見た瞬間、ビビっときた。
一目惚れなんて乙女チックで可愛らしいものを私はしたことがないけど、そのとき思った。彼を初めて見たのは男子バスケットボール部のレクレーションだった。
くせっ毛なのかふわふわとわたあめのような髪の毛。蜂蜜色で、とっても甘そうだ。多分、その髪1本1本が細くて絡まりやすいんだろう。目はぱっちりしていて、大きい。ふと私は彼のその目を見て、猫みたい、と思った。ちょっと…、いや、かなり物騒な言葉を吐き出している口はとても整った形をしている。カサついているのか、潤っているのかは、分からない。触れてみたいなぁ…。身長はバスケ部内でも高い部類に入る。その身長の割には細い。ちなみに容姿だけじゃない。学力だって上から数えた方が断然はやい。勉強については監督のお墨付きだ。まだ少し高めの声で私の名前を呼ばれたときは自分の顔が火照っていないか心配で心配で仕方がなかった。アイドルオタクなところもギャップで可愛らしくて、きゅんとしてしまう。しかも、彼の推しメンは私が推している子でもあったので、親近感が湧いてしまった。
要するに、なにが言いたいのかというと、私は宮地清志が好き。ということだ。
さっきも言ったのだけれど、私と宮地先輩が出会ったのは部活のレクレーションだった。出会った、とはいっても私の一方的なことだけれど。宮地先輩は私のほうはみていなかった。最初、部活は帰宅部にするつもりだった。理由は2つ。ただ単に面倒なのと、高校生になって格段にレベルアップするであろう勉強をしなくてはならないというものだった。しかし、だ。そのレクレーションを見たとき、すぐ手元にあった入部届けに男子バスケ部、と書いてレクレーション終了後、すぐに担任の先生に提出した。ちなみに、クラスで一番だったらしい。だって、仕方ないじゃないか。これが運命なのか。と、柄にもなく1人心のなかで思ってしまったのだから。担任の先生には何度も「これでいいのか?」と問われた。東の王者と謳われる秀徳高校男子バスケ部だ。選手でなくとも体力なども必要だろう。先生はそれを心配して言ってくれていたのだ。だが、あいにく私にはほかの部活の選択肢はなかった。ぶっちゃけ、レクレーションの男子バスケ部以外の紹介は覚えていない。


「…!宮地先輩!」

「おう、お前か。」


そういって彼はいつも僅かにほおを緩める。私は中谷先生に頼まれていた連絡を彼に伝えた。宮地先輩はさんきゅ。と私の頭にポン、と手をおいて行ってしまった。嬉しいのと恥ずかしいのが混ざった感情で心がみたされる。
そろそろ教室に戻らないと。予鈴まであと3分だ。司会の端に高尾君をみつけた。彼は私に来るようにジェスチャーをしていた。まるで、こっちに来い。といったように。


「高尾君、なにか用かな?」

「ちょうど良かった!さっき宮地サンと話してたよな?」

「うん、連絡があったの。今日は最初に外周だってさ。」

「げ、そーなんだ。あのさ、これ、宮地サンに渡しといてくんね?」


ほい、と高尾君に手渡された紙袋の中を覗いてみるとTシャツが入っていた。


「これは?」

「実はさ、学校で洗濯したやつ間違えて持って帰っちゃってさー。」

「そうなんだ。おっけ、任しといて!」

「さんきゅーな。」


可笑しいな、ただTシャツの入った紙袋を抱えているだけなのに。それだけなのになんだか甘い気持ちになる。恋する乙女パワーはすごいなぁ。と小さく呟いてさっき来た廊下を引き返す。
そうだ。水かポカリでも買っていこう。


(20131230)



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