D/O/Y | ナノ


 


 act.7 (1/3)



いつもと同じ道。
華やいで見えるのは横に君が居る。
ただそれだけ。





「家、同じ方向なんじゃな」

『だね、意外と近くでビックリした!』



ブンちゃんが保健室から出て行った。

名前がオサムちゃんにキスされとるんを見て、
名前がオサムちゃんを好きじゃと言って。

そりゃ逃げたくなるのも分かる。

俺は気付いとった分、覚悟が出来とったからやっぱりな、っちゅー感じやったが。
でもやっぱりいざ本人の口からソレを聞くのはショックを通り越して虫酸が走った。

じゃけど、ブンちゃんがおらんなって俺まで逃げるんはさすがに、な…



『ねぇねぇ仁王君、帰り道にあるアイスクリーム屋さん知ってる?』

「あー…車で移動販売しちょるやつか」

『そうそれ!』

「食べたいん?」

『…うん、食べて帰ろう?』



駄目?
上目遣いでそんな風にお願いされて断れるわけないぜよ…



『いらっしゃい、何にします?』

『えーとアタシは…バニラチョコ!』

『270円です』



名前が財布を取り出そうとするのを止めて金を出す。



『え、仁王君!駄目だよ、アタシ自分で出す―』

「ええんじゃ、財布しまっとき」

『でも、』

『お姉さん、彼氏が出してくれるって言ってるんだから恥かかせちゃ駄目だよ』

『は、はぁ………』



店員にそう言われておずおずと財布をしまう名前。

彼氏、か…
それが本当ならどれだけ嬉しいことだろうか。



『有難う、仁王君』

「うん」

『いただきます』



美味しいーって言いながら幸せそうに食べる名前は何処かブンちゃんと似とるなーなんか思う。

まぁ可愛さが全然違うけどな。



『仁王君も買えば良かったのに、美味しいんだよ?ここのアイス』

その顔見たら分かるぜよ、本当に美味いんじゃろう。

それにしても…

名前がアイスを食べる姿。目がいくのは口元。
さっきの、オサムちゃんとのキスが頭に浮かんでしょうがない。



『あれだったら一口食べる?』

「…いいんか?」

『どうぞ!って言っても仁王君が買ってくれたんだし』



普通にキスシーンを見るより、リアルに感じた影のシルエット。



『仁王く――――…』

「……………」



アイスを持つ手を引っ張って食べたもの。

それは名前の唇。



「…うん。美味い」

『に、仁王、君…!?』



口をパクパクさせて状況を理解しきれてないアイツ。
急に悪いとは思うけど、生憎俺はあんなものを見せられて黙って見過ごすほど、



「出来た男じゃなか」

『…え?出来た、男…?』

「名前、俺お前さんが好きじゃ」

『――――……』

「オサムちゃんなんか止めて、俺にしんしゃい…」



ボトリ、と音をたてて落ちたアイスなんて気にもくれず名前はただ呆然としとるだけじゃった――


(200806/20120211)


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