▼拍手文6 夏未総受け
(半)「俺もう一度雷門のメイド服姿が見たい」
それは文化祭でサッカー部が何をするか、部員達で意見を交わしている時に半田がぽつりと言った言葉だった
(鬼)「ム…なかなか良い意見だな半田」
(風)「たまには良い事言うな!」
鬼道と風丸に褒められて、半田は得意気な顔をする
(マ)「雷門が『お帰りなさいませ旦那様』って言うのを今度こそ聞いてみたいよな」
(豪)「以前は絶対言わなかったからな」
(円)「でもさあ、どうやって夏未にOK出させるんだ?」
(鬼)「確かに…メイド服姿になるのはマネージャーだけで、俺達は裏方になってしまうからな」
うーん、と一同は唸り息を吐く
(虎)「劇とかどうですか、白雪姫とかー」
(栗)「白雪姫でヤンスか…」
(壁)「あれなら登場人物が多いからいいかも知れないっス」
(少)「でもあれ最後の方にキスシーンありますよね」
(宍)「とても許可してくれるとは思えないですけど」
少林と宍戸の言葉にハッとした他の部員達は、一斉に黙り込みその場は一瞬しーんとなった
(鬼)「目的達成には困難が付き物…必ず雷門に認めさせてやるさ…」
(円)「白雪姫役は夏未だろ?」
(豪)「異論はない」
(風)「当然だろ」
豪炎寺と風丸の顔がやや赤い
(染)「みんなそれでいーんだろ?」
染岡の問いに他の部員達が一斉に頷いた
(半)「じゃあ、…王子役は誰が…」
おずおずとそれを半田が口にした時、部室は異様な熱気で一杯になる
「俺だ!!」
鬼道、風丸、豪炎寺、円堂が同時にずいと前に進み出る
(半)「お、俺も!」
(虎)「俺もやりたい!」
(影)「……」
影野が口を開こうとした時、円堂が満面の笑みでこう言った
(円)「影野は義理の母親が変身した林檎売りのおばあさん役がイメージピッタリだよな!」
(風)「おお、いいなそれ!」
(影)「そんな目立つ役を?」
影野が嬉しさに震える横で、更に円堂が続ける
(円)「風丸はその意地悪な義理の母親」
(風)「何で俺が女役なんだよ!!」
(円)「何か似合いそうだから」
風丸がぶるぶると震える拳で円堂を殴りそうになっているのを必死で栗松が押さえている
(栗)「落ち着いて下さい風丸さん!」
(風)「落ち着いてられるか!」
(鬼)「では聞くが円堂お前は何だ」
(円)「俺?俺は王子様!」
(豪)「無理だ円堂、王子様はイケメンって決まっているんだぞ」
(鬼)「そうだぞ円堂、お前は小人の1人がお似合いだ」
(円)「えー…」
ちょっぴり心外だな、と言うような表情の円堂を丸っきり無視して、マックスが口を開く
(マ)「小人って7人だよね」
そう言いながらマックスが指を折ながら人数を数えている
(マ)「少林、栗松、宍戸、虎丸、染岡、半田、俺、影野、風丸に円堂、豪炎寺、鬼道…と壁山は小人って感じじゃないよなー、あとは目金か」
(半)「体がでかいから王子様の馬とか…」
(鬼)「馬は1人じゃ無理だろう」
(豪)「染岡、いや、染岡は小人がいいかな」
(染)「何でだ!馬も嫌だが小人も嫌だ!」
(マ)「だって染岡おっさん顔だし…小人の中にいつも怒ってる顔してたヤツいたよな〜あれ」
(虎)「いましたいました!」
虎丸がアハハ!と笑うと傍らで憤怒の形相の染岡がぎろりと虎丸を睨みつけた
(鬼)「馬はいいから、壁山は森の動物のクマ役でどうだ」
(壁)「何でもいいっス!役があれば…」
(半)「風丸が義母、影野がおばあさん…壁山がクマ」
(鬼)「お前はどうしたいんだマックス」
(マ)「俺は王子様のお付きの人でいいよ、王子様は豪炎寺か鬼道じゃない?やっぱり」
(鬼)「フフン流石だなマックス、悪いようにはせんぞ…」
