side.死にたがり

燵真さんの住むマンションを出て空を見上げ、
先ほどまで話していたあの人の不機嫌そうな顔を思い出していた。
燵真さんはいつも面倒なことは嫌いだとしか言わないが、
俺が本当に今夜泊まるホテルも探しておらず行くあてなどないのだと知れば
しばらくは泊めてくれてなんだかんだ彼の同居人と共に世話を焼いてくれるのだろうとは思う。

でもその優しさは俺からしてみれば苦痛にしかならない、俺の幸せはあの場所にしかないから

俺はあの日に帰るために今まで生きてきたこれからもそう生きていくと決めていた。

そのためにこれまで色々調べてきた。

日本に来たのもネットで知り合った人物から興味深い噂を聞いたからだ

『"赤い瞳の死神"

死神は痛ましい死体を作り出す
赤い瞳を輝かせ死を招き
傷みに歪んだ顔を嬉々として撫で
その死に浸る
死神に遭ったならば諦めよ
もうすでに死は呼ばれている』

ネットで密かに流れているだけの変な噂だ…

でももし本当にこの死神がいるのだとしたらと

あの時俺が見た赤い瞳と関係があるのかもしれない

なくても何か手がかりが掴めるかもしれないと藁にでもすがる想いでここまで来た

雑踏を他人と接触しないように歩きながら噂について考える