の彼女の名前ちゃんや。勝手に連れてきてしもたけど別にええやろ?」

『名前です!宜しくお願いします』

『問題は無いぜ。ただ…』

「ただ…?」

『ハッ、何でもねぇ。面白くなりそうじゃねぇか』



跡部が何か言いたそうで、しかも不適に鼻で笑たから俺は嫌な予感がしてたまらんかった。


とりあえず部屋に荷物置いて休憩したら元氷帝対元四天宝寺の試合をやろう、とのこと。



『部屋別やん……』



跡部の執事さんに案内された部屋は1人用で。ベッドはダブルやけど。
それじゃあ後でね、と名前ちゃんは笑顔で(やっぱり可愛かった)隣の部屋に入ってしもた。
隣やゆうても……!
俺と名前ちゃんを遮断するこの壁が憎い!



「名前ちゃーん……」



会いたいわ…
5分前まで隣におったのに別部屋とか嫌やー…

ジャージに着替えてベッドにダイブ。
めっちゃフカフカや。これで名前ちゃんが居たら……100%理性もたんな。



「名前ちゃーん!」

『はい?』

「!」



枕に顔を埋めて愛しの彼女の名前を叫んでると、後ろから居るはずもない彼女の声。

驚いて振り返ると、案の定名前ちゃんが。



『ひ、暇だったから…来ちゃった…』



アカーン!!
なんやそれ!めっちゃ可愛い!

しかもTシャツに短パン、その上にジャージはおてる…!
普段の私服もお洒落さんやけど、そのマネージャーと部活生みたいな感じたまらへん!

彼女やからとかそんな欲目やない、誰から見てもこれは可愛えっちゅーねん!



「犯罪やわ…」

『え?犯罪?』

「いや、こっちの話」



こんな変態みたいな事考えてたなんかバレたらアカン。
俺は格好良いとこしか見せたないんや。
せやけど…



「名前ちゃん、おいで」

『!』



俺の言葉に赤くなりながら近寄ってくる彼女。

無性に触りたくなって両手を握り締めた。



『蔵…?』

「名前ちゃん…ぎゅうってしてもええ?」

『う、うん… わっ!』



名前ちゃんの左手を引っ張って引き寄せて抱き締めると、ジャージの洗剤の匂いと名前ちゃんの香水の甘い匂いが漂った。



「はー幸せや…」

『は、恥ずかしいけど、アタシも、幸せ…』

「ホンマに?」

『うん』

「…俺と付き合うてくれて、有難う」

『………』



されるがままやった名前ちゃんが、俺の背中に手を回してきて。
俺、愛されてるんやな。そう、実感した。のに。



『うわー変態ー』

「!?」

『朝っぱらからイチャつくん止めてもらえます?』

「財前!」

『光っ!?』



こんな幸せな一時を邪魔しよってからに。

ホンマ邪魔者やな、なんて思ったら新幹線での一言が頭に過った。
“名前が好きなんで”



「財前、」

『もう試合するって跡部さん言うてますよ』

「あ、さよか…」

『あーここの部屋どえらい蒸し暑くてかなわんわー』



タオルでパタパタ仰ぎながら出ていく財前。

俺の、気にしすぎやんな?
ホンマに名前ちゃんが好きやったら、ここであないにあっけらかんと出来るはずないねん。

うん。もう忘れよ。




  □




「さぁ始めよか」

『天才と呼ばれた俺が相手したるわ』



庭にあるご立派なテニスコートへ行くと、全員が相手出来るように試合が組まれてあって、俺の最初の相手は謙也の従兄弟忍足侑士やった。



『蔵頑張ってー!』

「任せときー」



名前ちゃんがベンチで応援してくれてる。
この試合、絶対負けられへんねん。俺のテニス見といてや。



『ゲームセット』

「さすが氷帝の天才やな。腕落ちてへんわ」

『おおきに。勝たれへんかったわ』

「背負とるもんがあるからな」



オサムちゃんのゲームセットの声に、俺の勝利は決まって名前ちゃんの目は輝いてた。



『蔵、凄い!勝ったね!』

「せっかく来てもろたんやし、ええとこ見せなアカンやろ?」

『うん!格好良かった!』

「おおきに」



俺の中で試合に勝つことなんか当たり前やけど、嬉しそうにしてくれる彼女を見ると凄い照れ臭なって。
名前ちゃんが日焼け予防で被ってたキャップのつばをグイッと押して顔を隠した。



『何するのー!前見えない』

「深く被ってないと日焼けするで」

『日焼け止めも塗ってるから大丈夫だし』

「美人にシミは禁物やからな」

『どういう意味よ?』

「いつまでも俺の為に綺麗でおってってことやん」



冗談混じりにプロポーズめいたことを言うと、また真っ赤になって今度は自分でつばを下げた。
めっちゃ楽しいわ。


その後、樺地と試合をして俺は勝ったけど財前が跡部と試合をして負けてしもた。



『光、残念だったね…』

「せやなぁ…跡部は強いから」

『この後、蔵が跡部君て人と試合するんでしょ?』

「大丈夫や。俺は勝つから」

『うん!』



跡部やから油断してたら勝たらへんけど、名前ちゃんが見てる前や。絶対勝ったる。
好きな女の子にはテニスしとる俺も格好良いって思われたいねん。




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