Sincere love | ナノ


 

 story3.
  the same teste (1/2)




君のその笑顔に
ただ魅せられた

君のその涙に
手を伸ばしたくなった





story3.
the same teste





《財前?久しぶりやな》

「何スか急に」



大学に入学してすぐ、中学のテニス部顧問だったオサムちゃんからOB会するで、と連絡があった。

今でも先輩達とは時々連絡を取り合ってるけど、オサムちゃんと連絡取るやなんてめっちゃ久しぶりで。
それも、また皆でテニスが出来る機会を与えてくれたことが嬉しかった。

白石部長が忙しくて渡せへんかったから宜しく、と頼まれた日程表。
俺の家から部長の家が近いっちゅー理由だけで押しつけられた時は面倒臭くてたまらん思たけど、まぁたまには働いてやってもええかな、と。



「部長これ持っ……お客さん?」

『俺の彼女、名前ちゃん。可愛いやろ?』

『は、はは初めまして!』



明日持って来てもらえると有難いんやけど、と言われて日程表を持って行ったら部長の彼女、名前とゆう女がそこに居た。

女が居てる時になんやねん。
せっかくやったから少し話したかったけど、もう帰ろう思た。
そんな俺を察してか、茶くらい飲んで帰り、と言う部長。
気まずいやん。俺より何よりアンタの彼女が。



「部長といつから付き合ってるんスか?」

『え、部長?』

「白石部長」

『蔵って部長だったの!?ってゆうか何の?』



部長の彼女じゃあ邪険に扱うことも出来へん。俺は適当に話題を振ったら、“部長”とゆう単語に目を丸くした。
テニスしてるん言うてへんとか、どんだけ付き合い浅いねん。

部長ほどの男やったら歳上美人とか捕まえるんもワケ無いやん。別に他人の趣味にケチつけるつもりは無いけど、こんな普通そうな女と付き合うんが不思議や。



「そういえば部長、謙也先輩が行けへんかもって言うてましたよ」

『ハァ?アイツ何考えてねん。アイツほど暇人なんかおらへんやん』

「俺もそう思たけど」

『分かった、連絡しとくわ』

「頼んます」



この間、謙也先輩と電話した時にOB会行けるか微妙やねん、そう言うてた事を思い出して部長に伝えると、彼女は話についていけへんと寂しそうな顔を見せた。

ああ、もうやりずらいねん。
気ぃ使うとか俺の柄ちゃうし。



「アンタも来たらええんやないんスか?」



テニスしてる事言うてないならOB会も知らんやろうけど、話のネタも無いし仕方なく、っちゅー感じで言うてみた。

俺の気遣いなんか気にもくれず、彼女を“アンタ”って呼んだことに突っ掛かってくる部長。煩いわ。
ハイハイ、と適当に相槌を打つと名前さんが話を戻して、部長がOB会について説明した。



『行きたい…』

『ホンマ!?』

『でも、アタシなんかが行って善いのかな』

『当たっり前やん!名前ちゃん来てくれへんかったら俺も止めようか思ってたわ!ホンマ約束な、絶対来てや!』

『う、うん』



ホンマかいな。
この男は彼女が来んと行かんつもりやったんかい。

名前さんの両手をブンブン上下に振って浮かれるその姿は、ホンマに惚れてるの痛感させた。

フーン。本気、やねんな。



『俺、コンビニ行って来るわ!』


日程表を手に、彼女の制止する声も虚しく慌ただしく出て行った部長。
……張り切りすぎちゃう?

取り残された名前さんは首を傾げて俺の方を見た。



『ざ、財前君…』



彼女の口から出た言葉は“財前君”
なんや、嫌な感じがした。



「光」

『え?』

「光でええよ」

『じゃあ、光君?』

「君もいらん」

『……光…』

「なに?」



別に名前で呼んでほしかったわけやない。

名字で呼ばれるんに違和感がしたからや。

別に、深い意味なんてなかったんや。





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