▼拍手文19 倉茜


はあ、と何度めかの溜息をついた時、ついに倉間が切り出した

「なんだよ」
「なに?」
「だから何だって」
「倉間くんこそ、なあに」

本気か?と倉間は隣で散々溜息をついていた自分の彼女を眺めた

「その溜息、何だよ」
「え?溜息なんてついてないよ」
「嘘だろ?散々してただろーが」
「ついてないよ」

こうなると、いささか茜は強情だった
話を進めるにはこちらから多少歩み寄らなければならない

今度は倉間が溜息をつき、それから少し間を空けてぽつぽつと話し始めた

「だからあれは何でもねーんだよ」
「あれって」
「下級生の女子に呼び出されたことだよ」
「・・・なに、それ」
「何って、それで怒ってあからさまに溜息ついてたんじゃねーのかよ」
「・・・知らない」

ごくり、と倉間は生唾を呑み込んだ

先程とは明らかに、茜の様子が違う

「だってお前、見てたろ?俺が下級生の女子と話してるの」
「見たよ、あんなわかりやすい場所にいたら誰だって見るよ」
「だったら・・・」
「男子が女子と話すなんてよくある事でしょ?いちいちそんなことでヤキモチなんて妬かないよ」
「・・・」
「でも、わざわざ、呼び出されたんだ、倉間くん」
「・・・・・・!!」
「ふーーん」
「違う!!いや・・・違わねーか」
「・・・・」

小さく唇を結んで眉をひそめている茜

「ちゃんと言ったから!し、心配すんなって」
「何て言ったの」
「それは」
「言えないんだ」

茜が悲しそうに唇を噛んだ

「彼女のこと、すげー好きだからって、ちゃんと・・・」

そう言った倉間は茜が嬉しそうに微笑むのを見た

「おまっ・・・!!お前!やっぱり知ってたな!!!!」
「だって倉間くん最近全然好きって言ってくれないんだもーん」
「・・・!!!!??」


彼女は一枚どころか二枚も三枚も上手である





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