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▼鬼道×夏未2


(半)「へえ〜鬼道と雷門が数学のテストで勝負?」
(円)「うん、どっちが勝つかな!」

図書室で、へへへっと楽しそうに笑う円堂に勉強する気は毛頭ない
半田もそれが分かっていて、円堂の雑談に付き合っている

ついに始まった学年末テスト
この期間は部活も中止、生徒は皆勉学に勤しまなければならない

(風)「何喋ってるんだ?さっさとやれ」

円堂と半田にとって誤算だったのは、この今しがた現れた風丸が鬼道や豪炎寺よりも厳しいと言う事だった

(風)「円堂、半田、お前らテストで良い点取りたいんだろう?」
(円)「うん」
(半)「ハイ」
(風)「だったら喋る暇も惜しんでやれ…今度喋ったら数学の問題10問追加する」
(円・半)「ええええ!」
(風)「ハイ、追加ね」
(円・半)「………」


(秋)「風丸君って意外に厳しいんだね」
(豪)「アイツは怒ると怖いんだ」
(秋)「へえ…」

そんな様子を見ながら、同じ図書室で勉強している秋は隣の豪炎寺に話し掛ける

(秋)「鬼道君と夏未さん…いつも一緒に勉強してるのにね」
(豪)「今回ばかりは、だな」
(秋)「何か約束をしたみたいなの」
(豪)「……何の?」
(秋)「さあ…だから負けられないって…」
(豪)「………」

鬼道のヤツ、何か自分の都合の良い様に条件をつけたに違いない

豪炎寺はそんな鬼道が必死に勉強している姿を想像して、思わず口元を綻ばせた




ふう、と鬼道は息を吐いた
身体を伸ばして自分の部屋の天井を仰ぐ

帝国時代から、テストの学年順位は5番を切った事はない
そんな自信もあって鬼道は余裕だった
勉強の手を休めて携帯を取り出す

あれから夏未とは臨戦態勢に入ってしまった為、必要な事以外は会話していなかった
今までに夏未と交わしたメールを読み返しながら、鬼道はふと、寂しさに襲われる


……少し、大人げ無かったか


そう思いながら、あの時の売り言葉に買い言葉を反省し、思わず夏未に電話してしまおうか、と言う衝動に突き動かされる
それを寸での所で抑え付ける鬼道

寂しさを埋めようと、鬼道はこの勝利の暁にあるものを考え始める


…願いを叶えて貰う
何にしようか…まだ一度も2人でデートした事が無いからそれも、いい
皆の前で好きって言って貰うか?
それとも皆の前で有人って名前を読んで貰うとか…
いや、俺が見た事が無い伝説のメイド姿になって貰う?…
思い切って義父に会って貰うとか?
膝枕して貰う?


悶々と考える鬼道の頭には負けると言う2文字は存在して居ない
当然自分が勝つものだと、そしてそれ相応の学力を完璧に有し、そして惜しまず努力している、という自負がある…しかし


『鬼道君』


はっとして鬼道は頭を振る

自分を呼ぶ夏未の表情はいつも穏やかで、優しい視線を自分に投げかけてくれた

ちょっとした対立で、その表情と視線が暫くの間自分から遠ざかっている事実に、鬼道は足掻きながら必死に耐えるのだった…




数学のテストが返されたその日の放課後

マントを靡かせ…理事長室へと向かって歩く鬼道の姿があった
夏未は理事長代理の仕事で数学の授業時には在席して居なかった為、結果を聞く為に理事長室を訪れたのだ

(夏)「……」

夏未は無言で鬼道を迎え入れ、鬼道はするりと理事長室へと足を踏み入れた
その表情を見れば、結果は一目瞭然だったが、一応鬼道は夏未に数学の点数を尋ねた
夏未は鬼道と目を合わせずに、静かに答えた

