side.死にたがり


白い白い雪が視界を覆い尽くす


ねぇ、待って

置いてかないで

寂しいよ

待って…

みんな、みんな、ゆっくりと雪に抱かれていった

いやだ

一人は寂しいんだ

置いてかないで

地面にしゃがみこんで

雪をかき分ける

でも空から雪はどんどん降ってくる

あぁ、みんなに会えない

置いてかないで

雪の上に倒れこみ

手はかじかんで

雪をかく力は弱くなり

長時間、外でこうしていたから身体も冷えて上手く動かない

だんだんと近づく死の気配にほっとする

やっとみんなに会える

嬉しいな…

幸福な気持ちで目を閉じた

その時、 急に降っていた雪がやんだ

そして視線を感じた…ここにはもう僕しかいないのに…?

不思議に思って目を開けたことを今は後悔している

その時に見た一対の赤い瞳は今でも忘れられない

あぁ、見なければよかったあのまま眠れていたら今頃みんなと一緒に居られたのに

早く早くあの赤い瞳を探さないと

みんなのところへ帰れない