▼琴音様へ
イナズマジャパン夏未受け 風丸寄り
(夏)「今日の夕飯はハンバーグです、手の空いている人は手伝ってくれると有難いんだけれど」
練習が終わり、イナズマジャパンのメンバー達が騒ぎながら引き上げようとした時、夏未がそう声を掛けた
わいわいとした喋り声が一度におさまり…
(虎)「料理なら俺得意です!夏未さん!」
(飛)「俺も」
(円)「やった事ないけど俺手伝う!」
(豪)「無論俺もだ」
(鬼)「雷門にそう言われて手伝わないヤツがいるのか?」
(佐)「いる訳ないだろう、鬼道」
(不)「フン…俺も料理は得意だぜ」
(土)「俺は得意中の得意だぜ」
(綱)「俺は食うの専門!」
そう各々が言う中、風丸、吹雪、ヒロトはさっさと水道へと向かう
(吹)「染岡君!早く手を洗って一番乗りするんだよ!」
(風)「馬鹿染岡なんてどうだっていいだろう!」
(染)「何だと風丸!!!」
(ヒ)「うわっ皆殺到して来た!!」
(夏)「じゃあ手伝える人は、綺麗な身支度をして食堂に集まってね」
(一同)「すぐ行きます!!」
水しぶきを上げてバチャバチャと手を洗う先輩達の姿を見て、1年生組が冷や汗を流す
(立)「あそこにはとても入る勇気は無いよ…」
(木)「お前名前勇気じゃん」
(壁)「それとこれとは別ッス…ねえ?」
(立)「でも、俺も夏未さんの役に立ちたいな…」
そこへ激戦を潜り抜けて無事に手を洗い終わった鬼道がやって来て、立向居の肩を叩いた
(鬼)「いいか、立向居…1年生は食器等の準備を怠るな…例え雷門の手伝いが直接出来なくても、立派に役に立てるのだ」
(立)「そ…そうですよね鬼道さん!俺、やりますよ!」
そう言うと立向居は木暮と壁山を伴って、水道の列の一番後ろに並んだ
(不)「鬼道く〜ん、そんな所で油売ってると、置いてかれちゃうぜ」
ハッとして鬼道が振り返ると手を洗い終わった連中が一目散に宿舎へと向かって行く
早く清潔なジャージに着替えて食堂へ向かう為に
(鬼)「くそ!風丸のヤツもうあんな所に!!どけハゲ!俺様の前を走るな!」
(不)「んだとコラああ!俺はハゲじゃねーって何度言わせ…」
振り向いて立ち止まる不動を抜かし、さっさと走り去る鬼道
(不)「待てコラああああ!」
(鬼)「ふはははは!愚か者め!!お前に構っている暇はないのだ!!」
(不)「くそっ」
鬼道は他のメンバー達をごぼう抜きにして風丸の後に追いついた
(秋)「そろそろ皆来る頃よね」
(春)「今日ばかりはちょっと皆さんの手を借りないと間に合いませんからね」
(夏)「じゃあ来た順から振り分けしてって構わないのね?」
(秋)「お願いします、夏未さんの言う事なら皆不満ないと思うのよ」
(冬)「秋さんどうしましょう、飲み物がちょっと足りません」
(春)「あ、そうだった!言うの忘れてました!至急買って来ます!」
(冬)「私も行きます!目金さんも連れて行きましょう」
(秋)「じゃあ、宜しくね」
春奈と冬花が飛び出して行き、代わりに一番乗りしたのは風丸そして鬼道
(夏)「玉ねぎ」
(風・鬼)「??」
円堂、佐久間、虎丸、飛鷹は「タネを混ぜる」
染岡、吹雪、ヒロト、豪炎寺は「タネを形にする」
不動、土方は「焼き」
立向居、木暮、綱海はハンバーグと付け合せの盛り付け
秋は料理監督、及び壁山と食器の準備および、テーブルに料理を運ぶ係りだ
(秋)「スープとサラダはもう出来ているから、後はハンバーグだけなの、皆宜しくね」
(夏)「宜しくお願いします」
(一同)「は〜い」
そして一同は固唾をのんで夏未がどのポジションにつくのかを見守ろうと、目で追った
夏未はエプロンをして、髪を結い、三角巾を頭につける
その可愛い姿に一同は見取れて暫く動きが止まり…その中を夏未はゆっくりと歩いて鬼道と風丸の真ん中に立った
(玉ねぎか…!!!)
