三 『神楽』 呼ぶ声が聞こえる。 いつもいつも自分に向けるのは嬉しそうな笑顔だけでそれ以外の表情を見せようともしない。 あいつは私が返事をするだけで喜び、 名を呼ぶだけで喜び、 私が何もしなくてもただそばにいれるだけで嬉しいと笑う。 そして私に好きと言う。 その感情は私にはわからない 私には必要なかった いらないもの。 でもあいつはそれを大事そうにしている。 理解ができない。 でも、あいつはわからなくてもいいと自分が私に向ける感情を否定しないでくれればそれでいいと笑う。 喜怒哀楽という感情すら私にとってはどうでもよかった。 あいつの表情の意味にも興味なかった。 ただ、いつもなぜかそばにいるから疑問に思った。 それだけだった。 私の問いにあいつは 『神楽が大好きだから!』 と嬉しそうに笑った。 私には理解できないから肯定も否定もしない。 拒否もしなければ受け入れてもいない。 それでもいいと笑うあいつが私には理解できない。 |