▼君の背丈を抜かしたら
「いつか、お前の背を抜かしたら、そのときは」
そっぽを向いたまま、彼は言った
あまりに小さい声だったから聞き違いかと思ったけれど、彼は確かにそう言った
イナズマジャパンFFI優勝
喜びに沸き立つ選手達の仲で、何と豪炎寺先輩が木野先輩に告白!!
でもこの2人、何となくそんな感じはしてました!!
心が繋がってる2人って言うのは、優しい雰囲気を醸し出すものです
そして驚きなのはお兄ちゃん
夏未さんとまさか、そう言う事になってるとは…
私とした事が…
でも夏未さんとお兄ちゃん、お似合いです
夏未さんなら、お兄ちゃんのあの俺様体質を矯正してくれそう!
楽しそうで、嬉しそうで、幸せそう
まだ中学1年生の私には遠い世界の様に感じて…それでもちょっぴり羨ましい
「…いいなあ」
思わず口を突いて出てしまった言葉
私は慌てて辺りを見回して、誰かに聞かれてないか、窺った
「………」
其処にいたのは彼
聞こえちゃったかな
一番聞かれたくなかったヒトなのになあ…参った
何か言った方がいいかな
でも、ああ、どうしよう
「…いろいろありがとな」
ぼそっと木暮君は呟いた
「今まで、…キャラバンで、回ってた時から」
「どうして今そんな事言うの」
「今言いたいから」
そうよね
そう、分かってる
これで、おしまい
FFIが終わったら、本当にもう会えなくなっちゃう
「俺天邪鬼だから、言いたい時に言わないと、次にいつ言えるかわかんねーし」
「………」
私達は二人並んで、メンバー達のはしゃぐ姿を眺める
「もう、会えないのかな」
「わかんねー」
ぽろ、と涙が一粒溢れた
嫌だ泣くなんて
私らしく無いじゃない
「泣くな」
「分かってるよ」
木暮君はちらりとも私を見ないくせに、どうして私が泣いてるって分かるのよ
そう聞きたかったけれど、声を出したら今よりもっと涙が出てきそうだから止めておこう
「俺はお前が大切だと思う」
「えっっ!!」
突然の事に驚いて私は木暮君を見た
けれど彼はぷい、と顔を逸らした
「思う、だよ、良く、分かんねーから…今はそれだけだ」
「……」
そんな風に誤魔化して、ずるい
ずるいけど、木暮君にしてみたら、凄く頑張ってる方かも知れない…かな?
「けど、多分」
そこで一度言葉を切ると、木暮君は息を吸って、吐いた
やだ、何だか心臓が痛い位ドキドキしてる
どうしよう…
「いつか、お前の背を抜かしたら、そのときは」
そっぽを向いたまま、彼は言った
あまりに小さい声だったから聞き違いかと思ったけれど、彼は確かにそう言った
「ちゃんと好きって言ってやる」
そう言って木暮君は壁山君の所へ走って行ってしまった
何よそれ
何よそれええ!!
でも、でも、嬉しい!!!
私は涙を拭うと思い切り言ってやった
「いつかってどんだけ待たせるのよ!バカ!!」