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▼秋穂さまへ


不動×冬花





『明日は久しぶりに明王君のサッカー見られるね』

携帯の向こうの冬花が弾んだ声でそう言ったのを、不動は口元を緩めながら聞いていた

「ま、勿論俺達が勝つけどな」

明日は雷門との練習試合
久々にレベルの高い試合が期待出来そうで、不動も幾分気分が高ぶっている

コホン…とひとつ咳をした冬花が、遠慮がちに尋ねて来る

『明日は試合が終わったら…会える?』
「ん?あ―…そうだな」
『ほんと?デートも久々だね、嬉しい』

素直に気持ちを表現する冬花に思わず言葉を無くす

『明王君も、嬉しい?』


何だってこいつはこういう事を聞いて来るんだろうな
面と向かってこんな事を言われたら、たまんね―…


携帯越しで良かったと、つくづく思う

「ま、ぁな」
『ふふ』

冬花の柔らかい声が耳元に響く

『明日は今日より寒波が凄いみたい、身体冷やさないでね』
「お前もあんまり寒いカッコしてんじゃねーぞ」
『うん、ありがと』


携帯を切る間際、冬花がまたコホ、と咳をしたのが何だか気になった









ピ――――ッ

前半終了のホイッスルが鳴り響き、試合は1対1の拮抗状態のまま、ハーフタイムを迎えた
円堂の提案で一緒に休憩を取る事になった帝国イレブンは、ほんのり頬を染めながら雷門のマネージャー達からタオルやらドリンクを受け取っている

「マネージャーがいるっていいよな…」

寺門が小さく呟き、密かに辺見が頷くのを不動は見た
やれやれ、と肩を竦めたその時「明王くん」と呼ばれて振り返り、それを寺門と辺見が目を見開いて見詰めている

「はい、お疲れ様」

タオルとドリンクを差し出した冬花が微笑む
受け取る不動の手と冬花の手が触れる

ちょっとした違和感

「……おう」
「どう?雷門との試合」
「ま、イイ感じだな」

そっと自分から視線を逸らす不動を見詰め、冬花は怪訝そうに首を傾げた

「…何かあったの?」
「別に…」



「おい、不動」

帝国のキャラバンに乗り込む寸前、ガッと後ろから誰かに肩を掴まれた
眉をひそめて後ろを睨めば、其処には同じく不動を睨みつけている佐久間が居た

「ああ?何か用かよ」
「今日は久々に雷門との試合だ…」
「だからこれから行くんだろーが」
「お前」
「?」
「久々に彼女と会えるからって俺達の前でイチャつくなよ!」

ビシッと指を指す佐久間
その指を腕ごと叩き落として、不動は叫んだ

「ンな事するかよ!ふざけんな!!!」
「不動でも赤くなるのか…」

佐久間の後ろで源田がぼそっと呟くと、不動は「うるせえ!」と噛み付いた

「もし約束を破ったら鬼道に言いつけてやるからな!」
「何だよそれ!」
「お前の弱点は鬼道だ!ジャパンの時だって散々やり込められていたからな!」
「あんなゴーグル野郎に負けるか!」
「鬼道をゴーグル野郎呼ばわりするとは…許せん!このハゲが!!」
「俺はハゲじゃねえ!剃ってんだよ!!」

