side.死にたがり

数年後、少年は青年となり自分が元居た場所でもその後に育った場所でもない所にいた。

「んで、おめーはその会えるかどうかもわかんねぇ赤目妖怪に会いにわざわざ日本まで来たと」

「赤目妖怪とはひどいですね」


日本のとある街のとあるマンションの居室に青年は少し長い黒髪をひとつにまとめ黒の長袖ハイネックと黒のズボンを身にまとい、
煙草を吸いながらけだるけに話す、見た目は明らかに青年よりも幼く高校生にも間違われそうだが実際は青年よりも一回りとはいかないがすでに成人済みの男性と話していた。


「雪の中にいて赤い瞳以外姿形もわからないんだから赤目妖怪以外言いようがねぇだろうが」

「まぁ、そうですが…」

「それでおめーはこれからどうするんだ?」

「そうですね…ここで居候になるというのは…いけないみたいですね」

「当たり前だろうが、家には既に一匹いるからなこれ以上飼える部屋はねぇよ」

「そうですか…まぁ冗談でしたが」

青年は男性の返答がすでにわかっていたのだろう緩やかに笑っていた。


「向こうで金貯めて日本語覚えて、遠路遥々日本に来てなんで泊まるとこ探してねぇんだよ」

「それは…」

男性の言葉に言いよどむ青年の姿に呆れた表情を浮かべ

「ま、俺には関係ねぇことか」

「そうですね。でも泊まるだけでしたら金額をきにしなければすぐに見つかりますし」

「もったいねえな」

「そう思うなら泊めて下さってもいいんじゃありませんか燵真[タツマ]さん?」

「はっ、お前がその人嫌い治したら考えてやるよ」

「おや、手厳しい。それにオレは別に人嫌いじゃないですよ?ただの…」

「接触恐怖症てか?」

「ええ」

青年の返答に男性は一瞬眉をひそめ不機嫌な表情を浮かべた。
しかしすぐに諦めたような呆れたような表情を浮かべた。

「…ま、いいけどなそれについても俺がとやかく言える筋合いもねえし」

「そうですか…ではオレはこれで失礼します」

「おー…」

男性は青年の言葉に返事を返すの面倒だと目も合わせずに適当な返事を返した。


「あぁ、そうだこれエルマンノから貴方に渡して欲しいと」

帰り際、青年はここへきたもうひとつの用事を思い出したのか男性に養父からの荷物を渡した。


「ふーん…サンキュ、エルマンノには俺から連絡いれとくわ」

「はい」

「んじゃ、まぁまたなんかあったら俺んとここい、なんとかしてやらんこともない」

「それはまた信用が出来そうで出来ないような感じですね」

「うっせぇ」

「では」

青年は今度こそ、男性の家を出て行った。




「…あいつもなんであんなん拾ったんだか…」

ぽつりと呟いた男性には、先程まで話していた青年のすべてを拒絶したような笑顔が浮かんでいた