secret number (1/3)
愛やなんて要らんもんや思てた
君に出逢って俺の考え方は100%ひっくり返ってしもたんや。
mission.6,5 secret number
「なんやねんホンマ!」
浪花のスピードスターこと俺は、今日授業中もずっとソワソワしてて。あ、ちゃうな、ウズウズ?どっちでもええか。
とにかく早よボールを打ちたくて打ちたくて仕方なかったんや。
放課後を知らせるチャイムが鳴って、張り切って鞄を肩に掛けると。
『謙也』
「白石ー、なんやわざわざ俺ん事迎え来たん?愛されてんなー!」
白石が教室のドアの傍で俺を待ってた。
つまらん冗談交えると白石が包帯巻いた手で俺の頭ひっぱたきやがってん。
「痛いわ!何すんねん!」
『キショい事吐かすなボケ』
「そこは関西人らしくノリ突っ込みするとこちゃうんか!」
『あないなもんに付き合ってられへんねん』
「はー、冷たいやっちゃ!」
俺は両手でオーバーリアクションを取るけど、白石の言葉にそのまま固まることになる。
『謙也、今日部活休みやから』
「……え?」
『なんや知らんけどオサムちゃんが皆に伝えとけ言うてたで』
「はー!?ホンマに言うてんねんか!?」
『わざわざお前みたいに冗談言いに来おへんわ』
「えー…めっちゃショック…」
部活休み。
あんだけ毎日毎日やってんのに今日に限って。
「あ、せやったら白石、土手のテニスコートで打ち合い『お断りや』」
………。
まだ言い終わってへんっちゅーの。
拗ねる俺をシカトして、白石は用事あんねんと行ってしもた。
今日の白石めっちゃ冷たいー。
もうちょっと俺に優しする心意気はないんか!
ま、文句垂れててもしゃーない。俺は荷物を持って教室を後にした。
せっかくやから家でゆっくりしよか、それとも近所の空地で壁打ちでもしよか、そう迷いながら帰ってる途中やった。前方に見えるは去年同じクラスやった女。
「名前ー!」
『、謙也!』
「何してんねん」
まだこれからどないするか悩んでた俺は気紛れに声を掛けてみたんや。言葉悪く言うと暇潰しっちゅうか。
『見て分かんない?友達と遊んでんの』
「さよか」
そうや。コイツも中々冷たい女やったわ。もう少し柔らかい言い方してくれたらええのにー。
なんだかんだ言うて根はええ奴やねんけど。
名前の友達とやらは違う制服着てて、すぐに他校生と分かった俺は挨拶しよう思た。
「こんにちはー、俺、忍足謙也っていう―――…」
『初め、まして…』
言葉に詰まる、っちゅうんはまさに今この時の事なんや。
名前の後ろからひょっこり顔を出すその子に、目を奪われた。
ああ、
一目惚れってやつやねん……
□
「ホンマお願い!!」
『……………』
あれからあの子の顔が頭から離れへんくて、テニスなんやそっちのけで家で呆たれてた俺。
昨日部活が休みやなかったら。
昨日俺があの道を通らへんかったら。
あの時間やなかったら。
俺はあの子に会えてへん。
もう、これは運命やと思うしかなかってん。
せやから俺は翌日名前を呼び出してあの子を紹介して、と頼み込んでた。
「あ、アカン……?」
『そんなに言うなら花子の学校行って待ってりゃいいのに』
それも考えた。
せやけど待ち伏せしてキショいとか思われたらどうすんねん。
況してや1回チラッと会っただけやねんから、誰?とか言われるかもしれやん。
そんなん俺立ち直れへん……!!
っちゅうか花子ちゃんて言うんや。昨日名前も聞かれへんかったからソレ知っただけでも嬉しい、やなんて俺乙女すぎか?
「ま、待つ言うたって待ってて向こうは迷惑したらアカンやん…?」
『ヘタレ』
「!!」
ヘタレ……
お、俺ヘタレなん……?
そらめっちゃビビってるしヘタレかもしれへんけどそないはっきり言わんでもええやん……!
『……ハァ、』
今度は溜息?うわ、ホンマ傷つくんやけど!
俺の小鳥の様なハートはズタズタや………!
