庭球日常 | ナノ


 


 1. 跡部景吾の場合



ふっと思った事がある。
氷帝でテニス部マネージャーをしていると見たくない一面を見てしまったり、毎日顔を合わせるもんだから慣れで忘れてしまうけど、本当は皆イケメンなんだ。
性格はそれぞれ短所が目立つ気がするけど、顔だけ見れば基本的にイケメン属性なのだ。それに多分要領だって良い。多分。

だとするとあれだ、多少の事は眼を瞑ったとしても今から唾をつけて将来の旦那候補にするのが賢いんではなかろうか…
そうだよ、そう思ったアタシ賢い。


『名前!何ボケッとしてやがる!さっさとボール持って来い!』

「うん?跡部?」

『アーン?人の話し聞いてんのか?』


跡部、跡部ね…
跡部だったらまずお金に困る事は無いし…恋愛と違って結婚にはお金が必要不可欠だって言うもんね。それなら悪くないかも…
ただ問題は一緒に生活していく上での話しだよね、何せ跡部とアタシはあらゆる感覚が天と地ほど違うんだから。


「ねえねえ、跡部って普段どんな生活にしてるの?」

『は?お前何言ってんだ?』

「だから!参考まで教えてって!」

『……なるほどな。お前の考えくらい俺様にはお見通しだぜ!アーン?』

「じゃあ早く答えてよ」

『フッ、お前は何の心配もしなくて良いんだぜ?』

「え?」

『大丈夫だ、誰も他の女を連れこんだりなんてしてねえよ』

「は?」

『名前も見かけによらず意外と可愛いとこあんじゃねえか、アーン?』


果たしてこの男は何を言ってるんだろうか。右手を顔に翳してインサイトしてる筈なのに会話が成り立たない。それに可愛いって言われたって見かけによらず意外と、なんて付けられると嬉しくも何ともないんですけど?

でもそれって…
もし跡部と結婚する事になったら、お金はあったとしても、こんな上手くいかない会話のキャッチボールを一生続けていかなきゃいけないって事になる。
例えばアタシが、仕事の終わる時間を聞いたとすると、

『ハッ、そんなのお前が心配する事じゃねぇ』

なんて今みたいな返答になり兼ねない。ただ何時までゴロゴロ出来るのか、それを確認しておきたいだけなのに。
それに逐一指パッチンで『俺様の仕事ぶりに酔いな』『俺様の旦那っぷりに酔いな』『俺様の子作りに酔いな』『全身の毛穴ぶち開けて俺様の子供を産みな』だなんて言われたら堪らない。寧ろ居たたまれない。
加えつきに跡部の将来は樺地まで付いてくる気がする。申し訳ないが、跡部と新婚さんいらっしゃいのようなラブラブ夫婦を演じられる自信は無いけども、樺地が居るなら尚更だ。

アタシは樺地が好きだし、跡部とひたすら2人きりで過ごすよりは樺地が居てくれた方が空気が和んだり、会話のキャッチボールが出来ない事に苛々するのが半減しそうではあるけど…だけどアタシはお金があって日中、働かないならゴロゴロダラダラ怠け者として生きて行きたい。そこに樺地が存在するとゴロゴロするにも遠慮が出ちゃうに決まってる。
まあね、主婦にだって家事というやらなきゃならない事がある訳で(跡部家には不必要かもしれませんが)仮にそこは譲ったとしても…跡部の間抜け発言に文句も言わず『ウス』って返事をする樺地を見れば不憫に思うし、それを良い事に『樺地、今日も俺様は決まってたか?』とか調子こく跡部にもっとムカつくに違いない。


「…やっぱり無いわ、跡部って。無い無い無い絶対あり得ない!」

『っ!?』


身勝手な妄想ながら不快を感じたアタシは青くなった跡部をシカトして、ドリンク用の高級ミネラルウォーターを水道水に入れ換えてやった。



(20111026)

適当に数名増える予定です。


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