(夏)「…98点」
(鬼)「俺は、100点だ」
(夏)「私の負けね」

諦めた夏未の声色に鬼道は別段喜ぶ事も無く、ただ棒のようにその場に突っ立っている

(夏)「もっと喜ぶかと思っていたのに…意外ね」

夏未の軽い嫌味にも動じずに、鬼道は夏未に近づいた

(夏)「何が、望み?」
(鬼)「何故、満点を取れなかったと思う?」
(夏)「え?」
(鬼)「自分で分析してみろ」
(夏)「………」

夏未は鬼道と向かい合っても尚、目を合わせようとしなかった

(夏)「…貴方に」
(鬼)「……」
(夏)「…いいえ何でもないの…負けたのは自分に原因があるからよ、それ以外には何も無いわ」
(鬼)「……雷門」

呼ばれると夏未は俄かに緊張した面持ちで、理事長室に鬼道が入って来てから初めて、鬼道の顔を正面から見詰めた

(鬼)「話」
(夏)「え?」
(鬼)「…話がしたいんだ」

ぽつりとそう呟いた鬼道は、俯いて息を吐いた


もう耐えられん…


(夏)「……」
(鬼)「あれから、俺達、ろくに話もしてないだろう?だから、その…」

夏未は鬼道の言葉を聞きながら、何かに必死に耐えている

(鬼)「お前と、たくさん、話がしたい…それが、望みだ」

鬼道がそう言うと、夏未の顔が歪んだ
かと思うと、ぽろり、ぽろりとその瞳から涙が零れた

(鬼)「ら、雷門」

鬼道が手を伸ばす
夏未がその腕を掴んで、さらにぽろぽろと頬を涙が伝った


堰を切ったように夏未が話し始めた

(夏)「さ、さびし」
(鬼)「…」
(夏)「…寂しかったの」
(鬼)「…うん」
(夏)「会いたかったの」
(鬼)「…うん」
(夏)「話したかったの」
(鬼)「俺もだ…!」
(夏)「つ、つまらない意地を張って勝負なんて、するんじゃなかった、って後悔して…勉強に集中できなくて…あんな簡単な問題を…」

夏未は鬼道の手を掴んだまま、泣きじゃくっている
そんな夏未を鬼道は優しく、ふわりと抱き締めた

(鬼)「…すまない」

夏未は鬼道の腕の中で小さく頭を振った

肩を震わせて自分の背中を抱く夏未を、鬼道は柔らかく抱き締めてその髪を何度か撫でる

温かく、それでいて激しい何かがこみ上げて来て、これが「愛しい」と言う想いなのだろうか、と鬼道は思う

…その感情に任せて…鬼道は、夏未の前髪を掻き分けて唇で額に触れ…右頬に触れる
そして左頬にそっと触れた後、小さく呟いた

(鬼)「もう1つ望んでもいいか…?」
(夏)「…贅沢ね」
(鬼)「はは」

鬼道は夏未の言葉に笑いながらゴーグルをぐいと上げる
そして夏未の頬をさらりと撫でて…指先でその唇に触れた後…そっと自分の唇を触れ合わせた

(鬼)「…もう一度」
(夏)「…ダメ」

拒否する夏未を無視して、鬼道は何度となく夏未に唇を重ねる

(夏)「もう、ダメ…」
(鬼)「これで最後だ」


そんなやりとりを何度もしながら、2人は唇を触れ合わせては…無言の会話を繰り返した






学年末テストが終わり、部活に現れた円堂は開口一番こう言った

(円)「で?結局どっちが勝負に勝ったんだ?」

夏未と楽しそうに会話していた鬼道の元に、風丸と豪炎寺も加わる
そして秋がやって来て、半田が駆け足でやって来た

(半)「そうそう!俺もずっと気になってたんだよね!」
(鬼)「テストの結果は同点、ドローだ」

秋が夏未に目を向けると、夏未は何故か頬を染めて頷いている

(円)「そうなのか?流石だな〜!」
(風)「何点だったんだ?」
(鬼)「秘密だ」
(円)「ま、どうせ聞いても俺には一生取れない点だろ?なあ半田?」
(半)「何故俺に同意を求める…風丸のお陰で俺は80点だったぞ」
(円)「えっ!!」

あからさまに驚いた円堂に不信感を抱いた風丸が、やや強い口調で尋ねた

(風)「そういう円堂は何点だったんだ?」
(円)「えっいやその」
(風)「まさか円堂…俺があれだけ指導してやったと言うのに、70点も取れなかったんじゃないだろうな?」

風丸の顔色が変わったのを見ると円堂はそそくさと「さあ練習だ!」と走って行ってしまう
その後を「待て円堂!!」と追いかける風丸
秋はその後を走る豪炎寺に「頑張ってね」!」と声を掛け、走り出す鬼道に夏未は頷いてみせる

(豪)「前より仲が良いみたいだな」
(鬼)「そうか?」

豪炎寺の珍しいからかいに、ほんの少し動揺した鬼道は走りながら咄嗟に口元を手で隠す
しかし豪炎寺は不思議そうな顔をしただけで…幸いその意味を知るのは鬼道本人と夏未だけだった



――…その唇には秘密が隠されている
2人だけの秘密が





20110510
tayutau taira


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11111キリ番リクエスト K様へ
K様のみフリーです


いろいろシチュエーションを考えて頂きましたが…やっぱりコレ!
コレしかない!という事で書かせて頂きました!
ご希望に添えたか心配です!!




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