act.2 (1/5)
昨日寝る前に届いたメールは、大した用件じゃないにしても思わずはにかんでしまう内容だった。
from:丸井ブン太
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今日は楽しかったぜぃ。
また飯食いに行こうな。
後、俺のことはブン太で
いいから。お前とは仲良
くなれそうだからよ!
じゃ、名前おやすみ
from:仁王雅治
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今日はどうもな。
明日からも宜しく。
* * *
あー、緊張する!
昨日メールでアイツのことを名前って呼んだ。
名字でなくて名前で。
……ってことはよ、ってことはよ?
普段から名前で呼ぶ、みたいな!
俺も名前で呼んでほしかったし、俺もアイツの名前呼びたかったんだけど……
『あっ、おはよーブン太!』
「!!」
『ブン太?』
「…おっ、おお、おは、よっっ!!」
“ブン太”
何事もなく自然に呼ばれる俺の名前。すんげー、くすぐったい。
名前を呼ぶにも、いざ目の前に本人が居ると上がっちまって挙動不審。
………な、情けねぇ俺。
昨日イメージトレーニングしたはずなのに。
『どしたの?』
「何でもねぇ、ちょっと噛んだだけ」
『アハハ!変なのー!』
「うるせぇよ」
そんな時、タイミング良くか悪くか、予鈴が鳴って教室へ向かった。
…とはいっても、教室に行ったって席は隣同士で超いい感じじゃん。
とにかく、今日は自然に名前呼べるようになるってのが俺の目標。
□
《ブン太、ブン太!》
「!」
授業中、俺を呼ぶ小さな声。
顔を見なくても分かる、名前の声なんて。
《何だよぃ?》
《消しゴム忘れた、貸して?》
《…ほい》
《有難う!》
消しゴムを渡すなり、ぱぱっとノートの誤字を消して俺に消しゴムを返そうとする。
《……やる!》
《え?》
《名前、今日消しゴム無いと困るだろぃ?俺、もう1コ持ってるし、》
《本当?いいの?》
《いいって言ってんじゃん》
《有難う!ブン太超良い奴!》
やべ、超可愛い。
名前の為、だなんて言っときながら俺の物を持っててほしいっつー独占欲なのに。
ぎゅっと両手で消しゴムを握って笑顔を向けるアイツ。
マジ可愛くて。授業なんて聞いてる場合じゃないって思った。
俺、昨日より確実にコイツに惚れてる。
はっきり、
好きだ
って思った。
(2008/移動20120211)
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