ぐぬぬぬぬ…と睨み合う佐久間と不動
その2人頭頂部を鷲掴みにした源田が低い声で脅すように呟いた

「どっちにしろだ…くだらない理由で試合を台無しにしたら…許さんぞ」




そんなくだらない出来事があった事など言える筈も無く、不動は鬼道と嬉しそうに喋る佐久間を眺めながら溜息をついた

「別に何でもねーよ…それよりお前」
「冬花さーん!すいません!タオル、ちょっと足りないみたいです」
「あ、はい!…ごめんね、明王くん、また後で」
「……」

こほん、こほん、と咳をしながら歩いていく冬花
その後ろ姿を見送っているとすかさず寺門と辺見が不動に近寄って来た

「お前マジであの子とつきあってんの?」

いかつい顔を紅潮させて、柄にも無く寺門が尋ねるその様が何だか可笑しい

「まあ」
「うおおおスゲー!」

何が凄いんだか良くわかんねーな、と不動が思っていると辺見がニヤリとして続ける

「へえ〜…どうりで佐久間がうるさい訳だな、かなりレベルが高い」
「雷門はマネージャーのレベルが高いよな」

いつの間にか傍に居た大野が腕を組みながらうんうんと頷いていて、不動は一瞬戦いた

「何だよ…一体よォ…」

そう呆れた不動が何気に視線を戻すと、冬花がふらりとよろけたのが見えた
そしてそっと周りを窺って、誰にも知られて無いと知るとホッと息をついている


バーカ…


不動は「ったく!」と言うと乱暴な足取りで歩いていく
その様子に寺門、辺見、大野は驚いて声を掛けるのも忘れている

ずかずかと部員達を掻き分けて冬花の目の前に立った不動を誰もが注目し、冬花は「明王くん…?」とか細い声で呟いた

「お前、熱あんだろ」
「……っ!」

不動がそう言うと、周りの部員達が驚きの声を上げてざわついた

「お前の手、いつもより熱いんだよ…普段はすげー冷たいくせに」
「ぁ…」
「咳もしてるし、何度あんだよ」

冬花はもじもじとして俯くと、先程よりもずっと小さい声で囁いた

「さ…39…」
「はああ?何やってんだよ!悪化して肺炎とか起こしたらどーすんだよ!」
「だ、だって」
「だってじゃねーよ!」

凄い剣幕で怒る不動を泣きそうな顔で見詰める冬花

「…明王くんのサッカー見たかったから…」
「はッ?」
「試合終わったらデートだし…久々だったから…私」

冬花の言葉にうぐっと言葉を詰まらせて不動は固まった


何これ、ヤバい、何だよ
物凄く可愛い事いいやがって
滅茶苦茶可愛い顔しやがって


怒りを含んだ不動の声が徐々に尻窄みに小さくなっていく

「は、おま、…何言って…んだよ……馬鹿野郎」

最後の『馬鹿野郎』に於いてはその場の誰もが聞いた事の無い声色で、それは多分に甘い感情の入り交じったものであった

「しっ…心配させんじゃーねーよ!」
「うん…」


「監督!冬花さんを保健室に連れていっていいですよね?」

夏未の声でハッとした不動はさああああああッと青ざめた


そうだ此処は…


「何だ、その顔は、今のこの状況がどんなものか一瞬忘れたな不動?」

鬼道がニヤリとしている横でわなわなと佐久間が震えている
途端に今度はかあああああッと頬の火照りを感じて不動は後ずさった

「先に行って校舎の鍵を開けて来るから、木野さん、音無さんで冬花さんを連れて来て?」
「はい!」
「分かったわ、…冬花さん大丈夫?」

秋がそっと冬花の手を取って歩かせる

「さっすがですね不動さん!やっぱり彼氏ですね!」

バン!と春奈が不動の背中を叩いて行ってしまうと、佐久間は叫んだ

「不動この野郎イチャつくなって言っただろうが!!!デレデレしやがって!」
「バ…ッバカ野郎あれは不可抗力だ!」








試合終了後、部員達に冷やかされながら不動は久遠監督に一言断って、保健室に向かった

カーテンで仕切られているその隙間から中を覗けば…冬花が丁度目を覚ました所だった

「終わった…?」
「ああ…今日は帰るからよ」
「…もっと見たかったなあ…」
「……」
「2人で行きたいお店あったのに…」

寂しそうな冬花の表情と言葉
じわり、と温かいものが不動を満たす

「風邪…治せ」

そう言うと不動はかがんで、冬花の唇を塞いだ

「いつものキスじゃない…」

唇を離した刹那、冬花がそう呟いたので不動は俄に顔を赤くした

「こっちは気を遣って…!!!」
「そんなのいい…あ、でも風邪うつっちゃうからやっぱりダメ」

そう言って冬花は両手で布団をずり上げて顔の半分を隠してしまった
その態度に今度は不動の反抗心が煽られる

「……風邪なんか、うつんねーよ」

布団をずり下げて冬花の両手をそれぞれ掴み、今度は深く優しく…キスを繰り返した





その頃、一人荒れる佐久間を源田が落ち着かせていた…

「くっそ不動め!置いてっちまうぞ!」
「落ち着け佐久間、たまには大目に見てやれ」








tayutau taira
20120202
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63000キリ番リクエスト秋穂さまへ!
不動×冬花 

不動がデレっとする瞬間を書いてみようと挑戦してみました!
文才がなくてすみません!
寺門、辺見、大野は完全な妄想でキャラ作ってます、すみません!
こんなんで良かったら貰ってやって下さい!
いつも応援しております!リクエスト、ありがとうございました!!!







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