D/O/Y | ナノ


 


 act.1 (1/4)



昔、何処かで聞いたことがあった。
“恋とは麻薬と同じもの、相手に依存してしまう薬”なんだと。

幾ら何でも大袈裟だ、なんて思っていたけれどあながち外れではなかったらしい。


 ………………………………


「はぁ…」


今年赴任した学校はテニスを筆頭に部活動が盛んな学校で、県外から来た俺も勿論知ってるところやった。
これまでは大阪で中学校の教師をしていたのにも関わらず高等部の教師に、それも早速1年の担任って。地元の大阪から神奈川なんやえらい遠いし、些細ながらもショックを受けた。
ただ、四天宝寺でテニスの顧問をしてただけあって立海大付属という常勝の名を持つ学校に興味があったのも事実。

そして今日、間もなく始まる入学式の為に教師の列からほんの少し外れて体育館へ向かった時やった。


『あら?あそこの物影、生徒ですかね』

「あー、俺が呼んできますよ」

『お願いします渡邊先生』


体育館へ続く廊下から見えた人影は桜の下でゆらゆら揺れる。
生徒はもう体育館に集まってても可笑しくない時間や言うのにサボりなんやろうか。
溜息を堪えながらゆっくりソレに近付いて声を掛けた。


「オイ、1年生か?早よ体育館行かんともう入学式―…」


“始まるで?”
ソレが振り向いた瞬間、この言葉は口から出えへんかった。


『―ー、スミマセン今から行くとこ』

「あー…早よ行き…」


ただ、彼女が綺麗やと思った。
幾つも歳の離れた高校生、教師から見たらまだまだ子供の学生、やのに。


「…アカンわ、」


赴任早々この学校で全うな教師が出来るか不安になった初日。
俺は半笑いで、さっき堪えた筈の溜息を嬉しいような切ないような何とも言えへん情感に変えて吐き出せば、彼女を追うように体育館へ入った。
あ、名前聞いとくべきやったな、なんて思ったのは数秒後。


(200806/修正移動20120210)


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