風丸と鬼道以外のメンバーは心の中で軽く舌打ちをし…それでも今日は雷門夏未の可愛らしいエプロン姿が見られたのだから、と自分を納得させるのだった
(風)(雷門が俺の隣に…!)
(鬼)(フフフ…勝った!!)
物凄い勢いで玉ねぎの皮をむき始める2人
あっと言う間に綺麗に向かれた幾つもの玉ねぎを、鬼道と風丸はみじん切りにして行く
(夏)「2人共凄いわね…」
(風)「雷門はゆっくりでいいぞ、玉ねぎは目に沁みるからな」
(夏)「ええ」
夏未は鬼道と風丸のやり方を真似て、ゆっくり玉ねぎを切っていく
しかし鬼道はゴーグルをしているせいで、玉ねぎが目に沁みない為、動きが素早い
必然的に夏未は風丸のやり方を観察する事になる
風丸は自分も素早くみじん切りを作りながら、上手に夏未のフォローもしている
(風)「そう、そこをそう…切って」
(夏)「こうかしら」
(風)「うん、上手い」
(夏)「こうね…」
(風)「手を切らないように気をつけて」
(夏)「有難う」
(風)「慣れてきた?」
(夏)「ええ!」
(風)「しかし玉ねぎは本当に目に沁みるな…」
(風)(もしかしてこんなに話をしたのは初めてかも知れない…)
世界に自分と夏未の2人だけしか居ない様な気がして、風丸はちょっと感動する
しかしふと気が付くと物凄い殺気が自分に向けられているのに気が付いた
夏未の向こう側にいる鬼道が『風丸さっさと切れ…!』とゴーグルの奥から睨みを効かせている
先に調味料とひき肉とパン粉、卵を混ぜている円堂、飛鷹、佐久間、虎丸は恨めしそうに風丸を見ているし、染岡、吹雪、ヒロト、豪炎寺は黙ってはいるがまるで呪詛でも唱えているかのような形相をしていた
(不)「風丸く〜ん、早くみじん切り持って来てくれよ〜炒めないと、タネに混ぜられないじゃ〜ん」
(風)(…怖っ…しかしこれは代償だ…雷門をほぼ1人占めしていると言うこの現実のな!!)
その時、夏未が包丁を置いた
(風)「どうした?雷門」
(夏)「本当に玉ねぎって目に沁みるのね…私、初めてよ」
そう言って夏未は風丸の方を向いて笑った
目に涙を湛え、まるで泣き笑いしているかの様な夏未の表情に、風丸は釘付けになる
だって今の夏未の表情は自分しか見る事が出来なかったのだから
(夏)「見て!でもこんなに出来たわ!風丸君のお陰よ!」
と嬉しそうにはしゃいで風丸の手を取った
(夏)「有難う!」
そして大輪の花の様な素晴らしいその笑顔…
(鬼)「!!!おい!風丸が鼻血出して倒れたぞっ!」
鬼道の声が厨房に響き渡り、幸せそうな顔のまま気を失っている風丸は、鼻にティッシュを詰められて土方に運ばれて行った――…
この事件は後に「風丸鼻血事件」と呼ばれ、イナズマジャパンの後々までの語り草となった…
この時、誰もが密かに風丸を羨ましいと思い、夏未の笑顔はどんな様子だったのか後で聞いて見ようと思ったと言う
そして当の風丸は、夏未に呼び出され「どうしてあの時倒れたの?鼻血まで出して」と問い詰められ、顔を真っ赤にして困り果てる事になったとか…ならなかったとか……
20110222
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1111のキリ番リクエストをして頂いた琴音様への捧げ物です!
琴音様のみ、お持ち帰りフリーとさせて頂きます
taira