▼ハロウィンの悪戯
昨日がハロウィンで、メンバーの連中が何やら騒いでいたのは知ってたけど、俺はそういう騒がしいのは嫌いだし、苦手とも言える
だからさっさと部屋に戻って寝ちまった
……で、だ
早朝目覚ましが鳴るより早く、誰かに揺すり起こされて、俺は目が覚めた
「お前ッ」
「し」
唇の前に人差し指を立てて俺を睨むこいつは一体俺の部屋に何しに来たんだよ!
「なんッ…」
「だって明王君昨日早く寝ちゃうんだもん」
「ああ?」
「せっかくハロウィンパーティーしてたのに」
「あんなもん出てどうすんだよ…馬鹿じゃねーの」
「楽しいじゃない」
そんな文句を言いにわざわざ来たのか?
「俺達は世界一になる為に此処にいるんだぜ?余計なイベントはいらねーよ…だいたい『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ』なんて中学生が」
……………
「どうかした?」
俺はそれを言葉にしようかどうか迷った
こいつがどういう反応するのかだいたい分かるからだ
でも
しかし
やっぱり
けれど…
あ゙あ゙!チクショー!
「冬花」
「ん?」
「お前…誰かにい、悪戯され、た、とかねーよな…」
すると、案の定…冬花はくす、と笑って「どうだったかな…」と苛つく事を言って来やがった…!
「気になる?」
「べ、別に!!」
「そう?」
「………まさかお前木暮あたりに何かやられたんじゃ」
「そんな子供の悪戯」
子供の悪戯?
ッてどういう意味だ?
「明王君顔青いよ?」
「う、うるせ―…」
ま、まさか…悪戯と称してメンバーの誰かにキスとか迫られたりしてね―………だろうな!
「そんな事ないよ」
「ああ?何だって?」
「キスなんか迫られてないよ」
「そ、そんな事一言も言って「声に出してさっき言ってたよ」」
「う、嘘だ」
「嘘言ってどうするの…恥ずかしいじゃない、そんな嘘」
「……ッ」
目の前の冬花は呆れた顔で俺を見やがる…
「そんなに心配なら、昨日寝ないで私の傍に居てくれれば良かったのに」
「は…」
じっと俺を見詰めるその瞳が何を言いたいか、俺はやっと理解した
「……だって夏未さんも秋さんも、鬼道君と豪炎寺君と楽しそうにしてたんだもん」
「……そうかよ」
俺はベッドから出て、胡座をかいた
冬花はそんな俺の傍に腰を下ろす
「わり―…」
「……うん」
ちょっとした罪悪感が俺を襲う
自分の髪をかき上げながら、俺は「あー…」と言葉に詰まった
けど、…
「悪戯、してやろうか」
「………お菓子、欲しくない?」
「そんなもんいらね―」
冬花の腕を掴んで引き寄せると、俺は素早く唇を重ねた
朝っぱらから何やってんだ、とか自分で思いながら、それでもいつの間にか…俺は夢中になった
「また、後でね」
ふふ、と嬉しそうに微笑んだ冬花が部屋を出て行くと…思わず溜め息が漏れる
何だか、何もかも、あいつの思惑通りになっているような、そんな気がする…
「けれど、まあ、…」
それでもいいか
そんな事を考えながら、独り笑う
丁度その時、セットしていた目覚ましが鳴って、それを止め、俺は勢い良くカーテンを開けた