『いいよ、紹介してあげても』
「へ?」
『間抜けな声出さないでよヘタレスター』
どこまで毒舌やねんお前。
でも今、ええよって言うた?
『あの後、花子も謙也の事ばっか聞いてきてたし。認めたくないけど』
「ほ、ホンマに?」
俺の事聞いてたって…
まさか花子ちゃんも……
『多分気に入ってる、アンタの事』
「!!!」
『但し。泣かせたら許さない』
「、何で泣かす事があったりすんねん!」
『一応よ、警告』
そう言って名前は俺に花子ちゃんのアドレスを教えてくれた。
「……………」
俺の電話帳に登録された花子ちゃんのアドレス。
ソレをじーーっと眺める俺。
メール、送ってみよか。
せやけど何て?
“昨日会った謙也ですー、突然メールして堪忍な”
あ、在り来たりや……
「かー!どないしよ!!」
頭をガリガリ掻いてメールを削除。
もっとインパクトあった方がええ思うねん。初めが肝心や言うやろ?
考え込んでると、名前が言うてた言葉が頭に過った。
“学校行って待ってりゃいいのに”
せや。名前からもお墨付きやねん。
ここは勇気出して学校行ってみてもええんちゃう?ヘタレヘタレ言われたままでなんかおれへん。
男見せるとこや!
□
「き、緊張するわ…」
花子ちゃんの学校の門まで来てしもた。
意を決した俺は最後の6限早退して此処まで来た。やって最後まで授業受けてたら此処に来るまでに花子ちゃん帰ってまうかもしれやん。
部活もサボって明日白石にぶちギレされそうやけど今はこっちんが大事や!
「まだ授業終わらへんのかな」
妙にドキドキ言う心臓を右手で押さえながら校舎を見上げてみる。
シーンと静まり返った状態は余計俺を緊張させんねん。
はー、どないしよ、どないしよ!
何て言おか…
とりあえず友達なってほしいねん、でええかな。でもピンとこおへんな…なんて思った矢先、でかい音で鳴り響くチャイム。
「、終わった……!」
5分もせん内に校舎からわらわらと生徒が出て来る。
全く違う制服を着てる俺はジロジロジロジロ見られてて。
視線が痛いねん……!
せやけど負けへんど!
『え?もしかして、』
「!」
握りこぶしを作った瞬間後ろから声がして。
聞き覚えのある声に振り返ると、
「花子、ちゃん…」
『やっぱり謙也君だ』
ニコッと笑う花子ちゃんが居た。
なんちゅうかその微笑みが女神みたいに見えんねんけど!
俺の名前覚えててくれたんやな…謙也君、やって!照れるわー!
『どうかしたの、こんな所で』
「ひ、人待っててん…」
アカンわ、バリバリ緊張してきた……!
『そうなんだ、知ってる子だったら呼んでくるよ?』
「かかかかかまへん!」
『でも、』
「ちゃちゃちゃうねん!ま、待ってたん花子ちゃんやから、」
滑舌わるー……
『え?アタシ……?』
「せ、せや…」
ビシッと言うたれ俺!
早よ言うんや!此処に来た理由を!会いに来た理由を……!
「あ、あんな……」
『うん?』
「俺、おおお俺と、」
『?』
たった一言友達になってほしいねんって言うたらええねん!!
「俺と付き合うて下さい!」
『、え?』
「……え、」
俺の阿呆
まだお互い何も知らへんのに何が付き合うて下さいや。
阿呆や阿呆や阿呆や……な、泣きたい。
『えっと……』
「いや、花子ちゃん、あの、」
『アタシで、いいのかな…』
「へ?」
『アタシで構わないなら、お願いします……』
「……………」
お願いします、って事は……
まさかのオッケー?
へ、ホンマに?ホンマのホンマのホンマ?
『何も知らないから、これからアタシの事、幻滅しちゃうかもしれないけど……』
大した女じゃないけどいいかな、なんて控えめな彼女を見ると、ふつふつと熱い感情が沸き上がってきた。
う、嬉しすぎる……
「俺かて、大層な男やないねんで…?」
『そんな事ないよ、素敵な人だと思った。直感だけど』
「………、よっしゃー!!!」
予想だにしなかった展開に大声張り上げて俺はガッツポーズ。
この子を知る度気持ちは膨らむ、絶対離さへん。そう思たんや。
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