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 01.



『名前ー!ドリンクとタオル頼むわー』

「はーい!」



人数分のタオルとドリンクを抱えて皆の元へ行くと、おおきに、と受け取ってもらった。

全国大会まで後少し。
選手でもない監督でもないアタシはこんな事くらいしか出来なくて。少しでも皆の役にたちたいのに。



『美味いわー』

『やっぱり名前が作るスポドリが1番やな』

「ただ混ぜるだけなのに大袈裟だよ」



こうして皆の笑顔見るだけで元気になれる。この為にマネージャーになったといっても過言じゃない。



『大袈裟やあらへんよ』

「蔵、」

『名前が作るから美味いんや、コイツ等が作ったって同じ味でも美味いと思わんわ』

「アハハ、何それー」



白石蔵ノ介。

アタシをマネージャーに誘ってくれた人。

友達作りの下手なアタシは学校でいつも1人だった。そんな落ちこぼれのアタシに笑いかけてくれた人。


“なぁ、俺のこと蔵って呼んでや”


あの時から蔵はアタシの中で特別になった。




  □




『名前、部日誌書けた?』

「ごめん、まだ。蔵は先に帰ってていいよ?」

『何言うてるん。遅なった時は送るって言うたやろ』

「大丈夫なのに」

『女の子は甘えとくもんやで?』

「……有難う」



マネージャーになった初日、遅くなる時はちゃんと送るからって言ってくれた。今もその約束は一度も破られたことはなくて。
悪いなぁ、なんて罪悪感を感じる反面嬉しくて仕方ないんだ。



『あんな、話あんねん』

「ん?どしたの改まって」

『……俺、』

「うん?」

『っ、俺と付き合うてくれへん、かな…』

「……え?」


『ホンマは一目惚れやってん…初めてお前に声かけた時から』



一目惚れ…?アタシに…?

夢、かな。こんな都合いいこと、現実に起こるはずない、じゃない?



「……………」

『名前?』

「……………」

『駄目なら、駄目って言うてくれたんでええんやで…?』

「え、いや、違うの!」

『違う?』

「………夢、じゃないかと思って、ずっとアタシの片想いだと思って、たから…」

『………名前、夢やないで。俺が名前のこと好きなん、現実やもん』

「く、ら…」

『せやからちゃんと返事、ちょうだい?』

「、アタシも蔵が、好き…」



良く出来ました。
そう言って蔵はアタシのおでこにキスひとつ。



「く、蔵……!」

『ブッ!めっちゃ真っ赤なってるで!』

「だって!あんな……!」

『ええやん。ほな帰ろう?』

「う、ん」



ヤバイ。アタシ、今超幸せ。
叶うはずないって思ってたから。想うだけ、それだけで十分だって思ってたのに。
こんなに幸せでいいのかな。



「あれ、アタシ鞄どこに置いたのかな、」

『鞄?今日部室掃除するー言うて皆のもまとめてロッカーの上置いたやん』

「あっ、そっか!そういえばそうだった」

『ボケるんはまだ早いでー?』

「アハハ!ボケてなんかないよー」



この時のアタシは、目の前の幸せしか見えてなくて。

これから起こりうる事の前兆だってことに気付きもしなかった。


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