「たーまー!!」

バタバタと廊下を走る音と共に聞こえる子供の声
子供は、障子を勢いよく開けて中に居た女性に抱き着いた。
勢いよく抱き着かれ、少し驚きつつその女性は子供に声をかけた。

「どうしたんじゃシンシア?」

「しんしあわるくないよね?」

子供は、女性に自分は悪くないと主張しているが、女性には何が悪くないのかがさっぱりわからず困ったように眉を下げた。

「これこれシンシア、急にそのように言われてものぅ…たまは困ってしまうぞ」

「うー…だってしんしあわるくない!」

「そーかそーか、シンシアは悪くないのじゃな?」

「うん!」

「じゃったらたまに、何が悪くなかったのか言えるかのぅ?」

「えっとね、しんしあね、こーひょーがしょんぼりしてたからなぐさめてあげようとね」

「ほぅ」

ようやく理由を話始めた子供の言葉に、相槌を打つ女性

「いけになげたらおこられたの」

「池…?」

「だってねしゅりが、こーひょーはどえむだからひどいことされたらげんきになるっていってたのに…」

「それは…」

「だからしんしあわるくないんよね?」

子供は話を終え、だから自分は悪くないのだと繰り返し女性に言っていた。
女性はあとで子供にそんな話を教えた人物をきつく叱っておこうと思いつつも、言葉を紡いだ。

「シンシア、シンシアは良かれと思うてした事でも、実際は神氷は怒っておるのじゃろう?」

「うん…」

「じゃったら、シンシアがしたことは悪い事になるのぉ、そういう時はどうするんじゃったかな?」

「…ごめんなさいする」

「そうじゃよ、シンシアは良い子じゃからちゃんと神氷にごめんなさい出来るじゃろ?」

「…うんしんしあ、いーこだからちゃんとこーひょーにごめんなさいできるよ」

女性に言葉に子供は少し膨れながらも素直に頷いた。

「ちゃんと神氷にごめんなさいをしてきたら、六道たちも呼んで一緒におやつを食べようぞ」

女性は子供の頭を優しく撫でて微笑んだ。

「うん!」

子供は女性の言葉に顔を輝かせて元気に頷き、謝るために部屋を飛び出した。


女性も部屋を飛び出して行った子供を見送りつつ、おやつに何を作ろうかと考えながら台所に向かうために部屋を出た。