(半)「何だよちくしょう…小人は、少林、栗松、宍戸、円堂、虎丸、染岡…俺?目金は?」
(豪)「目金は王子様のお付きBってところか」
(目)「お付き、僕が?」
(鬼)「不満か?」
(目)「いえ…」
(円)「あとは豪炎寺か鬼道のどっちかが王子様かよ」
ちぇ、と言いながら円堂は鬼道と豪炎寺を眺めた
(豪)「まさかそのままで出るつもりじゃ無いだろうな鬼道」
(鬼)「愚問だな豪炎寺…」
そう言うと鬼道はゴーグルを外し不敵に笑った
その笑みを見詰めて豪炎寺もニヤリと笑う…
(半)「何だよ勝手に決めやがって、本当にいいのかみんな!」
半田がそう言うが、誰も半田に賛同せず、半田はキョロキョロと皆の顔を見回した
(豪)「不服か半田」
(鬼)「ならばお前は小人ではなく森の木にしてやる…台詞は一言も無いぞいいな分かったな?」
(豪)「空いた小人役には、俺か鬼道のどちらかだな…、マネージャーは可愛い森の動物役だ、勿論台詞つき」
(半)「そ、そんな!」
青い顔の半田を余所に、風丸が突然叫んだ
(風)「ちくしょうこうなったら思い切り意地悪な義母役をやってやるぞ!」
(栗)「し、白雪姫…夏未さんはきっと似合いそうでヤンスよね!」
栗松の言葉に一同がぽや〜んとした表情になる
頭の中で夏未の白雪姫姿を妄想しまくっているのだ
そして皆一様に…最後のキスシーンを思い浮かべ…
(風)「やっぱり納得出来るか!公平に何かで勝負しようぜ!」
(円)「そうだそうだ!」
その声に他の部員達も俺も俺もと声を挙げ、鬼道と豪炎寺も仕方なく賛同する
(鬼)「何てことは無い…勝負に勝てばいいんだからな!」
(豪)「強い者が弱い者を制す…これぞ男の戦いだ…」
(円)「俺は勝って夏未とキスしたい!」
(半)「本当にする訳じゃないだろ!」
(マ)「でもさ…顔を近づけすぎて寸止め出来なかったって事も」
(虎)「ありますよね!」
(半)「わあッ風丸が鼻血出した!」
(栗)「風丸さん!」
(染)「バッカ野郎…そんな卑怯なこと…」
(鬼)「いや、…もしそうなったとしても…誰もそれを知る事はない」
(豪)「雷門の性格を考えても、それを口外しないだろう…文字通り2人だけの秘密だな」
秘密、と言う言葉にすっかり舞い上がった部員達が練習も忘れて大騒ぎする中…
(夏)「もう、貴方達何やってるの?」
部員達に緊張が走った!
其処に円堂が歩み寄る
(円)「文化祭、サッカー部で何やろうか決めてたんだぜ!」
(夏)「…それで何に決まりそうなの?」
(円)「白雪姫!」
(夏)「白雪姫?」
(円)「夏未が白雪姫だぜ!」
(夏)「え?」
そのやりとりをハラハラしながら部員達が見つめている
どうか円堂が余計な事を喋りませんように!と願いながら
(円)「今王子様役を誰がやるか揉めて…」
其処まで言った時、豪炎寺が円堂の口を塞いで風丸が羽交い締めにし、鬼道が円堂と夏未の間に割って入った
(鬼)「ま、そういう訳だ…許可が下りるよう取り計らってくれ」
(夏)「分かったけど…期待しないでね、寸劇は競争が激しくて、体育館が争奪戦なのよ」
(豪)「其処を何とか頼む、みんなやる気満々なんだ」
うんうんと頷く部員達の頭の中は野望で一杯…そんな事を露とも知らない夏未は「分かったわ」と頷く
(夏)「早く練習しないとダメよ」
(一同)「ハーイ」
夏未が部室を出て行くと、穏やかだった部員達が戦闘モードに突入する
(染)「じゃあ何で勝負するかぁ!」
(鬼)「やっぱりサッカーで勝負か?」
(半)「牛乳何杯飲めるかとか」
部員達がわいわいと騒ぐ
だが彼らは知らなかった…
この後行われた抽選にサッカー部は外れ、野望が潰えてしまうことに…