▼拍手文5 夏未総受け
(半)「なんだって!!」
半田が部室の机をバンと叩き、鬼道がうるさそうに眉を寄せた
(鬼)「うるさいぞ半田」
(半)「だってこれが驚かずにいられるか?」
(豪)「まあ半田の言い分も分かる」
(円)「あの夏未が、リレーの選手なんだもんな」
(染)「雷門は速いのか?風丸」
(風)「女子の走っている所は見たこと無いんだよな」
(鬼)「女子が走っている時は、男子は男子で別なことをやっているしな」
近く開催される雷門中体育祭
1年生から3年生までクラス別に色分けされ、点数を競う
3年生は鬼道、風丸、夏未が同じクラスで赤
円堂、豪炎寺、秋が同じクラスで青
半田、染岡、冬花が同じクラスで白
マックス、影野、目金が同じクラスで黄色だ
(栗)「でも夏未さんの走る姿なんてもう二度と見られないでヤンスね」
(少)「貴重だよな〜」
(宍)「怖いような、楽しみなような」
(壁)「なんかドキドキするッスね」
(虎)「わくわくしますよね〜夏未さんが走るなんて」
(円)「ウチのクラスだと、秋がアンカーなんだぜ」
(マ)「ウチでは久遠だな」
(鬼)「ウチでは…何と雷門なのだ」
思いがけないマネージャー同士の戦いに、一同「おお」と声を上げる
(虎)「でもやっぱり夏未さんに勝って欲しいですよね」
(豪)「皆遠慮して雷門にアンカーを譲ったのでは無いのか?」
(風)「雷門は何となく運動が苦手な様に見えるんだよな…」
(染)「人は見かけにはよらないんだぜ」
(円)「そうだな〜染岡だって、その顔に似合わず実は彼処の花壇の花の世話が得意だったりするもんな!」
一同「えっ」と言う顔になり染岡が真っ赤になった
(染)「円堂おおおおおおお余計な事を言うなあああああ!!!」
(円)「わあっごめん染岡!!!」
円堂が部室から逃げ出して染岡がその後を追いかけて出ていくと、鬼道がやれやれと言う顔をした
(豪)「とにかく、当日が楽しみだな」
(マ)「そうだね」
(鬼)「雷門には変なプレッシャーを与えないようにな、みんな」
(一同)「おお!」
『さああああ順位は白が1位、青と赤が接戦で2位と3位、黄色が4位です!!』
(鬼)「なんだか凄く緊張するな風丸」
(風)「ああ…いよいよ雷門にバトンが渡るぞ」
鬼道と風丸は赤のハチマキを締め、女子のリレーを眺めている
今しがた、自分たちもリレーの選手として走ったばかりだ
そして男子は赤の勝利
青のリレー代表として走った円堂と豪炎寺も、鬼道と風丸の傍で心配そうな顔をしているし、白の代表で走った染岡も腕組みをしている
他のサッカー部のメンバーと言えば、自分達の席で、不安そうに女子のリレーの成り行きを見守って居た
(半)「おいマックス」
(マ)「あ、半田」
(半)「もうじきだぞ」
(影)「どうなるんだろうね…」
(目)「雷門さんの足の速さがこれで分かりますよ…」
『いよいよバトンはアンカーだっ!!!白組久遠冬花、脱兎のごとく駆け出した―!!」
バトンを受け取った冬花が駆け出す
『おっとバトンの受け渡しに手間取ったか、赤の雷門夏未、青の木野秋を追い掛ける!!!』
マネージャー達が走る様は一様に格好良かった
部員達は何故か誇らしげな気分になっていく
(円)「夏未速ええええ!!」
円堂が声を上げた時、夏未が秋をとらえ、追い越した
ザッザッザッと地面をとらえてスピードを増して走る様はまるで獲物を追いかける豹の様だった
『赤の雷門夏未!速い!速い!もうじき久遠をとらえます!!』
(鬼)「アンカーは一周だったな!」
(風)「ああ!」
鬼道が興奮して叫び、風丸が両手を握り締めている
(染)「すげえ!」
染岡が立ち上がり豪炎寺も身を乗り出して夏未の走る様を見詰めている
(半)「うっわすげえ!!雷門すげえよ!」
(マ)「信じらんねえ」
(影)「ホント人は見かけによらないんだね」
(目)「凄いですね…」
(虎)「夏未さん格好良いですね!!」
(栗)「凄い、でヤンス!!」
(少)「もうすぐ久遠先輩を抜かしますよ!」
(宍)「本当だ!」
(壁)「俺もあんな風に走りたいッス」
ゴール間近
夏未が冬花を捉えて追い抜き、テープを切ると校庭中から歓声が湧いた
『優勝は赤――!!雷門夏未怒涛の追い上げで赤を勝利に導きました!!続いて白の久遠、青の木野と続きます!』
冬花、秋、とゴールして黄色組みの選手がゴールすると、夏未は皆と握手してにこやかな笑みを見せ…サッカー部の部員は誇らしげな想いを胸に思い切り拍手をするのだった
(円)「夏未速かったな!」
(風)「今度俺と勝負してみないか?」
(夏)「球技は苦手だけど、走るのは実は好きなの…でも風丸君の方が速いに決まっているじゃない」
(風)「そんな事やってみないと分からないよ」
(半)「まあまあ…ところでさあ、雷門」
(夏)「え?」
(半)「小耳に挟んだんだけどさ…色別対抗応援合戦の赤組団長やるって本当か?」
半田の言葉にその場にいる3年生サッカー部員達が驚きの声を上げた
(夏)「団長が今日急病で欠席になってしまって、急遽ね」
(鬼)「赤組は確か、学ランでは無かったか」
(半)「それで誰の学ラン、着るのかなあと思ってさ?」
その瞬間ぎらりと3年生達の目つきが変わった
(豪)「俺のを貸そうッ」
(染)「いやッ俺だ!」
(円)「俺の着ろよ!」
(風)「俺のを是非!」
(鬼)「いーや!俺だ!今ならマントもつける!」
(円)「俺はバンダナだ!」
(風)「くそっ!俺にはオマケとしてつけられるものが無いぞ!」
俺の俺のと言い出した円堂達に夏未が困り顔でいると更に…
(影)「たまには俺のを」
(マ)「やっぱり俺の!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ男子達に、実は応援団伝統の学ランがあるのだと、言えない夏未であった…